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もう我慢できない もう我慢できない ストラテジー 使用コスト:緑2無2 タイミング:クイック あなたは自分の山札を見てユニットを1枚まで選んで相手に見せ、持ち主の手札に加える。 残りの山札をすべて裏向きでシャッフルする。 連動 「自分が消えていく」 (あなたの墓地に「自分が消えていく」がある場合、以下のテキストが有効になる。) そうする時、かわりにあなたは自分の山札を見てユニットを2枚まで選んで相手に見せ、持ち主の手札に加える。 残りの山札をすべて裏向きでシャッフルする。 「生命を育む未来」を継ぐもの。 コストが[緑1]増え、プランゾーンに乗せる代わり手札に加えるようになっている。 プランゾーン効果は狙えなくなったものの、「妖魔の勇者」等の後出しに強いカードを見せることで相手を強力に牽制することができる。 連動発動時はもう1枚おまけで付き、緑には嬉しい手札補充となる。 収録セット サード・センチュリー エキスパンション 閃光の来訪者(070/100 アンコモン) イラストレーター MID 関連リンク 連動 自分が消えていく 参考外部リンク
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『びたーちぇん』 24KB 愛で ギャグ 小ネタ 改造 日常模様 赤ゆ 現代 悪夢の日の翌日のお話。(※修正につき再掲) 注意:虐待成分は殆どありません。ヒャッハーしたい方は今すぐこのページを閉じてください。 また、独自設定が多数あります。どうかご理解の上、お読みいただくようにと思います。 脳内音速○音声再生機能、または脳内強力若○音声再生機能をお持ちの方は、きっと ご本人様を思い浮かべるだろうと思いますが、仕様ですので諦めて脳内再生していってね!! 文中で、音声を表現する上で日本語がおかしくなっている箇所が多々あるかもしれませんが、 表現を優先する上での仕様です、ご理解をお願いします。 では、ごゆっくり。 『……うわぁ、やっべ』 2月15日。つまりはあの悪夢の日の翌日だ。 服を脱ぎ散らかした格好で部屋の寝床で眠っていた俺の目の前にあるのは、きれいにラッピングされた洋菓子 が入っていそうな、白い箱がある。 そいつが、ごそごそと音を立てて揺れている音で目が醒めたのだ。 『こりゃ、解凍して目が覚めたってパターンか……』 洋菓子の箱には某有名洋菓子メーカーと、ゆっくりのマークが印刷されていた。 そう、これこそ洋菓子屋と加工所のコラボレーションが生み出した、何の冗談かと思うような商品。 「ばれんたいんちぇん」だった…… びたーちぇん ばれんたいんちぇんの入っている箱が、ごそごそうごめく音を聞いて、現実逃避からいやおう無しに現実に 戻された俺は、こいつの処遇について、悩んだ。 そういえば昨日はかなり飲みすぎたのだ。社内のモテナイ男のやもめ暮らしに明け暮れる連中で、居酒屋で 暴飲暴食の限りを尽くしたことを思い出す。その参加者であった同期の同僚が、嫌がらせついでのきつい洒落で こいつを持ち込んでたのを、受け取ってしまったのだろう。 そして、本来は昨日の内に食われる運命だったこのばれんたいんちぇんは、いまもこうして二日酔いに近い 頭痛とともに、目の前にあるわけだが…… 中身はその名の通り、赤ゆっくりクラスのちぇんが入っている。 これは、チルド状態で加工所で製造されており、半解凍された状態で食べるものとされている。 見た目がキモカワイイ生首よろしくのゆっくりであることを考慮すると、騒いだり喚いたりしているものを そのまま口にするようなことを、普通の人間がするのは敬遠するからだ。そういうのを踊り食いするのは、虐待 鬼威惨たちだけで結構だと思っている。 だが、ここにあるのは、半解凍だとか言う状態を通り越し、解凍しきって覚醒済みのゆっくりだ。 そもそもお前は加工食品のはずだから動くなと言いたいが、そこは饅頭生物と言うわけの判らんブツなので、 言ってしまうと全否定することになってしまう。 まあ要は、ちょっと珍しいくらいの生洋菓子の感覚なのだ。解凍する前までは。 今となってはただのゆっくり。箱を空けたらきっと小五月蝿くて潰しそうなことになるのは明白だろう。 『あーくそ、食い損ねたか……』 痛んだ食材を棄てるつもりの感覚で、手近に合ったビニール袋を手にして、意を決して箱をあける。 箱をあけたとたんに、状況も何もわからない解凍したてのゆっくりが、お定まりの言葉を吐くだろうと構えて いたが…… 『……? あん?』 その予感は裏切られた。 確かに箱を空けるとちぇん種のゆっくりがいた。そいつがガタガタブルブルと震えているではないか。きっと 解凍しきれてなくて、中の餡子が未解凍な部分があるのだろう。 だが、俺が箱のふたを開けたことにより、ちぇんの世界は一変した。 「ゆ…… ゆっぐぅりぃ…… どぅえきぬぁあああい…… ぅわがらぬぁああい……」 その瞬間、俺に電撃が走る。 そいつは、あの甲高くてキモうざい声で「ゆっくりしていってね!」とか抜かすものなら、即ヒャッハーする つもりで待ち構えていたのだが、なんとも渋くてネトつくような抑揚の声で言ったではあるまいか。 そう、某ア○ゴさん声優の声でだ。 「……おぬぃいざんんわぁ、ゆっぐりぃできるぅ、ひとかにゃあ?」 考えてもみてほしい。目の前にいるのは、まだ赤ゆっくりサイズのちぇん種のゆっくりだ。ソイツが、赤ゆ言葉も 全くないまま、あのうねるような独特の言い回しの、鋭くシヴい声で喋っているのだ。 これはなにか? なんかのドッキリか? 『……なんで強力若○なんだよおまえは……』 「に"ゃ? ぅわからぬぁいよー? どぅぇもぉ、ぬぉーどしゃんがぁ、いーがいーがするんだにぇぇ」 お前の喉ってどこにあるんだよ、と言うツッコミはさておき。おそらくはうまく解凍できなかったか何かで、声を 出す弁のあたりに傷がついたのだろうと思う。それが変な具合にやたらとシッヴい声の原因となっているのであろう。 願わくば、この声のままでも俺としちゃあ十分ご褒美なんだが…… だが、そんなちぇんを見ていて、俺はさらに違和感を覚えた。 そういえば、こいつはさっきからずっとおとなしい。生まれたての赤ゆっくりなど、そこらの公園でも 見かけるがともかくやかましい。 舌っ足らずな言葉を駆使してさんざんゆっくりしたいと泣き喚く。親がいればさらに倍率ドンだ。 確かに解凍のさなかで動けなかったとしても、通常ならこれの100倍はうざく喚いていてもおかしくはないはず、 なのにこのちぇんと来たら、今までに喋ったのはほんの数言。しかも赤ゆサイズなのに喋る中身は舌っ足らずの赤ゆ 言葉ではない。おおよそゆっくりの常識からは飛び跳ねている出会いであった。 『……いや、ふつうお前らゆっくりって誰かに出会ったら「ゆっくりしていってね!」とか五月蝿いだろうに……』 と、俺が呟くのを聞いて、ちぇんはため息とも唸りともいえないものを発する。 いや訂正。今確かに「ブル○ァアァァァァ」って聞こえたかもしれない。空耳かもしれないけど。 「お兄さん、ゆっくりにも、いろいろとあるもんなんだよにぇ、わかってにぇー」 だめだ、こいつの発する言葉は、妙なビブラートとか韻とかがあって、どうにもご本人様を思い浮かべてしまう。 しかも、脳内ではっきりと補正がかかってしまうのは、冷や汗を通り越してご褒美といわざるをえない。 「ちぇんは、ちぇんはぁ…… ゆっくりできないゆっくりなんだよ……」 と、ちぇんは俺のどうでもいい考えをよそに、一人特徴的な抑揚の渋い声で自分の境遇について語り始めた。 ちぇんの親は、加工所で育てられたビター種のちぇんであった。自然の中で育ち、えっとうっ!前に人間さんに 捕まえられ、いろいろされたらしい。 まむまむやあにゃるさんを塞がれ、ひたすら苦いものを食べさせられていじめられた記憶があるのだと言う。 あるときは、らんしゃまを虐待されるさまを永遠と見させ続けられたり、ゆっくりどもがやらかす、ありと あらゆる悪行とその後にせいっさいっ!されるまでの一部始終を何度も何度も見せ付けられた。 そうしてうんうんをすることを禁じられ、ゆっくりと言う種の愚かさを嫌と言うほど見続けさせられた親ちぇんは、 中のチョコレートのカカオ成分が急上昇するとともに、ゆん生の苦さを追体験することで、性格までもビターな ちぇんとなっていったのだ。 そして、仕上げとばかりにちぇん同士で強制的に植物にんっしんっ!させられた。 こうして出来た赤ゆっくりは、親のそんな苦い記憶と強烈な禁忌を受け継いだだけではなく、既に己が何者で あるか、どれだけゆっくり出来ない存在なのかを理解した、超絶ビターな赤ちぇんとなって、出荷されたのである。 そういえば、仕事の関係で付き合いのある知り合いの加工所の人間に聞いたことがある。 バレンタイン向けにちぇんを量産するのだが、その際にスゥィート種とビター種によってより分けられ、別々に 育成、生産されると聞いていた。 スゥィート種は苦さはそこそこ、甘みを重視するために適度に育成した後に、まっちょりー種のぱちぇをつがわせ、 ちぇんをきょうっせいにんっしんさせて仔を産ませたのち、生まれた赤ゆっくりに虐待を行い、糖度を存分に増した 状態で出荷されるのだとか。 ゆっくりは虐待すればするほど、その甘みを増す不思議なナマモノであるから、当然と言えば当然だが。 そしてビター種のちぇんは、他のゆっくりの排泄したうんうん、特に虐待の最中にひりだされた極上の苦い記憶 入りのうんうんや、虐待した成れの果てを加工したものを餌にして育成され、これに記憶が排出されないよう、 あにゃるとまむまむは塞がれた後に、精神的な苦痛を主体として虐待をする。 こうして餡のカカオ分を飛躍的に高める。 あとはひたすらちぇん種同士でつがいあい、ここにいるちぇんのような赤ちぇんを生産するのだとか。 これによって生産されたちぇんは、カカオ分75%以上の極濃ビターに仕上がると言う。 つまりこのちぇんは、親の持つ苦い記憶を120%引き継いだ、とんでもなくビターなちぇんであった。おかげで 生まれたときから赤ゆ言葉を吐くことなく、ゆっくりとして生まれてきた事自体を究極の罰だと言うように 捉えており、どの個体も非常に精神的にシヴいところをもっているのだとか。 これはなんかの罰ゲームかおい。 同期の同僚のほくそえむ姿が浮かぶと、なんだか会社に出社して出会った瞬間に蹴り倒したくなりそうな自分がいた。 と言うか絶対蹴る殴るしてやる…… 「おにいさん…… そんな境遇のちぇんなんだが…… 食べるかにゃぁ?」 ちぇんが、寒天の瞳をこちらに向けて尋ねてくる。 その瞳はこれから待ち構える運命に諦観したわけでもなく、捨て鉢となったモノでもなく。ごく自然に次に起こる 行為を受け入れたものの目であった。 「ちぇぇんはぁ、すぁいごにぃおぬぃいっさんのようぬぁあぬぃんぐぇんさんぬぃい、ちぇぇんのようぬぁあ ゆっっっくりがいた、ということをぉ、わかってもるぁえたどぅぁけでむぉお、すぃあわすぇええええ、ぬぁんだねええ。 くぉれどぇ、あんしんしておぬぃいさんにたぁべられてっ、おそらっのぉ、ゆっっっくぅりぃぷるぅぇえいっすぅに、 たヴぃだってぇ、いけるんだにぇぇ…… ぅわっくぁるよぉ」 (ほぼ本ゆんの発音のまま) 訳:ちぇんは最後にお兄さんのような人間さんに、ちぇんのようなゆっくりがいたと言うことを解って貰えただけ でもしあわせーなんだね。これで安心してお兄さんに食べられておそらのゆっくりプレイスに旅立って逝ける んだにぇ…… わかるよー 『うぐっ』 覚悟を決めたのか、目をそっと閉じて、さあ喰え、今すぐ喰えとばかりに俺に向き合うちぇん。 たとえ本能で恐怖に震えようとも、自身をずずいと差し出す姿に、俺はうめくしかなかった 二者択一。ここでこいつを喰えだと? こんなおぞまいやいや、ある意味ご褒美なモノを喰えと抜かすかこの饅頭は!? 「ああ、そうきゃ…… ぅわかったよぉぉお。おにいさんはぁ、ちぇんのこのままをさしだされても、たべれないんだ にぇえ。だったら、ものいわぬまんじゅうとなれば、いいんだにぇえ…… わかるよおおおお」 困惑し、窮地に立った俺の境遇をみて、ちぇんが呟く。 「ぬぁらばっ!! このばでちぇんのいっせいいちだいの、けついとともぬぃ、いまっ、くぉこでっ! せんげん しようでわにゃいくわっ!!」 突如、ちぇんは目を見開いたかとおもうと、なんかとんでもないことを言い出した。おいこら、ここで俺の目の前で ぱっくりするつもりか!? ちょっと待て早まるなこら。朝っぱらからチョコレートの塊を食えるほど、俺の胃は回復してないんだから。 「さあっ、ぅおたっb『あああああ!!待て待て!』に"ゃ?」 よし、おたべなさい阻止成功っと。ちぇんといえば、寒天の目を「くわっ」っと開いたまま、突然の割り込みに 硬直していた。ちょっと怖いぞその顔は。 『ちぇん、よくお聞き……』 「……にゃにかにゃぁ? おにいさん」 俺の声に反応して、首ならぬ顔をかしげるちぇん。 『ちぇんは、うんうんやしーしーをしたくなったら、どこでするかはわかるかい?』 この質問は、ちょっとゆっくりを飼い慣れた人間なら、その意図がわかろう。 「うんうんさんやしーしーさんとな!? まさか…… まさか! おにいさんはいまこのばで、このちぇんに うんうんさんをしろと!? しーしーさんをしろというのか!!? HENTAIさんなんだねにぇー!?」 ちぇんの目がさらにくわわっ!!と見開かれる、もうこれ以上開けちゃうと目ん玉飛び出そうなくらいに。 だからこわいんだっつーの。 『HENTAIじゃねーっつの。そんな趣味はねえ!! でどうするのかわかるか?』 ガクガク震えながら恐れおののくビターちぇんにツッコミをくれつつ、俺は回答を促す。 うんうんしーしーと言った排泄行為、詰まるところのトイレトレーニングは躾けの中でもそのゆっくりの個性や、 もっと言ってしまえばその個体がゲスなのか、そうでないのかを判断できる材料になるのだ。 下手に躾をしていないゆっくりとなると、うんうんしーしーはそこらへんでするものであり、親や人間が処理する もの、ひどいものだと親や人間イコール自分の排泄物を処理し、餌を与える奴隷と認識する駄饅頭もいるくらいで、 これにどう答えるかだけでも、その固体の個性や知能がある程度わかるのだ。 人間社会ではうんうんやしーしーといった排泄行為が、決まった場所で人目を避けて行うものであり、なおかつ トイレと言うものの存在を理解したうえで、汚さないようにすることのできる個体は、希少種並みに存在価値が 跳ね上がるのだ。 ちぇんはちょっと考えてから、ゆっくりらしからぬ長文で答えるのだった。 「……うんうんさんやしーしーさんをおにいさんのまえでみせたら、ちぇんはつぶされてしまうんだにぇぇぇ。 だから、おといれさんにいって、てぃっしゅさんやすなさんのうえでするんだにぇえ。そして、したあとは てぃっしゅさんできれいきれーいにするんだにぇえ」 うん、やっぱこいつ、並のゆっくり以上の知能がある。おそらくは、親の苦い追体験がちぇんにそのまま 遺伝しているのだろう。 ゆっくりはある程度の知識を親から継承するものである。 ただ、通常のゆっくりの場合、本能以外の知識に関しては親が嫌な記憶としてうんうんとして排出する為に、 殆ど知識継承することがない。基本的に受け継がれるのは、ゆっくりがゆっくり出来たことに関してだけなのだ。 だが、このビターちぇんの場合、親があにゃるとまむまむを塞いでたために、排出されるべき記憶、それは 虐待の記憶であったり、それ以外の知恵や知識だったりと、本来はゆっくりが継承しないはずの知識がまるまる 仔であるこのちぇんにも継承されていたのだ。 これはごく稀なケースであり、食用とされるゆっくりの殆どは、それ以前の知識すらないゲスか、食べて遊んで クソして寝るだけの駄饅頭もさらに駄饅頭といった、ペットにする程の価値もないゆっくりだったりする。 もっとも、食用の殆どが加工されるために、生食用の踊り食い専用のものでもない限りは、そうそうそういう個体と 出くわすことはないのだが…… 俺はビターちぇんに、さらにいくつか質問した。 ごはんさんを食べるときの食べ方や、おうちがどのようなものか、ひとりでゆっくりすることができるかどうか、 そして将来つがいといっしょになって、家族を増やす気があるのか。 ちぇんは、おおよそ大方のブリーダーですらお目にかからないような回答を、渋い声でゆっくりと返してきた。 以降、ここから先のちぇんの言動は、通常のゆっくり口調でお送りする。 曰く、ごはんさんは静かに、むーちゃ、むーちゃとかいってはならない。余所の赤ゆがむーちゃむーちゃと 喋りながら、ごはんさんをぼろぼろ零している様を見て、思わずぷきゅー!したくなった(と言う記憶を受け 継いでいる)。 曰く、おうちは今いる洋菓子箱程度で十分である、もともと人間に食べられるためにうまれてきたちぇんに、 おうちさんなんてもったいなくて要求するだけでも恐れ多い。それに、あまり他のゆっくりと共にいるより、 一人のほうが落ち着く。おうちせんっげん! するようなゲスはせいっさい! されて当然である。巡り巡って いつかちぇんたちも潰されてしまうだろうから。 曰く、そんなことはわからないよー。だって、ちぇんはしょくよう! だから。仮にかいゆっくりになっても、 らんしゃまが目の前にでてきても、つがいはほしくない。だって、けっこんっ!! はゆん生の墓場だから…… おまえ(の親)の受けてきた教育と言うのがどういうものか、ちょっと知りたくなってしまったよ、お兄さんは…… と言うか、これはマジで拾い物なんじゃねえか? 通常のゆっくりとはかけ離れた、とてもゆっくりらしからぬ言動は元より、躾けはブリーダーもびっくりな レベルで本能として刻み込まれているうえに、頭も相当いい。 なにより他の種のゆっくり、特にれいむ種に多い「自己中心的なゲスゆっくり」になる要素が、発言からも殆ど 伺えない。こんなの、ドゲスでいぶとつがいになり、そのゆん生を人間によって開放されるまでずっと奴隷同然の 扱いを受けていたよっぽど不幸のどん底にいたまりさ種だとかでもないと言いそうにもないものだ。 普通、通常種のゆっくりは一匹飼いするには非常に難しく、他のゆっくりといっしょでないとすぐストレスで 衰弱死したり、死なないまでも飼い主との力関係を理解せずにゲス化するなど、不幸な結果に陥りやすい。 かといって去勢済みの二匹飼いでも、おちびちゃん問題が付きまとうのだ。 さらに、ちぇん種に限って言えば、それらプラスでらん種への餡伝子レベルでの依存があるのだ。 これはもうちぇん種の種族的な欠陥と言うか欠点と言うか、ブリーダーが赤ゆのころから教育していても、 この依存を矯正できるのはかなり稀なことなのだ。それを、このちぇんは赤ゆのレベルで乗り越えている。 昔飼っていたぱちぇの事を思い出す。 ぱちぇ種は体が弱い上に、その頭のよさを誤解して不幸な結果に陥りやすいのだが、その部分を乗り越えれば、 意外と一匹でも飼いやすいゆっくりだった。 なまじ、忙しいと朝起きて夜中遅くに帰ってくるような生活を送っている俺にとっては、やれ遊ばせろだの、 やれ餌をくれだの、やれ排泄物の始末をしろと騒ぎ立てるれいむやまりさといったゆっくりよりも、本を与えて おけば、それなりーに時間を潰せるだけ賢いぱちぇが一番飼いやすかった。 一人で生きることは、人間だって寂しいものだ。時には会話に飢える。 そんなときに、ぱちぇを相手に喋ったことが、どれだけ心の支えになったものか。 最初のうちは生意気なところもあり、誤った知識をひけらかして得意げになることもあったが、一度ぱちぇの 自信を無残にぶち崩し、人間の持つ本当の知識と知恵……(といってもインターネット仕込みではあったが)を 披露する事で、ぱちぇとの関係は飛躍的に改善し、俺は話し相手を得る事に至り、ぱちぇは正しい知識と知恵を 学び、俺との会話を楽しんでゆっくりするような関係となった。 ぱちぇは、俺との会話をするうえで得た知識を元に、近所の飼いゆっくりの相談相手となった。 一時期は周辺の飼いゆっくり達のごいけんやくにまで収まっていた。 寿命で亡くなった時には、数多くのゆっくりたちの弔問があったことを思い出す。 それに比べるとちぇん種は活動的な種で、どちらかと言うとそれなりに裕福な家庭で、庭飼いするのが理想的な 種であった。好奇心が強く、ぽいんぽいんと庭の中で跳ね回って雑草や昆虫を捕食するイメージが強く、事実 野生のゆっくりにおいてはまりさ以上に生存能力が高い。 ただ、都会のアパートで一匹だけ飼うと言う条件下では、飼うには難しい種ではあった。 けれど、このビターちぇんは違う。 下手をするとぱちぇ以上の知識、知恵を有している上に、性格が渋い分、おとなしくて思慮深いところがある。 なによりも、親から受け継いだ記憶が響いているのか、極度の人間見知りとゆっくり見知りの気がある。 やもめ暮らしの30男が、無聊を慰めるついでに飼う位には、負担になりそうになかった。 そう結論付けると、俺の心は決まった。すでにぱちぇが寿命で逝ってから3年が経つ。 そろそろ、いいかもしれないな…… 『ちぇん』 俺はちぇんに呼びかけた。 「……どうかしたのかにぇ、おにいさん?」 訝しげにちぇんが俺のほうに顔を向けた。 『ちぇんは…… 飼いゆっくりになる気はないか?』 「ゆ、ゆがああああああん!!」 よほど衝撃的だったのか、ちぇんは口を大きく開き、ホントに目が飛び出しちゃうんじゃないかと思うくらいに見開いて、 驚愕していた。 「お、おにいさん…… いま、なんと言ったんだにぇ……?」 『飼いゆっくりにならないかと』 大事なことなので2度言いました。 「いまなんと、ぬぁんんとぉ、ぬぁああああんといったんだにぇえええ!??」 ごめん、ちょっと怖いよお前…… けれど、ちぇんの餡子脳がそれを信じることを拒否しているようだ。 確かにゆっくりに対する風当たりというのは、非常に悪い。それもこれも、ゆっくり自信にも確かに原因があるのだが、 一方で飼い主である人間にも、相当問題はあるのだ。一方で、人間とゆっくりが信頼関係を結べれば、意外となんとかなる ものでもある。それが俺とかつてのぱちぇのようだったり、それ以外の、数少なくとも共に生きることを選択した者達の様に。 『何度でも、お前が理解するまで言おうか』 やさしくゆっくりと、俺はちぇんに言う。 『お前を飼いたい。何か問題はないかい?』 すると、その言葉にちぇんは、滂沱の涙を浮かべたではないか。正確には砂糖水だが。 「が、がいゆっぐり…… ちぇんばぁ、ちぇぇぇぇんばぁ、がいでゅっくりざんになってもいいんだねにぇええ? ぼんどだんだで? ぼびびざあああん!!!」 ビターな性格だろうと、感極まって泣くときゃゆっくりでも泣く。そういうのだっていいものさ。 少なくとも、俺は虐待鬼威惨のように「全てのゆっくりを殲滅するまで、虐殺を、やめないっ!」というわけではない。 まあ、たまに虫の居所が悪くて野良ゲスを潰すようなことはあるが…… ただ、己の分というものは誰にだって、何にだってあるあるもので、それさえ弁えてくれていれば、俺はそれでいいんじゃ ないかと思う。 この出会いが、最良の選択になればいい、と思った。 その日は出勤の日であったが、ちぇんが泣き止まないこともあって、身内の不幸があったとかなんだとかでごまかして 休暇をとることにした。 まあ、年次休暇なんて殆ど取らないし、幸か不幸かゆっくり声ならぬ強力○本な声で泣くのが一匹いるおかげで、それほど 疑われることはなかったのだが。 ……同僚を殴る蹴るするのは明日に回そう。 さて、ちぇんが落ち着いたら、飼いゆっくりの登録とか、あたらしいゆっくり飼育用品とかを買い出しに、久々にゆっくり ショップへ行こう。 声も性格もビターなちぇんと。 おまけ 「おう、相野。アレどうだったよ?」 翌日、会社のロッカールームで出会った同僚から、そんな話を持ちかけられた。やっぱり元凶はコイツか。 「てめ、逆田井。あんなもん俺に押し付けんな!」 言いつつ同期の同僚で虐待鬼威惨でもある逆田井に蹴りとパンチを数発くれてやるのだが、相手は仮にも虐待鬼威惨である。 ゴツくマッシブな肉体を、スーツとワイシャツで無理やり押し込めてる感もある同僚は、俺の蹴りやパンチを易々といなして、 ガハハと笑って受け流す。まあこの男相手にドツキ合いをかまそうものなら、俺のほうが間違いなく重症だろう。 「なんだよー、酒好きなお前のことだから、ビター種のちぇんは旨かったんじゃねえのか?」 お互いコートを脱ぎ、ロッカーの中のハンガーを取り出して、ハンガーにコートを通しながら同僚が聞いてくる。 「いや…… 結局喰わなかった」 「あん? どうしてよ?」 一足先にコートをロッカーに吊るして、ロッカーの扉を閉めた俺は、同僚があわてる様を視界の端に収め、奴を置いて ロッカールームを出る。肩透かしの答えが返ってきたことで、奴はさらに食いついてきた。 「どうしてってな…… 踊り食いするにはちょっとな」 「そういうもんかね。棄てたのか勿体ねえな」 あまり残念そうにない口ぶりで返す同僚。こいつはこいつで、お楽しみでしたね!だったのだろう。 「そういうお前は食ったのかよ?」 という俺の問いに、奴は胸を張って当たり前だろう? と答えた。 まあ当然のことだろうな。伊達に20年近く虐待鬼威惨をしてる奴にはゆっくりの命乞いなどBGM代わりに過ぎないし。 「ちぇん買ったついでによ、冷凍れいむとまりさとありすを試しに買ってみて食ったんだがよ、これが解凍して 食ったらゆぎゃあゆぎゃあ五月蝿くてなぁ。ありすは口の中で転がしつつ甘噛み繰り返してふにゃふにゃにしたところを 一気に食ったらスゲエ甘くて…… 胸焼けしそうになったわ」 等と聞きたくもない口内虐待の結果を喋りだす同僚。まあ、喋りたい気持ちはわからんでもないが。 「でよ、解凍した饅頭どもがウザい限りだったんで、最終的には全部口の中にほおばってグッチャグチャよ」 解凍したら、やれゆっくりさせろだの、あまあまよこせだの、おとーしゃんおかーしゃんにあわせろだのと、テンプレ 通りのセリフを垂れ流した後に、「おうちせんっげんっ」までしてのけたとか。 あーあー、そりゃ普通の通常種じゃそうなるわなあ。 こいつのことだ、そんなゲス赤ゆどもに一発でキて、生きたまま赤ゆの踊り食いを敢行したんだろうなあ。 「茶を飲みつつか?」 「いんや、頑張って噛み潰したあとに、茶は飲んだ。いやあまあ口の中でぷくーとかしたって、お前半分潰されてんのに よくやれるな、って噛んでて思ったもんさ」 ゆっくり最高の威嚇手段ともいえるぷくーであるが、そんなもん人間の顎の力の前に紙風船が膨らんでるのと同様である。 舌と上顎によって押しつぶされ、限界を迎えたところでぷちゅっと潰してやるだけだ。 口の中ですりつぶされて行く赤ゆどもの絶望感は、いかほどなものかは理解したくもないが。まあウザい饅頭にはお似合い の結末なのかもしれない。 「やっぱれいむはだめだな、粒の皮が歯に挟まっていけねえや。ウザい上にカスも残すわ最悪だわ。まあ噛み潰してすっきりー させてもらったんだがな」 と朗らかに笑う虐待鬼威惨の同僚。うん、お前マジキチだな。 「ぱちゅりーはケツ噛みちぎって、ちゅるんっと中身を吸い出しておしまい。あいつらは中身を漏らす前に吸い取っちまった ほうがうめえな」 右手の親指を立てて、ニカッと笑う同僚にマジで殺意を覚えた。 「おいてめえ、俺が昔ぱちぇ飼ってたの知っててのセリフかコラ」 険悪なムードになりかけるが、この男そこら辺を強引に笑い飛ばすから始末に置けない。 「おいおい、お前んとこのぱちぇって食用ゲスとは大違いだろが。まあゲスだから食用だっつー話もあるがな」 済ました顔で答える奴に、俺は心底あきれ返る。まあ、ゆっくり駆除の営業やってるような俺達が言うにはあまりにも アレな話のような気がするが…… 「まりさはどうしたんだよ? どうせお前のことだ、買って食ったんだろ?」 仕事場であるオフィスの自席に座り、パソコンを立ち上げつつ、隣に座る同僚に声をかける。 「やっぱ気になんじゃねえかよ。まりさか…… まあ、れいむよりかは食感はマシだな。ぶっ潰したあとだから」 同僚も自席に座り、パソコンの電源を入れながらそう返す。やっぱりウザさで先に潰したか。 まりさ種、というか赤ゆのまりちゃはどうにもこうにも向こう見ず・世間知らず・自惚れにプラスして、赤ゆ特有の全能感 と言う、始末に置けない妄想を持って生まれてくる。 さらにゲスとくれば、潰される倍率ドン、でバンッだろう。中枢餡ごとまっ平らーにされたまりさに同情の余地など 1ミリほどの余地すらないが。 「もう、まっ平らーにぶっ潰して半殺しにしたところでがぶりでお終いだな、喋られちゃいけないわ、ありゃあ」 「容赦ねえな、相変わらず」 きっと、ろくでもない全能感をもったゲスだったんだろうな、そいつをこの同僚の開いた親指から小指までの幅が24cmも ある虐待ハンドで潰されたとか。ああこわいこわい。 「そういや、ちぇんはどうだったんだ?」 「お前のとあわせて都合4匹買ってな、1匹はお前にやったが。スウィート種のほうは製法に問題あるかもなあ。尻から 中身かき回すような事してるから、噛んだ食感がチョコクリームっぽいのがなあ…… ビター種のほうはそれなりーかな」 話を聞く限り、生まれて間もない赤ちぇんのあにゃるから針金をいれ、皮を破かないように中をかき混ぜるという調理法 のせいで、玄人が期待していた中枢餡とそれ以外の部分の食感を確かめられなかったと言うのが残念だという。 残ったスウィート種は、湯を沸かした鍋にぶち込んで、ホットチョコレートにしたと言う。 ただそれも、飲む際にお飾りの食感が触るのが気になったとかで、まだまだ改良の余地があるな、と呟くのが聞こえた。 「まあどいつもこいつも、俺が踊り食いを始めると、とたんに罵倒したり命乞いしてなあ、一気にウザくなるわァ、ありゃ」 その仕返しをし足りてないのか、物騒な笑を浮かべるこの男を何とかしろと言いたい。 「ゆっくりの踊り食いなんて真似するからだろ。」 起動し終わったPCのマウスを操作して、メーラーを立ち上げる。2日ぶりの出社と言うこともあって、問い合わせや確認の メールがいつもの倍以上だ。 「うぇ、メールが溜まってる……」 「そりゃお前、昨日休んだからな。にしても随分と急な不幸だったなあ。連絡くれた際に後ろで聞こえてたオッサンの むせび泣きと言うか大号泣は聞くに堪えなかったけどな」 う。それはちぇんの泣き声だ。だがそれをストレートに言っちまうと、仕事をサボったことがばれちまう。 「そ、そうだな…… ずいぶんとまわりから慕われてたようだしな……」 内心で冷や汗をかきつつ、俺は激濃ビターなチョコレートを食ったような表情で、同僚に返すのだった。 事がばれるのは、約一ヵ月後の悪夢再びの日になったのは、ここだけの話。 おしまい
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―四股付きゆっくり― 四股付きゆっくり、これは今までにないゆっくりの亜種であり、胴付きとは違いゆっくりの足の裏、通称あんよに四つほど突起物が付いているものである。近年では、れいむ種を皮切りに別種のゆっくりにも見られゆっくりの進化の一つとして研究されている。 今回、我々は〇〇県のゆっくりセンター内にて、自然界における四股付きまりさの撮影に成功した。いかに四股ゆっくりが生まれたのかを克明に表現している物である。是非ともご覧頂きたい。 まりさはドスまりさの群に所属するごく普通のゆっくりでした。土埃で薄汚れてはいましたがスキの通る綺麗なブロンドの髪にぷにぷにほっぺ。立派にとんがったお帽子さんにニヒルな笑顔。 「ゆふふ! まりさがいちばんかっこいいのぜ!」 お調子乗りだけど、どこか頼りがいのある普通のまりさです。 ですが、幸せは唐突に消え去ってしまうのです。 「どどどどどどどどすぅううううう!!! たすけてぇえええええええ!!!!!!!!!」 広場からゆっくりできないまりさの声を聞きつけ、どすは急いで駆けつけました。 「ゆゆ!? みんなどうしたの!!?」 群の皆が集まって一匹のまりさを包囲しているのです。 「みんながいじめるのぜぇえええええ!!!!!!!!!」 「ゆゆ! それはゆっくりできないよ!! みんなやめてね!!!」 いつもなら鶴の一声ならぬドスの一声で静粛にするみんなでしたが、今日は違います。まりさをじっと凝視したままなのです。 「ゆっくりできないよ!! どーゆーことかせつめいしてね!!!」 痺れを切らしたドスの一声で群がっていた一部のゆっくりが場所を空け、ドスにまりさを見せました。 「こ、これは……ゆっくりできなぃぃいいいい!!!!!」 まりさの足に四本の突起物が生えているではありませんか。 「ち、ちがうのぜぇええええ!!!!!!!」 まりさは必死になって足を隠そうとしますが、生えたばかりなので足を折りたたむ術を知りませんでした。 『ゆっくりできないまりさはどっかにいってね!!』 なし崩しに群を追い出された四股まりさは森の中をトボトボとさ迷いました。 「ゆぅ………」 今まで仲良くしてきた仲間たちに歯をむき出しにされ攻撃されたことを気に病んでいました。動かし慣れてない四股を必死に動かしながら逃げている姿が脳裏に浮かび、更にゆっくり出来ませんでした。 「どぼじでごんなものがはえできだの……」 シクシクと口を噛みしめて悔し涙を流しました。ですが、状況は変わらず四股が体を支え続けるのです。 「こんなへんなのいらないよ!!」 地団駄を踏みつけながら四股に八つ当たりをしますが、返ってくるのは痛みだけでした。 「ううう………」 「そこにいるのはだれだ?」 「ゆっ!?」 背後を振り返ってみるとそこには胴付きふらんが立っていました。 「いったいどうしたんだ?」 「ゆ、あ、あ、あ……」 いつもの調子ならばふらんだと叫んで半狂乱になりながら逃げていたでしょう。ですが、四股まりさには絶望に絶望を重ねた結果となりその重しが四股まりさを硬直させました。 「た、たすけて」 ガタガタと足を震わせながら四股まりさは命乞いをしました。 「べつにころすきはない。ただ、こんなところにゆっくりがくるのはめずらしかったから」 安心したまりさは伏せていた顔を上げました。 「そのあし、どうしたんだ?」 「ふ、ふらんもどうしたのぜ……」 このふらんも普通とは違うゆっくりできないふらんでした。お帽子を被ってはおらず右目もひとつ足りない。お洋服も所々ちぎれていて靴も履いていませんでした。 「これはへんなどうつきにやられた」 後々判明したことですが、職員の一人がこのふらんに性的暴行を働いたそうです。もちろん、ゆっくりの生存権・動物愛護管理法に基づいて解雇処分と禁固3年の厳罰を与えました。 「それはゆっくりできないね……」 四股まりさは自分の状況を考えふらんにも当てはまると考えました。お帽子やお洋服などのゆっくりにとっての飾りは自分を証明するものであり、それがなければ仲間として認識されず最悪凄惨な虐待を受け殺されてしまうのです。 「よかったらいっしょにくらす?」 ふらんが人間から逃げ出し群から追い出されて三ヶ月。ゆっくりにとっては長い長い時間です。その間に襲ってくる孤独を紛らわせたいがためにまりさに声をかけました。また、詳しい話は聞いていないけど四股まりさも自分と同じだと感じ共感を覚えたからです。 「ゆん、いいよ」 四股まりさも同じです。 一匹のまりさが狩りをしていました。 「やべでぇええええ!!!!!!」 他の仲間がいないのを確認してふらんがまりさを襲ったのです。 「やめない」 容赦なくふらんの正拳突きがまりさの目に突き刺さります。 「うぎゃぁああああああああああ!!!!」 「うー!」 力加減を間違い潰してしまったのでもう片方の目と眼光の間に五指を差し込みました。 「いぎゃああああああああ!!!!」 あまりの痛みにまりさが暴れだし、スポンと目を取ってしまいました。 「あとはあまあまにしてやる」 「もうかんべんしてくださいいいい!!!!」 ふらんの住処は危険性を考慮して、ドスが統治していない群の近くに築いています。また、ほかの同族が襲ってくる可能性も考えて羽のない基本種と同様、洞穴に住んでいます。 「かえった」 「ゆあああ……」 餡子漏れで弱りきったまりさを乱暴に地面に叩きつけました。 「ゆげ!」 「ゆゆ! きょうもありがとうなのぜ!!」 四股まりさがひょこひょことまりさの前に出てきました。 「や、やべぇ、ぎゃぁあああああ!!!」 共食いは禁忌ですが、四股まりさはなんの違和感も感じません。なぜなら、ふらんとの生活で慣れてしまったからです。 当初はふらんが取ってきたゆっくり達に同情をしましたが、四股まりさを見ては侮辱するゆっくりが多く、四股まりさは自分は基本種とは違うゆっくりであることを意識付けられたのです。 「むーしゃむーしゃ、それなりー」 「あ、あ、あ、あ、あ、あ、」 痙攣し続けるまりさを無視し、四股まりさは体の半分を食べました。残りをふらんが食べます。取って来た側が食べさしを食べるのはどこかおかしいと思えるかもしれませんが、食べられたショックでまりさが甘くなっているので食べさしの方が美味です。 「おいしい」 「ゆ~しょくごはゆっくりするのぜ~」 「う~」 今日もこっそりと二人のゆっくりを確かめ合いました。 「ふらん、まりさはすごいことをかんがえたのぜ」 お外でこそこそ遊んでいるときにまりさはピンとひらめいたのです。 「なに?」 「いぜん、まりさのせなかにふらんがのったでしょ。あれをすればふらんもまりさもさいきょーになれるのぜ!!」 お馬さんごっこの事だろうか。ふらんは首をかしげました。 「それがなんでだ?」 「まりさははっけんしたのぜ! まりさはしゅんそくさんなのぜ!!」 確かに、四股まりさの足は早い。ふらんが本気で飛んでも追いつかない程なのです。これは食生活が良くなったせいでまりさの体が成長したというファクターも存在します。 「まりさはきづいたのぜ! このあしさんはゆっくりしたまりさへのおくりものなのぜ!!」 この発言通り、四股まりさの足は進化の過程に出来たものです。移動の遅いゆっくりでは捕食種やその他の動物に対して捕まりやすいから、足が生えスピードが増したという学説があります。 「まりさのしゅんそくさんとふらんのぱわーであいつらにめにものみせてやるのぜ!!」 「ふらんだ!! はやくにげろぉおお!!!」 叫んでいる暇があれば逃げればいいのにそうはいかないのがゆっくりです。 「いやぁあああああ、ぐ……もっと…ゆっくり………」 「ばりざぁあああ!!!!! あぎっ!」 四股まりさに跨り長めの樹の枝を振るいながら基本種を次々と殺していきます。四股まりさとふらんは試しにどれほどの力があるかを確かめるために餌場にしていた基本種の群を襲うことにしたのです。 「ゆゆ! いいきみなのぜ!! れっとうしゅはすみやかにしね!!!」 「うーこれできがすんだか?」 これはまりさの恨みが含まれていたのもふらんは承知しています。本当なら騒ぎを起こさずにひっそりと生きていけばよいと考えていたのですが、無二の親友であるまりさのことを思えば付き合うほかなかったのです。 「ゆふふ、まだまだやるのぜ!! きばふらんはさいきょうなのぜぇえええ!!!」 これから先、ゆっくりっできないだろう。それでもふらんはまりさの為なら死ねると考えています。 ここまでが撮影したぶんである。その後ふらんと四股まりさがどうなるかはわからない。多分、ドスや基本種の集団に殺されるであろう。 作中にもあったとおり、四股が生まれた理由はシンプルに進化の過程であるという学説がある。速度や地面との接地面積を減らすため等。だが、ある研究では遺伝子疾患である可能性を指摘されている。ゆっくりは極端に胴付きを嫌う傾向にあるのは有名な話であり、それらを踏まえてゆっくりは進化を嫌う保守派な生き物として考えられている。今回のまりさに関しては足が早くなりたいという気持ちが四股にしたのではないかという推測もある。ゆっくりは尋常じゃない速さで遺伝子を自分で組み替えることができる生物なので学説としては十分信頼のできるものである。 結果としてどの学説が正しいのかは分からない。だが、まりさも言っていた通り、これはギフトであり、ゆっくりの世界にセンセーショナルを巻き起こすものになるのは間違いない。 書いたやつ anko1864 まりさは“英雄ん”なのぜ! 1 anko1876 まりさは“英雄ん”なのぜ! 2 anko1986 まりさは“英雄ん”なのぜ! 3 anko1992 まりさは“英雄ん”なのぜ! 番外編 anko1995 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4 前編 anko1999 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4 後編 anko2026 ゆっくりの権利 anko2089 此の世のひがん anko2108 ゆっくりしていってねだどー☆ 詳しく書く力がありません。後続の部隊に任せた。 by嘘あき
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『隻眼のまりさ 第三話』 17KB 戦闘 群れ 例によって続きです。どうぞよろしく。 初めましての方は初めまして 他の作品を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 タイトルどおり前作の続編です。 ――――――――――――――――――――――――――――― ――――某日、日の出―――― ここはいつものゆっくり達が住む集落。 まだ日が昇ったばかりでゆっくり達はまだ夢の中。 ただし、現在広場にいるゆっくりを除いてだ。 隻眼のまりさは早めに目を覚ましていた。 早起きをしてトレーニングをしていたのだ。 「ゆ゙っ…ゔっゆ゙ゔゔ………!!」 まりさは直立姿勢から比べて大きく右に傾いていた。 斜めに立っていると言った方が正しいかもしれない。 足である底面全体を地面につけるのではなく 足と側面である場所ギリギリのところに力を集中し 不安定な姿勢で立っていた。 「ゆっ!あっ!うわ!!」 バランスを崩し横にコロンと転がってしまった。 ふぅ、と一息つくと今度は足の左側に力を込めて身体を左に傾ける。 「ぐっ…ゆ゙っ…ゆ゙ゆ゙っ………!!」 これは、あの時のきめぇ丸の状態を必死に思い出して考えた 隻眼のまりさの新しいトレーニング方法だった。 あの時、きめぇ丸はものすごく横に傾いた状態で平然と立っていた。 自分が真似してみると、ものすごく辛い。 人間で言えば片足立ちで横に重心をずらしているようなものだ。 まりさはただ走るだけのトレーニングでは限界と考え とにかく新しい方法を試しているのだ。 「よっ!わっ!ぐぐぐぐ……!!」 バランスを崩しそうになったが何とか踏みとどまった。 以前ぱちゅりーに強くなるのにどうしたらいいか、と 聞いたことがあったのだがその時人間さんは 様々な方法で身体を鍛えているそうだが その方法のほとんどが手足を使ったものばかりなので 今のまりさに真似できるものではない。 だが一つだけ、鍛えたいところがあるなら その部分を使い続ければいいということだけは はっきり分かっている、と。 「ぬ゙っ…ゔっ…ふぅ……」 今度は自発的に力を抜いた。 ここで無理をして狩りのほうに影響が出ても困るので 体力全てをつぎ込もうとは思っていなかった。 まあ要するに、走るのが速くなりたければ 足を使い続けて強化するしかないということだ。 そこにあのきめぇ丸を真似してみた結果が今のトレーニングだった。 ――――同日、朝方―――― 集落のゆっくり達が起き始める時間だ。 仕事始めと言ってもいい。 「あ、まりさ!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっく…おはよう!」 まりさの試行の二つ目。それはゆっくり断ちだった。 あの日感じた違和感が形となっていたのは『ゆっくり』という 単語であったことに気が付いたのだ。 自分は速く走りたいんだ、ゆっくりじゃなく。 これがどのような結果を生むのかは、或いは何も起きないかもしれないけど ゆっくりすることを至上とするゆっくりという種のとっては壮大な試みだった。 場合によっては集落から追放なんて事態もありうると 考えたまりさはこのことについては誰にも相談していない。 実際、他人を罵るときに『ゆっくりできない』なんて物言いがあるくらいだ。 その単語を発することをやめるなどと言い出せば何が起こってもおかしくない。 だが、断ってみて気が付いたのだが別にゆっくりという言葉を発しなくても 『おはよう』とか『こんにちは』とか代用できる単語はあるし ゆっくりしなくても食事や狩りは出来る。 「じゃあゆ…じゃなくて、早く『ぶりーふぃんぐ』に行くよ!」 『ゆっくり○○するよ!』などと言葉を発して行動するのが多いゆっくりだが だからこそ逆にこの隻眼のまりさが気付くことができたことなのかもしれない。 「むきゅ?早いわね。もう来たの」 「うん。ドスは?」 「まだ寝てるわ…」 ドスの洞窟に行ってみるとぱちゅりーがすでに動き回っていた。 ぱちゅりー種は身体が弱いと聞くし、実際斜向かいに住んでいる 親ぱちゅりーは家にこもりがちなのだが 集落の参謀を務めるこのぱちゅりーは肉体労働こそしないものの 大声を出したりするとても元気なぱちゅりーだ。 さすが子育ての上手いと言われた前村長が育てただけのことはある。 「おはよー!!ゆっくりしていってね!!!」 「おはよう」 幼馴染のまりさの一匹が洞窟へやって来た。 今度はゆっくりと言いかけることもなく挨拶ができた。 「ぱちゅりー!今日は何をすればいいの?」 「待ちなさい。皆で聞かないと駄目よ」 それからしばらくして。 「むきゅ、それじゃあ『ぶりーふぃんぐ』を始めるわ」 皆がぱちゅりーに注目いつもの光景だ。 だが、隻眼のまりさにとってはここで一つの問題にぶつかった。 そういえば、みんなと走れというのがリーダーの言葉であり 自分の守ってきた行動理念だ。 だが、今のまりさは一人で走ろうとしている。 そのことを誰かに相談すべきではないか? 自分ひとりの考えで行動することがどういうことか分かっているのか? 「じゃあ今日はあなたが皆を連れて虫さんのいっぱいいる 森に行ってね」 「え?ああ…うん…」 「どうしたの?まりさ」 「なんでもないよ」 ぱちゅりーの言葉に反応するのが送れたためか 横にいたまりさが少し心配そうに声をかけてくる。 そうだ、自分は何も皆から離れようというわけではない。 いつも通り仕事をこなして、いつも通り行動し その合間に自分が気付いたことを試していくだけだ。 そこには問題はない。 それにまりさ自身分からない領域に踏み込もうというのだ。 他者に理解してもらえるなどと初めから思っていない。 やれるだけのことをやって自分が満足すればそれでいいのだ。 隻眼のまりさはそのように自己弁護して自分を納得させた。 「じゃあドスは、私と『ばりけーど』のために使う 資材を探しに行くから」 「ゆっくり理解したよ」 以前までなら何気なしに使っていた表現に 我知らず嫌悪感すら覚えるようにまでなっていたことには 目をつぶりながら。 ――――同日、昼前―――― 「ま、まってよー!!まりさー!!」 「れいむは疲れたんだねー、わかるよー」 「こんなに早いなんてとかいはじゃないわ!」 隻眼のまりさは集落の若いゆっくり達を連れて狩りをしていた。 「大丈夫!まりさは遠くへは行かないよ! 皆が離れてきたらまりさが自分から戻ってくるからー!!」 まりさは左右ジグザグにぴょんぴょん飛び跳ねながら大きな声で答えた。 これはまりさが戦闘スタイルを見直す意味で考えた 新しいフットワークだった。 ゆっくりの戦闘スタイル、というよりは唯一の攻撃手段は体当たりだ。 場合によっては噛み付き攻撃もするが通常種には れみりゃのような鋭い牙も中身を吸い出すような器用な真似はできない。 加えて、体当たりによる攻撃は直線的だ。 昔から破れかぶれに真っ直ぐ突進して痛い目にあったなどという 例は数え切れないほどあった。 「ゆっ!ほっ!やっ!!とうっ!!」 そこでまりさが考案した左右の高速シフトだ。 早朝のトレーニングで鍛えた左右への力の強化が活きてくる動き。 れみりゃの直線的な動きはれみりゃの周りを回ることで回避するという 方法が考案されていたがそれだけでは攻撃に移れない。 が、左右への動きが可能ならば回っている最中に 突然真横に飛んで体当たりしたり 場合によっては直線の攻撃は避けながら接近が出来る そんな攻防一体の戦闘スタイルだった。 これを思いついたきっかけもやはりあのきめぇ丸だった。 あんなに速い奴の攻撃を目で見て避けるなんて不可能だ。 だからこそ全く止まらずに左右に移動し続け的を絞らせない作戦。 「蝶がいたよ!」 木の根元に生えている花に大きな蝶が止まっていた。 まりさは蝶の正面に回りこみ、花ごと噛み付くつもりで飛び掛った。 「はっ!!」 接触寸前に蝶が横へ飛んだ。 まりさは蝶野位置を横目で捉えると 「えいっ!!」 横っ飛びで木に体当たり。 蝶を挟み込む要領で潰して仕留めた。 この行動には、連続攻撃の意味合いもある。 攻撃位置への移動、そして連続でジャンプをすることで 外れた対象に方向転換することなく着地の瞬間真横や真後ろに向かって再び攻撃ができる。 今仕留めた蝶もそうだが、動く敵には攻撃し辛いし 自分が縦横無尽に動けるのならば回避行動も攻撃行動もとりやすいという 利点を併せ持っていた。 「いたたたたた…蝶々は…それなりー」 あまりにうまくいったため調子に乗って思い切り体当たりをしてしまった。 木と衝突した身体がちょっと痛かった。 ――――同日、昼過ぎ―――― 太陽が真南を通過する頃、一行は目的の狩場で狩りをしていた。 隻眼のまりさはというと、木の枝をくわえては下ろしている。 「これは大きいかな…こっちは細いかも…」 ここでまりさが行っているのは武器の選定だ。 戦闘において、敵に止めを刺すには必ず二匹以上での連携が不可欠だ。 というのも、ゆっくりの死亡条件である中身の喪失という条件を ゆっくりの身であるまりさが満たすには、相手の頭部を潰すしかないのだ。 そして頭部を潰すには囮役となり敵の攻撃を回避する役 敵を倒すか止まった敵に一撃を加えてフィニッシュに持っていく もう一匹がどうしても必要。 それが必要なのもゆっくり同士で相手を損傷させるのが 困難であることに起因する。 そこでまりさが取った方法の一つがみょん種のやっている 木の枝を使った戦闘方法である。 だが、みょん種が特別強いというわけではない。 問題は致命打を与えるかどうかということ。 一対一でならともかく、多数対多数の戦闘で 木の枝を使って攻撃を仕掛けたとて、一匹にダメージを与えるだけで 殺すことはできないし、刺した棒を再び武器として使うには 抜いてから再び構えないといけない。 だからまりさは使い捨てで使える木の棒を選定しているのだ。 長すぎると取り回しが悪いし持って戦うにしても邪魔になる。 そして実際使うに当たって基本的には口にくわえて 体当たりの攻撃力を増大させるのが目的。 故にインパクトの瞬間折れることがないもの つまりは真っ直ぐであり、鋭く、なおかつくわえるグリップ部分が 太めになっている枝がベストなのである。 「っ!つっ!!」 口にくわえたまま例のステップを敢行。 一通りステップを踏んでみた結果、一本いいものを見つけた。 実戦で使ってみるまで使い勝手は分からないが 役に立たないのであれば捨てて戦えばいいのだ。 「まりさ、何してるの?」 「ん、別に…」 ありすが近づいてきた。 元々誰かに話すつもりはなかったし このありすに話しても理解できるとは思えなかった。 「最近まりさ、かっこよくなったわよね…」 「え?そ…そう…?」 なんだか様子がおかしい。 このありすはこの夏独り立ちをしたばかりで 越冬に向けての食料集めが難航してるという話を聞いた。 今回の狩りにどうこうしたのもそれが理由だ。 「なんて言うのかしら…変わったというか強くなったというか… 前のまりさと今のまりさは全然違う…」 「…………?」 なにやら身の危険を感じ始めた隻眼のまりさ。 が、仮にも集落の一員だ。 いきなり攻撃するわけにもいかない。 ともかく、話してみないことにはどうにもならない。 「ありす、狩りの調子はどう? 越冬に向けて秋のうちにたくさん食料を集めないと大変だよ?」 「まりさ…私とずっとゆっくりして!!」 ありすの唐突な言葉。 『自分とゆっくりして』はゆっくり達に共通する求愛の言葉だ。 そう言えばこのありすはまだ番がいなかったな、と頭の片隅で考える一方 隻眼のまりさは今回も『ゆっくり』という言葉に反応した。 「いやだよ!ありすとゆっくりするつもりなんかないよ!!」 ついつい怒鳴ってしまった。 今のまりさはゆっくりするつもりなど全くない。 ありすのゆっくりして、がまりさにとっては嫌悪感を感じさせる 言葉以外の何者でもなかったのだ。 ちなみに否定したのはゆっくりすること、なのだが ありすにとっては致命的な言葉。 そしてその一瞬の感情の爆発は 「まりさあああああああああああああああああ!!! つんでれなのねええええええええええええええ!!!」 ありすをレイパーとして覚醒させる起爆剤となってしまった。 「うわあああああああああああああああああ!!!」 飛び込んできたありすをバックステップで緊急回避。 危なかった。 今回自分が考えた戦闘スタイルがなければ こんな回避方法は取れなかっただろう。 そして自分が考えた方法が決して間違いでなかったことを 感じさせるには十分だった。 「まりさああああああああああああああ!!!」 そこでまりさは一つのことを考え付いた。 自分は武器の選定を誰にも話すつもりはなかった。 故に、ここには誰もいない。 そして、今自分の下には丁度いい枝が一本だけ。 レイパーと化して他のゆっくりを死なせた者は 例外なく制裁か追放だ。 だからこそ、このありすで模擬戦闘を行おうという考えに至った。 「まりさあああああああああああああ!!! すっきりしましょおおおおおおお!!!!」 「……っ!!!」 真っ直ぐ突進してくるありすを今度はサイドステップでかわす。 目を見開き涎をたらすありすは今までのすました ありすのイメージとはかけ離れている。 髪の毛を振り乱して突進してくる様はれみりゃとは 違う恐怖心を煽られる。 「どぼじでにげるのおおおおおおおおお!!??? どっでもぎもぢいいのよおおおおおおお!!??」 まりさに回避されたありすがこちらに顔を向けてきた。 顔面から地面に激突したありすはさらにひどい顔になっている。 正直直視したくない。 まりさは連続でバックステップを踏んで距離をとる。 「まりさあああああああああああああ!!!!」 それしか言えないのか、と冷めた感情を持ちながら サイドステップで接近。 「まりさああああああああ!!! やっどうげいれでぐれるのねえええええええええ!!」 冗談じゃない。 まりさの心はますます冷え切っていく。 すれ違う瞬間、まりさはカウンターチャンスを見ていた。 ゆっくり同士が衝突する場合、顔面から正面衝突するより 人間で言うショルダーチャージの要領で斜めから 当たるほうが有利だ。 その方が顔面が痛くないし側面のほうが凹凸が少なく頑丈 なおかつ痛みが少ないので手加減なしで体当たりが可能だ。 「どぼじでよげるのおおおおおおおおおおお!!!!」 連続で突っ込んでくるありすを最小限のサイドステップで回避。 まりさの回避運動が闘牛士のように冴え渡る。 普通のゆっくりなら背を向けて逃げてしまうため なりふり構わない突進をしてくるレイパーに体力差で 捕まってしまうのだが 今のまりさは最低限度の動きで回避しているのだ。 このペースで行けばありすのほうが先に力尽きるのがオチだろう。 「ばりざ!ばりざ!ばりざ!ばりざああああああああああ!!!」 ありすの顔はもう先ほどと同じゆっくりとは思えないほどに変貌していた。 その場ですっきりするつもりで仕掛けてきたのだろう。 連続しておあずけを食らって頭がおかしくなったのかもしれない。 が、ありすの熱が高まれば高まるほどまりさの心は冷え切っていった。 そして冷え切るのと同時に、これまでにない昂ぶりも感じていた。 ゆっくりしていた頃には考えられない。 冷めれば冷めるほど、冷静な回避ができた。 高まれば高まるほど、強力な攻撃が出せる予感がした。 「…!!」 そうか、と隻眼のまりさは唐突に気付いた。 これが戦闘だ。 ゆっくりにとって制裁やゲスの攻撃など単なる暴力だ。 相手がまともに抵抗しないように数や力だけで圧倒する 単純なものではない。 確実に、残酷に、相手の命を奪うことに特化した 命、誇り、信念をかけた戦い。 「ま…………まり…………………まりざぁ……… まりざああああああああああああああああああ!!!」 「うわああああああああああああああああああ!!!」 隻眼のまりさは全身に力がみなぎるのを感じた。 それは、不思議な感覚だった。 カウンターを発動するときの緊張感じゃない。 突進するときのがむしゃらさでもない。 最後の力を振り絞って向かってくるありすに まりさは、全力の攻撃を仕掛けていた。 ――――同日、夕刻―――― 隻眼のまりさは連れて行った狩りに行った皆と共に 集落へ帰還していた。 …件のありすをのぞいて。 「じゃあ、結局見つからなかったの?」 「うん、遠くに狩りに行ったのかもしれないし 気付いたらいなくなってたんだよ。 一人立ちしてからまだ狩りになれてなかったからかも…」 嘘だ。 ありすはまりさが殺したのだ。 「ごめんね。 まりさがしっかりしていなかったから…」 「仕方がないわ。 いくらまりさでも全部のゆっくりを見張ることなんてできないわ」 あの後、まりさが集合をかけて皆を集めた時 ありすは当然戻ってこなかった。 皆で少しだが辺りを探してみたが 地面に埋められたありすの死骸を 他のゆっくりが発見できるはずもなく やむなく集落に戻ってきた、という形を取ったのだ。 現在ブリーフィングでその旨を報告しているところである。 「ありすの家族は?」 「あのありすは一人だったし、おかあさんとおとうさんも もう死んじゃってるから…」 「…そう、わかったわ まりさ、今日は大変だったわね。 日が暮れるからもう休みましょう」 「分かったよ」 そう言ってぱちゅりーは自分の部屋であるドスの 洞窟の横穴に入っていった。 ――――同日、日没―――― まりさは、あの時のことを思い出していた。 『うわああああああああああああああああ!!!』 『まりさあああああああああああああ!!!ぎゅぶぇっ!!!』 いつものカウンターとは全く違う感覚。 木の枝をくわえて突進してくるありすに対して 交差法での体当たり。 それだけのはずだったのだが あの時の体当たりは全く違うものだ。 なぜならば、体当たりのヒットしたありすは見事に 『バラバラに砕け散って』死んだのだ。 その直後、我に返ったまりさは急に別の意味で頭が冷えていき 大変だ、どうしよう、と焦りに焦った。 だが少ししてからだったら埋めてしまおう、と思い 武器の候補として集めていた木の枝を使って ありすの死骸を地面に埋めてやり過ごした。 ありすがレイパーに名って襲ってきたと言えば 理解が得られるかもしれないが 何よりまりさはあの状況、あの感覚を 誰かに説明する気になれなかったのだ。 ゆっくり殺しの汚名を着せられることでもなく ただあの時の一瞬の感覚と 戦いの中で得たものをごたごたのせいで失くしてしまうことが まりさにとっては一番の損失だった。 そしてまりさはこの一件ではっきりと分かった。 自分を縛っていたのはゆっくりだ。 ゆっくりしていたらあのありすに襲われていただろう。 そして、ゆっくりしていたらあの感覚は得られなかっただろう。 もう二度とゆっくりするものか、と思いつつ 隻眼のまりさは倫理や、秩序、規範 そしてゆっくりとしての概念や矜持を捨ててでも この先にあるものを見てやる、と意識を新たにしながら眠りについていた 続く あとがき まず最初に、掲示板での様々なコメントありがとうございました。 下げた頭が上がらないというのはこのことです。 あれほどの反響が得られるほどこの作品が読まれていたことを そして続いて欲しいという言葉を嬉しく思います。 感想を一通り読ませてもらいましたが 全ての意見の中でおおよそ共通するのは 『評価されたきゃ完走しろ』というのがありました。 人気がないのであれば投稿自体が邪魔になってはいないかとも思っていたのですが 僭越ながら続けさせてもらおうという思いを新たにしました。 本当にありがとうございます。 加えて、感想を下さいなどということをあとがきに載せた事 本当に申し訳ありませんでした。 ご迷惑になっていなければいいのですが。 まあこの話題はこれくらいで。 この作品の特徴ですが ゆっくりがゆっくりらしくない 心理描写が多すぎ の二つを含むところはテーマ上変わらず続いていくので ご了承ください。 これからは私は九郎ver.2とまでは行きませんが 九郎ver.1.01位の気持ちでやっていきたいと思います。 お気に召しましたら、今後もどうぞよろしくお願いします。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 anko3053 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 前編 anko3054 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 後編 anko3060 ゆっくり駆除業者のお仕事風景3 anko3061 隻眼のまりさ プロローグ anko3075 隻眼のまりさ 第一話 anko3084 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 幕間 anko3091 隻眼のまりさ 第二話 anko3101 ゆっくり駆除業者のお仕事風景4
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【まんが博】大失敗を正視できない鳥取県 【まんが博】はもはや批判しかないのにまだ"大成功"と言い張る鳥取県 以下寄せられた情報------------------------------------ ○マスコミからも遠回しですが批判的な記事が出始めました。 島根神話博・鳥取まんが博、この程度で大成功と大本営発表では 毎日新聞 http //mainichi.jp/area/tottori/news/20120930ddlk31070369000c.html http //web.archive.org/web/20121128093759/http //mainichi.jp/area/tottori/news/20120930ddlk31070369000c.html 「観光客の増加は想定内。むしろこの程度だったことを深く分析したいものだ。 経済波及効果をはじいてイベント大成功と結論づけるはず。 「やった、やった」の大本営式の発表なら油断を生んでしまうだろう。」 まず間違いなく大本営発表でしょうね 面子と責任問題のために、むなしい机上の「成功」を声高に叫ぶことでしょう。 まんが王国とっとり 熱気は来タロウ?清く正しくマニアは来ナン! 読売新聞 http //www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/kansai1337938182381_02/news/20120929-OYT8T00658.htm web魚拓 http //megalodon.jp/2013-0105-2258-24/www.yomiuri.co.jp/osaka/feature/kansai1337938182381_02/news/20120929-OYT8T00658.htm?from=yoltop 「代理店に頼り、とても清潔ではあるが、こだわりが見えにくい「ドリームワールド」の 内容に「子どもだましのようだ」「エロもパロ(パロディー)もあるから漫画は面白い」といった声が聞かれる。 境港市には水木しげる記念館、北栄町には青山剛昌ふるさと館があり、出版社から「会場の展示内容は 施設と重ならないように」とくぎを刺されたらしい。3人均等の広さに官製イベントの律義さがにじむ。 行政が旗振り役を務める理由とは、との思いが頭をよぎる。それが「漫画」であることの必然性は何だろう。 鳥取に何を残すのか。」 何も残さないでしょう、恥だけしか。 例のいわき市のように「いつの間にか消えうせ」て欲しいものです。 ○まんが王国とっとりPRキャラバン隊「バードプリンセス」に税金が 46,000,000円 もつぎ込まれてるようです。 「まんが王国とっとりPRキャラバン隊事業」 http //www.pref.tottori.lg.jp/177735.htm 受注業者 (株)DARAZ NPO喜八プロジェクト (株)DARAZコミュニティ放送 (株)山陰放送 の共同企業体 これに四千六百万円・・・・ http //www.youtube.com/watch?v=Qir_8S6_1Uk http //m.youtube.com/#/watch?v=3NhZSWAiD1w desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3D3NhZSWAiD1w gl=JP 開いた口がふさがりません、税金返せとしか言葉が出ません。 寄せられた情報ここまで------------------------------------ 注 お寄せいただいた情報は確認の上掲載させていただきました。 歴史がないのに歴史をでっち上げる 【まんが王国とっとり】は2012年に突然建国された企画である。当然これまでに【まんが王国】を名乗ったことはないし、他県がすでにやっているものを 知らん顔して横から奪い取った形だ。 その【まんが王国とっとり】の建国史展を堂々開催宣言しているのだから恐れ入る。 まんが王国とっとり建国史‐貸本漫画からアニメ新時代へ‐ http //www.library.pref.tottori.jp/hp/menu000001800/hpg000001798.htm 「まんが王国とっとり建国史展―貸本漫画からアニメ新時代へ―」を開催します http //db.pref.tottori.jp/pressrelease2.nsf/webview/5F3A3EC705F4EF0649257A8D0003DEAD?OpenDocument まんが王国とっとり 県立図書館で建国史学び聖地巡礼を /鳥取 http //mainichi.jp/area/tottori/news/20121012ddlk31040431000c.html web魚拓 http //mainichi.jp/area/tottori/news/20121012ddlk31040431000c.html より以下引用 県出身の漫画家やアニメーター約30人の作品を貸本時代から現在までの歴史に沿って見ることができる 「まんが王国とっとり建国史展」が鳥取市尚徳町の県立図書館で開かれている。11月11日まで。無料。 水木しげるさんの貸本漫画から、最近のアニメ作品のポスターやDVDまで約200点が並ぶ。 米子市出身のアニメーター、前田真宏さんが携わったアニメ「巌窟王(がんくつおう)」などのポスターや レーザーディスクのほか、県出身の漫画家の連載が掲載された漫画誌や単行本も展示されている。 会場には、作品に登場した県内の場所を紹介する「まんが王国とっとり聖地巡礼」のコーナーも。 今年映画化された人気漫画「テルマエ・ロマエ」に登場した三朝温泉(三朝町)など34カ所が紹介されており、 漫画と実際の風景の写真を比較しながら見ることができる。 展示を見た鳥取市の40代の女性は「こんなに活躍されている人がいることを初めて知った」と驚いていた。【高嶋将之】 引用ここまで どこまで厚顔無恥な捏造を晒していくつもりなのだろうか。 うたい文句は"貸本漫画からアニメ新時代へ"となっているが、貸本は全国で行われていたし、アニメも全国で放映されている。 企画そのものがズレている。 自分達の県が最初、と得意げに言って日本全国にケンカを売るのはそろそろ終わりにしてもらいたい。 また、作られた聖地をわざわざ訪れるオタクはいない。 出版の意味が理解できないTORImag 地元書店今井書店グループが【まんが王国とっとり】関連事業として"TORImag"というマンガ雑誌を発行している。 コンセプトは【鳥取の魅力をマンガとイラストで紹介するクリエーターマガジン!】とのこと。 鳥取の観光名所をマンガで案内という内容だが、執筆者11人のうち鳥取県在住者と確認できるのはたった一人。 ほとんどは関東在住であり、"鳥取県には行ったことがない"とはっきり書いている人間もいる。 こんな人間に観光マンガを描かせること自体非常識というのがこれだけ理解できていない企業も珍しいと思うのだが。 中身は案の定、意味不明な自己完結マンガばかりで、少なくともこれを読んで鳥取県の魅力を理解したという人はいないだろう。 女の子の股下を強調するアングルが鳥取県観光案内に何の関係があるというのか。 何のために出版されたのかまったくわからない。 鳥取県は【とり漫】で懲りなかったのだろうか? 大人気、と強引に盛り上げた割には岩手県の"コミックいわて"のように増刷に次ぐ増刷とはならなかったようである。 他県が発行している地元紹介誌に内容もレベルも遠く及ばない。 【まんが王国とっとり】として多くの漫画家を輩出している、という割りに、地元出身の漫画家を使う気は微塵もないらしい。 十分な予算があるはずなのに、重要な通訳や交通整理などはすべて無償ボランティアまかせ http //manga-tottori.jp/?id=737 『第13回国際マンガサミット鳥取大会』の ボランティアの募集は8/31をもって終了いたしました。 たくさんのご応募をいただき、心より感謝申し上げます。 ありがとうございました! 500人募集のところ、二桁がやっとの寒い状況だったが無事500人は集まったらしい。 さぞかし沢山のボランティアが会場で出迎えてくれるのだろう。 ところで13億という予算はどこに消えたのだろうか。 関連記事 ・海外メディアまでもが鳥取県の【まんが王国とっとり】捏造発表を指摘 ・【まんが博】大失敗に関する面々
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『デスラッチ07 まりさと子ぱちゅりー』 独自設定満載です 今回より「○○あき」と名乗らせて頂きます。 よろしく御願いします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 暗室で現像作業をしている所に飛び込む叫び声 『むきゅぅぅぅぅ!おにいさぁ~~~~ん!おちびちゃんがまた・・・・・』 「またかよ・・・・勘弁してくれよ・・・・・・」 思わず頭を抱えてしまう。 子ぱちゅりーは生まれてから、毎日の様に怪我をする。 妹の子まりさが893のお兄さん家に里子に出されて、遊び相手がいないのは理解出来るが、 それからは自らを鍛えようと無茶をしての怪我ばかり・・・・・ しかし893のお兄さんに 「わしにも家族ちゅうもんが欲しいんじゃ!まぁ・・・義兄弟は山程おるがのぉ・・・・アホばっかでろくな奴がおらんのじゃ! 後生じゃけぇまりさのちびをわしに預けてはくれんか?」 こう言われて断れるほど、お兄さんは強くない・・・・・ 結局、子まりさは893のお兄さん家に嫁がせてしまう。 その為1匹となってしまった、子ぱちゅりーの看護はしっかりしている。 治療には浮き粉を使っているので、通常のゆっくりの皮よりも弾力と耐久性はついた。 全身に治療箇所した後が残っている。 耐久性がつくとさらに無茶な特訓をしでかす。 これでは鼬ゴッコである。 お兄さんはついに最終手段に出る事にした、子ぱちゅりーの身体を強化改造するのである。 「まりさ・・・ぱちゅりー・・・・覚悟はいいな?」 『まりさはおにいさんをしんじるんだぜぇ!』 『ぱちゅもしんじるわ!おにいさん、おちびちゃんをおねがいします。』 両親の同意をとり手術は開始される。 作業台に乗せられた子ぱちゅりーは声をあげた。 『むきゅう!やめろぉ~しょっかさん~やめるんだぁ~』 「・・・・・・・・・・・何故そんな古い特撮を知っている?」 思わずぱちゅりーの方を見ると、ぱちゅりーはお兄さんから目線を逸らす。 この家でTVとリモコンの概念を、正しく理解できているゆっくりは2匹。 しかもチャンネルとなると、数字を理解出来ているぱちゅりーしかいなかった。 「お前は何を教えてんだ・・・・まぁいいや・・・・とりあえずこれを食え」 麻酔として大量のラムネを食べさせられ、子ぱちゅりーは深い眠りにつく。 最初に身体の皮を、薄く残して削り落とす、そして釣り糸で造った網で全身を覆う。 そして下半身にエアパッキンを貼り付けてから、上から生麩を被せて新しい皮を構成した。 これで衝撃にも強く、釣り糸の網のおかげで裂傷も起きない。 注射器で中身の生クリームを吸い出し、泡立てて硬くしてから再び注入。 空気を含み増えた分だけ大きくなったが、その分身体はガッチリと硬くなった。 この手術以降はたしかに、子ぱちゅりーの怪我は減ったのだが・・・・・ さらに強さを求めて、自らを鍛えぬく試練の日々が始まった。 『むっきゅ!むっきゅ!むっきゅ!』 朝は階段を跳ねて登り跳躍力の強化を図る。 昼はぱちゅりーに付き添われて勉強として絵本を読んではいるが、 『むきゅぅぅぅぅぅ!ひっぱりがいのあるえほんさんだわぁぁぁ!』 『おちびちゃん・・・・・・・えほんさんはよむものよ?』 絵本を重りにして体力強化を図っていた。 手加減をする必要が無くなったからであろう、既に通常のゆっくりを遥かに凌駕している。 常ゆんは己の潜在能力の30パーセントしか使えないが、北斗ゆん拳は残りの70パーセントも使用するのが極意。 こうなってはもう止められない・・・・・ まりさの外出にも同行するようになり、野良ゆっくりとの揉め事も増えた。 『そこのぱちゅりー!れいむにいますぐあまあまをちょうだいねすぐでいいよ!』 いつもの散歩に出たとたんに背後から声をかけられる。 振り返るとそこには大柄な薄汚いれいむが・・・・・ 『ゆ?ぱちゅになにかごようかしら?』 惚けた様子で応える子ぱちゅりー、そしてその様子を黙って見守るまりさ。 そんな雰囲気に気がつく事もなくでいぶは喚く。 『きこえなかったの?まったくぐずなゆっくりだよ!さっさとこのかわいいれいむにあまあまをちょうだいね。 れいむはぐずはきらいだから、ゆっくりしないではやくしてね!』 飼いゆに食べ物を強要するでいぶ、しかし子ぱちゅりーにもまりさにも焦る様子は窺えない。 それどころか余裕の笑みさえ浮かべている。 『おちびちゃんどうするぜ?あまあまさんをわけてあげるのかだぜ?』 答えは分かりきっているのに、わざと子ぱちゅりーに問うまりさ。 『そうね・・・たしかにぱちゅはおうちにかえれば、いっぱいあまあまさんはあるわ・・・・・だがことわる!』 きっぱりと拒否する子ぱちゅりー。 両者に緊迫した空気が張り詰める。 『でいぶにさからうなんてなまいきなちびだね!せいさいしてあげるよ!かんしゃしてね!』 要望を受け入れない子ぱちゅりーに、暴力で対応しようとするでいぶ。 しかし子ぱちゅりーは怯まない。 『むきゅう!ぱちゅからあまあまがほしければ、ぱちゅをたおすことね?りかいできる?』 この挑発にでいぶは躊躇なく乗る。 『ちびのくせにでいぶをなめるなぁぁぁぁぁぁ!』 突進してくるでいぶを子ぱちゅりーは、かわさないで受け止める。 かなりの体重差があるので、受け止めきれずに潰されたかの様に見えた。 しかしまりさは焦らない。 『そのていどじゃおちびちゃんはたおせないんだぜぇ!』 まりさの言葉と共にでいぶに下から、子ぱちゅりーの雄叫びが聞こえる。 そしてでいぶの身体が震動しだす。 『むきゅぅぅぅ!かじばのくそぶくろぉぉぉぉぉぉ!』 『ゆゅ?ゆ?ゆ?ゆ?ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ?ぐぇぇぇ・・・ぼっどゆっぐりじだがった・・・』 圧し掛かったでいぶの尻が浮き、そのまま進行方向に転がすゆっくり地獄車。 そしてでいぶは壁にぶつかり弾け、永遠にゆっくりしてしまった。 子ぱちゅりーに絡んだゲスな野良は、大半が大変な目にあい連戦連勝な日々。 だがこんな子ぱちゅりーでも、勝てないゆっくりは存在する。 公園のちぇんにはスピードで負け、河川敷のみょんには戦闘の技法で負けた。 優秀なゆっくりは、自分よりも強い者と対峙する方法を心がけている。 そして父まりさには1度も勝った事がない。 『むきゅうぅぅぅぅぅ』 まりさによく組み手を指南して貰う。 だが子ぱちゅりーの体当たりは、まりさには効く以前に当たった事がない。 まりさも伊達や酔狂で、お兄さんについて旅をしてはいない。 『おちびちゃんは、うごきがばればれなんだぜぇ、もくひょうはみすぎてもだめなんだぜぇ・・・・』 『むきゅう・・・・・むずかしいわぁ・・・・・』 確かに子ぱちゅりーの技量と経験は、まだまだ未熟である。 それで何故、連戦連勝でこれているのか? 最初こそまりさが、相手をデジカメに写して勝利を決定付けていた。 しかし技術を上回る身体能力を、お兄さんの強化改造によって子ぱちゅりーは手に入れてしまう。 ゲス相手に手加減の必要を、子ぱちゅりーが感じていないのも要因であろう。 しかし身体能力だけで勝てるのは馬鹿が相手の時だけ。 『むっきゅう!』 『あまいみょん!』 木の根元に追い込まれて、不用意に飛び上げる子ぱちゅりー。 しかしその隙をみょんは見逃さない。 咥えた枝を振り回して、子ぱちゅりーを叩いた。 叩き落された子ぱちゅりーは、潔く負けを認めざるえない。 『むきゅう・・・みょんはつよいわぁ・・・ぱちゅとたたかってくれてかんしゃしますわ。 ぱちゅはもっとつよくなってくるから、またたたかってくださる?』 『いつでもかかってくるみょん!ぱちゅのようなどりょくかさんはかんげいだみょん!』 勝者に感謝し精進を誓う。 これは喧嘩ではなく、自らを鍛えんとするゆっくり同士の決闘である。 この様な試合を子ぱちゅりーは、頻繁に実力者に挑む。 しかし嫌われる事もなく、馬鹿なゲスだけが減っていくので逆に感謝された。 ついたあだ名が「ゲス殺しのぱちゅりー」 しかしお兄さんと母ぱちゅりーは、それに頭を悩ませる。 明らかに通常とは、異なる成長を遂げる子ぱちゅりー。 怪我も増え、その度に更に強くなっていく。 そんな時にお兄さんに入った仕事が、SS村のテーマパークの宣伝用写真撮影だった。 事象や風景の撮影を主体としてはいるが、 もともとゆっくりの写真で名を売ったので、たまにこの様な依頼もくる事がある。 これが子ぱちゅりーの転機となった。 「・・・・・なるほど・・・では凄惨な構図よりも、鬼威山達に苛立ちを湧かせる幸せな絵がいいんですね?」 「はい!出来るだけ幸せそうなゆっくりの親子、それも3匹家族が効果的で反応が良いですね・・・」 SS村の管理責任者と打ち合わせを行う。 ここはゆ虐で有名な施設ではあるが、過激な保護団体との衝突回避に宣伝にはゆ虐色は隠している。 しかし隠す事で逆に、ゆ虐心を煽れる事もあるのだと言う。 被写体には3匹家族が良いとの事だったので、お兄さんはさりげなくまりさを推薦してみた。 「3匹家族ならうちにも居ますよ・・・」 携帯の待ち受け画面にしていたまりさ家族を、担当の直山氏に見せてみる。 そこにはまりさとぱちゅりーに挟まれるように、1匹の子ぱちゅりーが映っていた。 幸せそうであるが・・・・・・ 「・・・・・・・ひょっとして風見さんは鬼威山ですか?」 中央に写る子ぱちゅりーの治療した痕が身体中に残った姿が、日頃から虐待されているかの様にも見える。 そこを不審に思われた。 「いやいや・・・・まさか・・・・俺は本来ゆっくりには興味なんてありませんよ。 うちのまりさとは、縁あって暮らす事になりましたけど虐待なんて・・・・・・」 お兄さんは直山氏に、子ぱちゅりーの奇行について説明する。 最強を目指す武闘派ゆっくり、そんな子ぱちゅりーを例をあげながら語った。 話を興味深そうに聞いていた直山氏だったが、やおら煙草の火を消して1枚の企画書をお兄さんの目の前に置く。 「これなんですがね・・・・・今度うちの施設で予定している新アトラクションなんですよ。」 チラシには「ゆんプロレス」と記載されていて、リングの大きさやルールについての概要が書かれてある。 そして選手の募集要項も・・・・・ 「これってゆっくりを戦わすんですか?まさかまりさを出場させようと言うんじゃないでしょうね・・・」 お兄さんの言葉に直山氏は答える。 「いえいえまりさの方ではなく、この子ぱちゅりーの出場をお願いしたいんですよ。」 聞けば、出場予定のゆっくりに偏りがあるのだと言う。 大半はまりさとでいぶで、少数ながらもちぇん・みょん・ありすはいるのだが、ぱちゅりーは1匹も参加予定が無い。 このままでは同種の組み合わせが続いてしまい、すぐに観客に飽きられてしまう。 その為、まりさ・れいむ以外の出場者、特にぱちゅりーや希少種の参加者を探していたのだ。 しかしぱちゅりー種は戦闘どころか運動に不向きで、現在の参加者はまったく無い。 子ぱちゅりーならば可能なのではないかと直山氏は考えたのだ。 「う~~~~~ん・・・・どうかなぁ~たしかに普通のぱちゅりーに比べれば、かなり強いとは思いますけどね・・・・ でもまりさに比べてどうかと言われれば、それ程でも無いと思いますよ?」 通常のゆっくりの実力はよく知らなかったが、まりさに1度も子ぱちゅりーは勝てていない。 その為お兄さんには、子ぱちゅりーを参加させるには実力不足に思えた。 「おそらく風見さんとこのまりさが強過ぎるんじゃないでしょうか? 私の推測が合っているのなら、この子はかなりの実力者ですよ。」 お兄さんもまりさが負けたと言う話は、初めて出会った時から1度も聞いた事がない。 それ故まりさが、戦闘に長けている可能性は否定出来なかった。 結局、直山氏に押し切られる形で、子ぱちゅりーの参戦を約束してしまう。 その日帰宅してまず、まりさ親子にチラシを見せてみる。 『むきゅ!ぱちゅはもっとつよくなれるのなら、よろこんでさんかしますわ!』 予想通り参戦希望する子ぱちゅりー。 だがまりさやぱちゅりーは困惑した様子である。 『それはあまりゆっくりしてないのぜぇ?』 『ぱちゅもやめておいたほうがいいとおもうわ・・・・・』 まりさやぱちゅりーは、怪我や事故の心配があり賛成出来ない。 しかし最良の修行の場を知ってしまった子ぱちゅりーは、目を輝やかせて両親にせがむ。 『ぱちゅはさいきょうさんなゆっくりになりたいの、もっともっとけいけんさんをつんでつよくないたいわ!』 募る想いのたけを両親に語る。 知ってしまった以上はゆっくりしてはいられないのだ。クリーム沸き皮踊る、いても立ってもいられない。 これは止められないと諦めたまりさは、参戦を認める為に1つ条件を出した。 1週間以内にまりさのお帽子を奪ってみせる事と・・・・・ 『むきゅう・・・・これはむずかしいわ・・・・でも・・・ぱちゅはさいきょうさんになるゆっくりよ・・・ がんばってぱぱのおぼうしをうばってみせるわ!』 今までの手合わせで、攻撃を当てる事すら出来ていない父が相手。 流石にこの課題の難しさは、子ぱちゅりーも良く理解している。 だが夢へ進む為にはやらねばならない! 『むにゃむにゃ・・・ぴゃぴゃのおぼうし・・・・』 『さきにす~やす~やしちゃったんだぜぇ・・・・』 よく遊びよく寝る子ぱちゅりーは、まりさの寝込みを襲おうにも眠気には勝てず先に就寝。 次に食事中を狙う作戦にでる。 『む~しゃむ~しゃ~しあわせぇ~~』 『ちゃんとおにいさんにかんしゃするんだぜぇ!』 目の前に置かれたご飯の誘惑には勝てず失敗。 こんな感じで何度やっても、お帽子強奪作戦は上手くいかない。 実際まりさも最初こそ注意していたが、あまりにも襲ってこないので素で忘れている。 その油断でまりさに隙が出来た。 もはやまりさのライフワークとなった撮影時に、うっかり背中をさらしてしまうミスを犯す。 『むほぉぉぉぉぉぉぉ!とかいはなまりさねぇぇぇ!ありすがとかいはなあいをおしえてあげるぅぅぅぅ』 まりさの目の前にれいぱーが現れた。 だがまりさは慌てない、ファインダーを合わせてすかさずシャッターを切る。 『ち~ずなんだぜぇ!』 『うほぉぉぉ~~~~~~ぼぇげぇ!・・・・・ぐゆ”ゆ”ゆ”ゅゅ・・・・・』 シャッターと同時に、飛び上がったありすを白球が身体を貫く。 近くで行われている草野球のホームランボールが、運悪くありすを側面から直撃して風穴を開けた。 『ど・・・どぼじぃでぇ・・・・・あじずは・・・・ごんなに・・・どがいは・・・・なの・・に・・・』 呻きのたうちながら自身の不運を恨む。 一方で難を逃れたまりさの背後に、こそこそ忍び寄る影。 『ゆふぅ~ゆっくりできないれいぱ~は、みんながゆっくりできないんだぜぇ・・・・ゆゅ!』 まりさは溜息交じりに、既に息絶えたありすに語る。 そこに飛び掛る影、だがまりさは1歩下がりその攻撃をかわす。 子ぱちゅりーとの約束は忘れていても、普段からの警戒までは解いてはいない。 この時も、攻撃を凌ぐのはこれで十分だと踏んでいた。 しかしこの時、最小限の動きしかとらなかったのが災いする。 『ぱぱ!おぼうしさんはもらったわ!』 子ぱちゅりーのサマーソルトキックが、まりさのお帽子の縁を捉える。 そしてそのままお帽子は、空中へと放り上がった。 『ゆゅ!』 まりさは驚きのあまりにその場を動けない。 いくら軽量化されているとはいえ、デジカメを内蔵したお帽子である。 それを蹴飛ばした、子ぱちゅりーの身体能力に驚愕せざるえない。 まりさの動きを読み、予測を超える深いサマーソルトキック・・・・ 1回転して地面を踏みしめる子ぱちゅりーは、まりさとの賭けに勝利した喜びを味わっていた。 『むきゅぅぅぅぅぅ!!やったわぁ!ぱぱにぱちゅはかったのよ!』 奪ったまりさのお帽子を被り、あたりを喜び跳ね回る子ぱちゅりー。 その様子にまりさも負けを認めた。 『おちびちゃんのかちなんだぜぇ・・・こうなったらがんばってくるんだぜぇ!』 こうして子ぱちゅりーの、ゆんプロレス参戦が決まった。 だが技術面では、まだまだ未熟な子ぱちゅりーをそのまま出す訳にはいかない。 この日からまりさによる特訓が開始された。 『まずはあいてにふれさせちゃだめなんだぜぇ!』 まずは、敵の動きを予測しかわす訓練。 ぶら下がった5円玉を揺らし、それをかわし続ける。 『むっきゅ!むっきゅ!』 5円玉の動きを目で追い、流れを予測しかわす。 これが単純な様で、思考と行動を同時に行うのは難しい。 だがこれを身につけた時、体重移動による迅速な回避を習得する事が出来る。 『へへへへ。まりささまにさからうなんてばかなちびなんだぜぇ!』 覚えた技術は実践によって磨かれていく。 この日はゴミ箱を荒らしていた、野良まりさで試される。 『いいからかかってきなさい!それともぱちゅがこわい?』 子ぱちゅりーの言葉に、怒りを覚える野良まりさ。 お帽子の中から枝を取り出すと、それを咥えて襲い掛かってくる。 『まりささまにさからったことをこうかいするんだぜぇぇぇぇ!』 子ぱちゅりーは野良まりさをじっと見つめる。 そして身体を1歩右に動かす。 その残像を貫くかの様に、野良まりさがその場所を通り過ぎて行った。 『ゆゅ?あたったとおもんだぜぇ?なんでいないんだぜぇ?』 寸前でかわされると、普通のゆっくりには何が起こったのか理解出来ない。 再び野良まりさは、子ぱちゅりーに飛び掛る。 今度は1歩前へ進む。 『ゆゅゅゅ???いないんだぜぇ?どこにいったんだぜぇ?』 子ぱちゅりーを飛び越えてしまい、見失い混乱する野良まりさ。 野良まりさの方へ向き直すと、子ぱちゅりーはゆっくりと身体を揺らし始める。 『むっきゅ!こんどはぱちゅのばんね・・・・かくごはできたかしら?』 大きく身体を振ると、そのまま体重をかけて身体を空転させる。 野良まりさは空中に、回転する子ぱちゅりのあんよが目前に迫るのを見た。 『ゆ?・・・ゆごぉぉぉ・・・ぐへぇぇぇぇ・・・・ぼ・・ぼっど・・ゆっぐ・・り・・じだ・・が・・・・だ・・』 野良まりさの頭に、子ぱちゅりの踵落しが炸裂する。 頭部を潰され断末魔を上げる野良まりさ。 どこからともなくギターの音色が鳴り響き、子ぱちゅりーを称える歌が聞こえる。 流れる星屑のその先に、子ぱちゅりーを待ち伏せてる奴がいる。 牙を光らせ、爪をとがらせ、獣の匂いをさせて・・・・ 子ぱちゅりーの昨日はただ一人旅、明日はどこかでまた地獄旅。 背に刻む覚悟、命限り生きる、まりさにも見えるだろう。 熱くなれ、もう一度、突っ走れ、子ぱちゅりーの魂が吠えるのさ。 後ろには下がれない、覚悟しろ・・・・ 子ぱちゅりーは餡まみれの破壊魔さ。 まりさの護身術を伝授された子ぱちゅりーは、闘いの待つゆんプロレスに挑む。 それは負けるまで降りる事の許されない闘い! 闘いの中にゆっくりを見出した、異端者達の聖域! 子ぱちゅりーの伝説は今始まるのだ! おわり ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 色々あって書きたくても書けない状態が続いている間に、何やらえらくここも変化がありましたね・・・ 突然ではありますが今回より「○○あき」と書いて、まるまるあきと名乗らせて頂きます。 人生の予定が丸々空いてしまったので・・・・・ 誤字・脱字等あれば勘弁して下さい これまで書いた物 anko1218 ゆ虐ツアー anko1232 ゆ虐ツアー お宅訪問編 anko1243 ゆヤンワーク anko1495 ゆ虐にも補助金を anko1237 デスラッチ01 雪原のまりさ anko1250 デスラッチ02 まりさの思い出 anko1274 デスラッチ03 まりさとつむり anko1282 デスラッチ04 まりさとおにいさん anko1314 デスラッチ05 まりさとおちびちゃん anko1337 デスラッチ06 まりさとリボン anko1341 デスラッチ07 まりさと春 anko1296 デスラッチ外伝01 まりさとまま anko1505 デスラッチ外伝02 まりさとめぐりあい anko1276 ゆっくり種 anko1278 ゆっくり種2 anko1291 ゆっくり種3 anko1310 ゆっくり種4 anko1331 ゆっくり種5 anko1350 ゆっくり種6 anko1391 ゆっくり種7 anko1482 ゆっくり種8(終) anko1362 ケーキ anko1527 極上 anko1612 砂の世界
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独自設定満開はデフォ。 なんだか救われない気がします。かぶってたらごめんなさい 虐なしだとおもいます 書いた人は取り立てあきです よろしくお願いします! 私は現在無職のおねーさん 勘違いしないでほしい。ニートではない! ちゃんと働いていたのだが会社が人員削減となりその煽りをくったのだ。 希望退職だったため通常より多めに退職金も貰った。 幸い数年働いていたので失業手当も支給されている。 人生の夏休みのようなもの。 来月くらいからはきちんと職探しを始めようと思っているが いかんせん前の職場でゴタゴタしたので疲れているのも事実だ。 1か月ぐらい休んでいてもいいだろうと思う。 そんな私はれいむとまりさを飼っている。 基本的な組み合わせだがかわいいとおもう。 二匹は別のペットショップで買ってきたのだが、はじめはドギマギしていた。 月日が流れていくうちに仲よくなり、当たり前のように番となった。 私自身、舌足らずで無邪気な子ゆは結構好きな方なのですっきりー!の制限は設けていない。 まぁ、にんしんっ!したらその数をみて、そのあと制限しようと思っていた。 「ゆーん!ゆっくりしたおちびちゃんがほしいよ!おねーさん!れいむのあかちゃんみたい?」 「まりさはあかちゃんみたいよ!おねーさんもみたいよね!?」 「そうねー。きっとかわいい子たちだと思うからおねーさんも見たいわ」 少し押しつけがましい提案ではあるが、ゆっくりなので仕方ないことだ。 二匹はとてもうれしそうにすりすりしていた 。 その次の日の朝、やっぱりというべきかあっさりれいむの額に茎が伸びている。 二匹とも初めてのにんしんっ!ということもあるのだろうか、実ゆが二つ。 「ゆ~ん!おちびちゃんかわいいよぉぉぉお!!!」 「まりさとれいむのおちびはとってもかわいいよぉぉ!!」 素直に嬉しそうな二匹をみていると癒される。 このまましあわせー!なゆん生を送るのだろうと、このときは考えていた。 「おねーさん!おねーさん!!おちびちゃんがゆっくりうまれそうだよ!」 実ゆが出来てから数日後、リビングで寛いでいた私にあわてた様子のまりさが報告してきた。 まりさも初めての経験なのでドキドキしているのだろう。 ハウスのれいむを見ると、茎に実ったゆっくりがふるふると震えていた。 ぽとん 「ゆっくりうまりぇたよ!ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!!」 まず1匹。まりさ種が元気に産声を上げた。 「ゆわぁぁあああ!!!れいむすごいよぉぉ!!かわいいおちびちゃんだよぉ!!!」 感動にうち震えるまりさ。 そして程なく二匹目がぽとりと生まれ落ちた。 「ギュ・・・ュピィ!!!!!!!」 生まれたのは辛うじてれいむ種と認識できる程度のものだった。 黒くきれいなはずの髪の毛はボサボサ。 真っ赤な飾りは左右非対称でアンバランス。そして小さい。 表情は言うまでもなく、ゆっくり基準でゆっくりしていなかった。 「・・・ゆ・・・????」 「ゆ・・・ゆっくりしていってね・・・?」 心配そうに二匹は挨拶をするが、帰ってくる返事は 「ユッチ!ュッチィィイイイ!!!!!」 その日かられいむの過酷な子育ては始まった。 さすが取り柄が母性のれいむ種。 れいむは二匹に対して分け隔てなく、はた目から見てもかなり懸命に子育てをしていた。 飼いゆなのでごはんの心配はないものの、れいむ種としてお歌はアイデンティティー。 「おちびちゃん!ゆっくりれいむのおうたをきいてね!ゆっくりまねしてね! ゆっくりのひ~♪まったりのひぃ~♪・・・どう?かんたんだよね!?」 「ュッチィィ~!ュッチュィィ~!!!!」 真似をしているようだが、母れいむのそれとは大きくかけ離れていた。 「・・・ゆん!まだおちびちゃんにはむずかしかったね!ゆっくりおしえるよ!」 「ュピィ・・・・!!!」 「おちびちゃん!ぴこぴこさんをゆっくりうごかすよ!」 少しワサワサした感じのもみあげを母れいむは左右上下に動かす。 「ピィ!!!!!!・・・ュッッピィィイイイイイイ!!!!!!!!」 なかなか上手く動かすことができない。 そして突然癇癪をおこす未熟ゆのれいむ。 「ゆぅぅぅ!!!おちびちゃぁぁん!どうしたの!?ゆっくり!ゆっくり!」 何度同じことをいっても処かまわずうんうんをする。 しかもあにゃるのしまりが悪いのかうんうんがついたままだ。 そのたびにれいむは口でうんうんをといれっとさんまで運んであにゃるをぺーろぺーろしてあげた。 まりさも手伝ってはいたが、 「おかーさんはれいむなんだよ!れいむがんばるよ!まりさはおちびちゃんのまりさにいろいろおしえてあげてね!」 と、なかなかの母性を発揮していた。 しかし何日かするとれいむはすこしやつれていた。。 それを見ていたまりさもれいむの苦労がわかるのかとても心配している。 「れいむ?だいじょうぶ?つかれてるみたいだから、まりさのごはんさんすこしわけてあげるね」 「ゆー・・・まりさ・・・ゆっくりありがとぉだよ・・・!」 「おきゃーしゃん!まりちゃのもあげりゅ!」 「ゆぅぅ!!!おちびちゃん・・・!!!!おちびちゃんはとてもゆっくりしているね・・・」 れいむは少し涙ぐんでいる。 私も少しかわいそうになっていた。 「れいむ。こっちきなさい・・・元気出すのよ?」 「ゆん!おねーさん・・・!れいむがんばってるんだよ・・・でも・・・でもっ!」 「うんうん。れいむは頑張ってるわ。おねーさんも理解してるわ。元気出してね」 そっとれいむにカステラの切れ端をあげた。 「ゆぅぅん!ゆっくりありがとぉぉぉ!!!!むーしゃむーしゃ・・・」 やはり少し涙ぐみながら食べていた。 おちび達が生まれてから二週間ほど。 未熟ゆはそもそも体が弱かったらしい。 れいむの懸命な子育てにも関わらず、その短いゆん生を終えようとしていた。 「・・・・ュ・・・ュ・・・」 何日か前からうまく動けなくなっていた。 「・・・ュッピィ・・・・・・・・」 そして、ついに餡子の活動が停止した。 「・・・ゆんやぁぁぁぁ!!!!れいむのかわいいおちびちゃぁぁあん!!!!!」 「・・ゆ!れいむは・・れいむは・・がんばったよ・・まりさちゃんとみてたよ・・・」 号泣するれいむに優しくまりさとまりちゃは声をかけていた。 れいむはすっかり元気がなくなった。 まりさが気分をかえて遊ぼうと誘っても気分じゃないと断っているようだった。 そんなある日、意を決したように私にまりさが話しかけてきた。 「おねーさん!ゆっくりまりさのおはなしをきいてね!(キリッ!)」 「ど、どーしたの・・・?」 「れいむはすごくしょんぼりさんなんだよ!おちびちゃんがえいえんにゆっくりしちゃったせいなんだよ!」 「そうね・・・かわいそうだったわ・・・」 「おねーさんにおねがいさんだよ!もういっかい!おちびちゃんがほしいんだよ!」 「・・ん?」 「おちびのまりさはいるけどおちびのれいむはいないんだよ! きっとれいむもおちびのれいむがいればゆっくりできるとおもうんだよ・・・!」 赤ちゃんれいむがいれば気が晴れるだろうということらしい。 それも一理ある。 れいむだって自慢のお歌を歌ったり、ゆくゆくは子育てを教えたりしたいはずだ。 「それも・・そうね。いいわよ」 「・・・ゆ!ゆー!ゆっくりありがとうだよっ!!!!!」 ぽゆんぽゆんまりさはハウスへ帰っていった。 はじめはれいむも気乗りしなかったようだが熱心なまりさの説得により再度すっきりー!をすることになったようだ。 今度もれいむに茎が生えている。 実ゆが3つ気持ちよさそうにゆらゆら揺れていた。 「ゆぅぅ~!!!おちびちゃんっ!!!!やっぱりかわいいよぉぉぉ!!!!」 まりさも説得した甲斐があった。れいむは全身で喜びを感じているようだった。 そして・・・ぽとんぽとんぽとん! 三匹の赤ゆは無事生まれ落ちた。 「「「ゆっきゅりしていっちぇね!!!」」」 今回は未熟ゆはいないようだった。 二匹も前回のことが頭にあったようでほっとした表情だった。 「ゆ~ん!れいむがおかーさんだよぉっ!!!ゆっくりしていってね!」 「ゆわぁぁ!!かわいいおちびちゃんたち!!まりさがおとーさんだよ!!!」 「あかちゃんはゆっくりできるね!!まりさがおねーしゃんだよ!!!」 れいむ種が2匹、まりさ種が1匹だ。これで家族構成的にも丁度良い感じになる。 家族仲よくすーりすーりしている。 今度は心配なさそうだ。 未熟ゆでも頑張って育てていたれいむの母性のことだ。 正常で生まれたならばまず大丈夫だろう。 私は赤ゆ達の成長を見守ろうと思う。 次の日 「・・・えぐっ・・ぐすっ・・おねーだん・・・・!」 まりさの様子がおかしい。 泣きながら私のところに来たのだ。 「どうしたの??なんかあったの???」 「ゆっぐ・・・ゆっぐ・・・おちびの・・・おちびのれいむが・・・っ!」 どうやら生まれたばかりのれいむに何かあったらしい。 急いでゆっくりハウスにいくとれいむが泣きながら子守唄を歌っていた。 「ゆ・・ゆ~っくり~♪・・・す~やす~や~♪・・・えぐっ・・」 れいむの足元をみると元気だったはずの赤れいむ1匹の眼が泳いでいた。 「・・・・ゅっぐちぃぃ!!!・・・ゅぴぃ!!!!!・・ゆぴょぴょ・・・」 そして少し足を引きずっていた。 「・・・・ちょっと見せてみて・・・」 そう言ってその赤ゆを持ち上げようとした瞬間 「ゆ!!!!!!おねーさん!!!!やめてね!!!!」 ものすごい勢いでれいむに怒られてしまった。 「おちびちゃんはきっとつかれているんだよ!!れいむががんばってゆっくりできるように おうたをうたってるんだよ!?じゃましないでね!!!!」 無理もないだろう。昨日まで幸せいっぱいだったはず。 それが一夜にして悪夢の再来になったのだから。 神経質にならない方がおかしいのかもしれない。 私はそっとしておくことにした。 やはりれいむは懸命に子育てをしているようだった。 お歌を教え体を動かすことを練習させちゃんと話せるように発音練習までやっていた。 わたしもかわいそうに思い、時々一緒にYHKの子供番組を見せたりした。 餡子が良くなるようにオレンジジュースをあげたり、疲れた様子のれいむにクッキーを焼いたりもした。 しかし不幸な事は繰り返されるのだった。 「ぉぉ・・・おちびちゃぁぁああああんんん!!!????おめめゆっくりあけてねぇええ!!????」 「ゆぅぅうう!!!かみさまはずるいんだよぉぉ!!まりさたちはゆっくりしたいだけなのにぃぃ!!!」 まりさとれいむは号泣している。 二匹の赤ゆと姉まりさも今起こっていることが理解できてるのであろう。 ポロポロと涙を流していた。 れいむとまりさは至って元気な個体だった。病気らしい病気だってしたことない。 なのに。 なぜ未熟ゆができてしまうのか。しかもれいむ種ばかり続けて。 餡統になにかゆっくりできない欠陥があるのだろうか。 人間でもよくある話だ。 本人たちは問題ないものの生まれてくる子になんらかの障害が出てしまうことが。 幸い他の子ゆたちは現状問題なさそうだし、100%未熟ゆが生まれるわけではないのだろう。 それならば今いる子たちを頑張って育てればいい。 それでも幸せなゆん生だとすら思う。 傷心であろう一家に、真心と労いを込めてクッキーとホットケーキを用意してあげた。 もそもそと沈んだ様子で食べ始めた一家は食べ終わる頃にはすっかりごきげんになっていた。 その日から何日かはとてもゆっくりした日々だった。 赤れいむにおうたを歌い、まりさはまりさでやることはないであろう狩りについてお話していた。 まりさはとてもれいむを愛しているのかこんな提案をしてきた。 「おねーさん・・ れいむをみまもってほしいんだよ!」 「んん??」 「れいむはいまげんきさんだよ・・でもまだずっとゆっくりしちゃったおちびちゃんのことを きにしてるみたいなんだよ。だからすこしでいいかられいむをみまもっててほしいんだよ!」 まりさなりの愛情なのであろう。まりさはまりさのちびたちを見ているので忙しいということか。 「あと・・・すこしきになることがあるよ・・・おちびのれいむがときどきくるしそうなんだよ・・・」 またれいむ種に異変・・・? 私も暇なのでその提案を受けることにした。 ハウスにこっそりとカメラをとりつけPCを開いているときに端の方に表示するようにした。 行為に気がついたのはそのすぐあとだった。 「ゆー!おかーしゃんれいみゅもういやだよぉ!」 「ゆん!だいじょうぶだよ!おかーさんのゆうことをきいてればびょうきさんにならないからね!」 「ゅぅぅ・・・・いじゃいぃぃぃ!!!」 まりさ不在時のことだった。 れいむがちびになにかしている。 カメラでは詳細はわからないのでハウスに急行した。 そこには細いストローとぐったりした赤れいむがいた。 「ゆん!おねーさん!ゆっくりしていってね!」 「・・・れいむ・・・なにしてたの・・・?」 「ゆっ!!??な、なにもしてないよ!!!」 私は赤れいむを取り上げようとした。 「ゆ!!!ゆっくりやめてね!!!れいむのあかちゃんはれいむがそだてるんだよっ!!!?? まえのおちびちゃんがてんしさんになってきずついてるんだよ!?おねーさんはりかいしてね!」 「でも、あかちゃんが・・・」 私がそこまで言いかけると真剣な表情で言葉を挟んできた。 「そんなことよりたいへんなれいむをゆっくりいたわってね!れいむはかわいそうなんだよ!?」 「えっと。まってねれいむ。痛いのは赤ちゃんでしょ?」 「ゆん!いたいいたいさんでかわいそうだよ!ゆっくりできないおちびちゃんができたれいむは とってもかわいそうなんだよ!」 「いや、だからそうじゃなくて」 「ゆー!!!おねーさんはなんにもわかってないよっ!こそだてはたいへんなんだよ!? おねーさんはおちびちゃんがいないからりかいできないんだよ!! がんばっているれいむをいじめるなんておねーさんはゆっくりできないよ!!」 自分の子供を傷つけて同情を引く。優しくしてもらう。 それで自分はゆっくりした気持ちになる。 れいむの母性は子供の為ではなかった。 普通のれいむ種であれば子ゆがたくさんいることで精神的充足感を得るという。 しかしうちのれいむは子ゆを育てることで注目され優しくされる自分が快感になってしまったようだった。 同族であるれいむ種ばかりこうなってしまったのも、より注目されるからであろう。 そのとおりにまりさは心配していたし私だって随分心配した。 思えば初めての赤ちゃんは偶然の不幸だ。 その赤ちゃんの介護で私やまりさにやさしくされたのが仇となってしまったのか。 そう考えると私にも責任がある・・・。 「わかったわ。れいむ。疲れているのね・・・。これでも食べなさい」 「ゆん!おねーさんありがとぉ!むーしゃむーしゃ・・・しあわせぇ・・・・」 私は考えた。 できれば処分したくない。 しかしこのままではいずれ他子ゆにも被害が及んでしまう。 眠ったれいむを透明な箱に入れて他の部屋に移動させた。 まりさがハウスに帰ってきた。 「おねーさん!きょうはおちびたちとだいどころさんをぼうけんしたんだよ!」 楽しそうにまりさたちが出来事を私に報告してきた。 「ゆ・・?れいむは・・・?」 「まりさ。ゆっくりきいてね?れいむ病気さんになっちゃったみたいなの。」 「ゆぅぅぅ!!!!れいむぅぅ!!!!!」 「でも大丈夫。おねーさんがなんとかするから。元気になったらもどってくるかもしれないからね?」 「ゆ・・・かなしいけどゆっくりりかいしたよ!!!おねーさんありがとう!」 少し涙ぐんだがまりさは持ち直した。 片親になってしまったことで自分がしっかりしなければとでも思ったのだろう。 赤れいむはどうにか手遅れにはならなかった。 言語障害もおきていない。 どこでそんな知識を得たのか餡子に水をストローで注入されていたようで、すこしたぷんたぷんとしている。 まりさのもとで健やかにそだてばいずれ治ると思う。 れいむ種ペットショップでも他の種にくらべ格段に安い。 繁殖しやすいというのもあるのだろうが、育て方を間違えるとすぐ駄目になってしまいやすい。 そんなことを考えていると。 「おねーさんどうしたの?ゆっくりしてないよ?まりさしんぱいだよ?」 と話しかけてきた。まりさ種は善良なものが多い。 まれにゲスとよばれるものに当たるがそれ以外はすこぶる飼いやすい。 「大丈夫よまりさ。心配してくれてありがとうね。一緒にあそぼっか」 「ゆん!おねーさんといっしょにあそぶよ!おちびたちもいっしょにあそぶよ!」 元気にまりさたちと赤れいむはこーろこーろしている。 れいむは薄暗い所にいた。 さっきまでゆっくりしていたはずなのに、ここはどこだ。 『ュッキュリ!』 声がした。 「おちびちゃん!?おかーさんはここだよ!」 手探りでそれにたどり着く。 「ゆうぅぅ!またびょうきさんになっちゃったんだね・・・! れいむがおせわしてあげるよ!!!だいじょうぶだよ!!!」 また健気に子育てを開始する。 数時間してドアが開く音がした。 バラバラとそれなりのゆっくりふーどが足元に転がった。 「むーしゃむーしゃ・・・それなりー。あかちゃんもゆっくりたべてね」 柔らかくしたごはんをそれにあげる。なかなか食べてくれない。 れいむはゆっくりするおうたを歌った。 『ュッキュリ!ュッキュリ!』 それしか返してくれない。 「ゆーん!れいはがんばってこそだてしてるよ!」 もう誰も、れいむを褒めてはくれない。 『ゆっくり子育てするよ!ばーじょん3!』という商品。 話す内容などはPCと接続することで自分で決められる便利なおもちゃ。 通常であればすっきりー!が禁止されているれいむ種を満足させるためのゆー具だ。 私はあえて未熟ゆ設定にしてれいむに与えた。 未熟ゆを育てることによる充足感をできるだけ忘れさせるようにと思ったのだ。 子育てはそもそも大変であり、他人に褒められるためにするものではないというのを教えたい。 時間はかかるだろう。気がふれてしまうかもしれない。 殺処分は選択したくない私にはこれしか方法が思いつかなかった。 まりさに見てもらってる子ゆ達が大きくなり、もしれいむが再度愚行に及びそうな場合に 自分たちで逃げられるぐらいまではれいむは隔離しておくつもりだ。 もちろんれいむの病気が治ってくれれば言うことは無いが念を入れなければ。 病状がおちついたら去勢しよう。 子ゆも3匹。十分だ。 ぼんやりとテレビのニュースを見ていた。 「人間にもあるんだもの。ゆっくりにだってるんだよね・・・」 独り言をつぶやいているとまりさたちが膝にのってきた。 「おねーさん。ゆぅー。おひざさんぽかぽかするよぉ・・・」 気持ちよさそうに眠ってしまった。 すべすべぷにぷにのほっぺをつつくと「ゆ~ん♪」と気持ちよさそうに寝言をいった。 少しだけ、救われた気がした。 アトガキ あぅ。ハッピーエンドじゃない・・・気がする・・・ 頭のなかで考えた時はもっと制裁ありきのはっぴーえんどさんだったんですが、 暗いですね。ごめんなさい。 次はなんかアホなものを書いてみたいと思います。・・・できるかなぁ・・・ 前作で挿絵いただいた車田あきさま! 気がついてすぐ感想に書いたんですけどすぐ感想が消えちゃったの。ぐすん。 この場でお礼さんです。ありがとうございました!!☆ 過去に書いたもの anko1396 しゃっきんさん anko1427 しゃっきんさん その後。 anko1439 むしゃくしゃさん anko1445 おりぼんさん anko1470 しんぐるまざーって大変だね! anko1494 はとぽっぽ anko1633 不運な俺とまりさ anko1646 水ゆ anko1654 懲りずに水ゆを飼ってみた。 anko1658 にょーう anko1685 夏にありがちな話。 挿絵:車田あき
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『ゆっくりできないゆっくりプレイス』 7KB これが上手く投稿出来たらまた投稿するんだ・・・・・ ゆっくり出来ないゆっくりプレイス どういう風に投稿されるか分からないのでテスト用になります。できればブッチーあきと名乗りたい。 「ゆっくり出来ないゆっくりプレイス」 「少し急がないと間に合わないかもな・・・ならば全速前進だ!」 なんか初っ端にも関わらず、走っているのは今日から一ヶ月間出張する独身サラリーマンのお兄さんだ。 当然一人暮らしだが、それなりにいい会社で働いているためそれなりに良い家にすんでいる。だから一ヶ月間家を空けるのは心配ではあるのだが、一人暮らしの上に毎日忙しく、近所付き合いや交友ができていないため家を任せられるような人がいないのだ。 ~二十分後~ 「うおーい、鍵をかけ忘れてた!せっかく防犯対策に強化ガラスにしたのに意味がねえ!」 急いで家をでたためか鍵をかけ忘れていたお兄さん。そんなんでよくいい会社につけたな、おい。 このお兄さんは泥棒対策に家の窓や戸は全て強化ガラスにしている。留守を任せられるような人がいないお兄さんでも、少し安心して出張できた。 「さすがにまだ泥棒は入っていないよな・・・やべっマジで遅れる!」 お兄さんは大急ぎで鍵をかけて走りだす。確かにこの家に泥棒ははいっていない。泥棒は。 ~さかのぼること十五分前~ 「ゆゆ!ドアさんがあいたんだぜ!」 「さすがはれいむのまりさだね!かっこいいよ!」 「おとーさんかっこいい!」×4 「おとーしゃんきゃっきょいい!」×4 「じゃあ・・・」「ゆっくりはいるよ!!」×10 お兄さんの家の玄関の前にゆっくりの家族がいた。れいむとまりさ、そして四匹の子ゆっくりと、同じく四匹の赤ゆっくりの家族である。 まりさはドアという概念を知っているらしく、ある程度のドアは開けることができるようだ。もしかしたら元飼いゆっくりだったのかもしれない。 「ゆわあ・・なんかゆっくりできそうなおうちさんだね!」 「まりさのみつけたおうちさんなんだからあたりまえなんだぜ!!」 「ゆっくりできしょうだにぇ!」×4 「それじゃあここを・・・」「「「「れいむ(まりさ)(れいみゅ)(まりちゃ)のゆっくりプレイスにするよ!!」」」」 家の中に進入し、おうちせんげんをするゆっくり一家。当然家には誰もいないため反論の声はない。ちなみに、この一連の動きは実際には五分以上かかっている。 「ゆっくりおうちせんっげん!ができたんだぜ!」 「ここでみんなゆっくりしようね!」 「ゆわ~い!!」×8 確かに動作はゆっくりである。 「おかあしゃん、れいみゅおなきゃがちゅいたよ!」 赤ゆのなかの一匹が言う。するとつられて 「まりさも~」 「れいむも~」 とみんなが言い始めた。 「わかったんだぜ!!それじゃあゆっくりごはんさんにするんだぜ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」×9 「ゆっくりおとうさんについてくるんだぜ!」 ご飯を探しにゆっくり一家は家の奥へと進んでいった。 ~そして今~ ガチャ!ガチャ!ガタン! 「ゆ!ゆっくりできないおとさんがしたよ」 「こわいんだじぇ・・・」チョロロー 今のはお兄さんが鍵をかけた音である(二重ロック)。それをゆっくりできない音と感じたゆっくりたちは怖がり出す。赤ゆはおそろしーしーを漏らすほどである。すると 「しんぱいいらないんだぜ!みんなはいっかのだいこくばしらのまりさがまもるんだぜ!」 「まりさかっこいいよ!」 「「おとうさん(しゃん)かっこ(きゃっきょ)いい!!」」×8 と虫唾がはしるような茶番劇を演じるゆっくりたち。 ~数十分後~ 「ゆゆ!おいしそうなあかいおやさいさんをみつけたよ!!」/ と、台所にてそれをみつけたれいむ。 「みんなゆっくりこっちにきてね!」 ~五分後~ 「ゆっくりきたんだぜ!」 「ゆっくりきたよ!」×4 「ゆっくちきちゃよ!」×4 ホントにゆっくりである。 「ほんちょにゆっくちできしょうなおやしゃいさんだにぇ!」 「ならまずはちっちゃなおちびちゃんたちからたべてね!」 「ゆわ~い!ゆっくりいたぢゃきましゅ!」×4 と、まず赤ゆから食べさせようとするれいむ。欲望のかたまりのゆっくりにしては上出来だろう。 「ゆふふ、ちっちゃなおちびちゃんたち、あんなによろこんでるんだぜ・・・」 「くろうしたかいがあったね・・・」 と涙ぐむゆっくり夫妻。今までたくさんの苦労(笑)があったらしい。 「む~ちゃむ~ちゃ・・・ゆぎゃあああああ!?こりぇどくはいっちぇrゆげええええ!!」 とテンプレを言う間もなく餡子を盛大に吐き出す赤ゆっくりたち。 「どぼじでおぢびちゃんたちがあんこさんをはいてるのおおおおおお!?」 「ゆわああ!おちびちゃんたちあんこさんをはいたらだめなんだぜ!!」 「いもうとたちゆっくりしてぇ!!?」 まあそれもそのはずれいむが見つけ、赤ゆっくりに食べさせたのは赤唐辛子である。成ゆが少しでも食べたら瀕死状態となるものを赤ゆが齧り付いて食べたのである。これで死なないのはめーりん種やさなえ種ぐらいであろう。 「も゛っど・・・ゆっく・・ぢじだがdゆげえええええええええ!!」 そして赤ゆっくりたちは永遠にゆっくりした。 「ゆわああ!?れいむのかわいいおちびちゃんがあ!」 「ゆわあああ!?」×4 「おちびちゃん・・・ゆっ?あんなところにみどりいろのおいしそうなものがあるのぜ!」 「ほんとまりさ!?」 「いってみるんだぜ!」 「「ゆっくりりかいしたよ!!」」 赤ゆの死はどこへやら。早くも赤ゆたちのことをわすれたようである。さすがは餡子脳というべきか。しかも死亡フラグたちまくりである。 ~三分後~ 本当にゆ(ry 「おいしそうなんだぜ!しかもあかじゃないからあんぜんなんだぜ!」 「おちびちゃんたちからたべてね!」 食べ物のことは覚えていても自分の子供のことは覚えていない。さすが餡子脳としか言いようがないね。 「いちばんすえのいもうとからゆっくりたべてね!」 「ゆわ~い!」 死亡フラグがたっているので、直訳すると: 「いちばんちいさないもうとからしんでね!」 「やったー」 である。 「むーしゃむーsゆぎゃあああああ!!!」 フラグ成立。本当にありがとうございました。 「どぼおじてあかじゃないのにくるしんでるのお!?」×6 「ゆが・・ぐるじい・・・ばやぐれいむをだずげでね・・・・」 「おちびちゃんゆっくりしてね!すーりすーり」 赤ゆより成長しているせいか少しねばれている。しかしそれは苦しむ時間が増えるだけで死の運命は避けられない。 そして 「もっど・・・ゆっくりしだかった・・・」 「おぢびちゃあああん!!ゆっくりしてえ!」×2 「れいむ(まりさ)のいもうとがあぁ!!」×3 子ゆっくりの中の末っ子は永遠にゆっくりした。 すでにお分かりだろうが食べたのは緑色の唐辛子だ。 なぜこんなに辛い物があるかというと、実はこの家の所有者のあのサラリーマンは辛いものが大好きで、毎日のように生の 唐辛子を食べているくらいである。 後付け過ぎるのはご愛嬌である。 「みんな!こんなゆっくりできないところさっさとでていくんだぜ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」×5 流石に学習したようで、この家を出ることを決めたようだ。 ~十分後~ さっさとしてもゆっくりだったが玄関にたどりついたゆっくりたち。 「それじゃあドアさんをあけるんだぜ!ガチン!あれ?ガチン!どぼしてあかないんだぜ!?」 先に閉めておいた(キリと言わんばかりに、さっきお兄さんが閉めたからである。 「ゆっくりおちつくんだよ!ドアさんがあかなければほかのところからでればいいんだよ!」 少しは考えたものである。 「そうだなんだぜ!みんなでゆっくりでぐちをさがすんだぜ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」×4 ~十分後~ 本(ry 「ゆゆ!でぐちをみつけtゆべえ!?」 「れいむううううう!?しっかりするんだぜ!?」 「おかあさん!?」 出口を見つけたと突進するれいむ。しかしそれは窓に突進しただけである。 「れいむ!それはまどさんといって、かたいものをなげればあくものなんだぜ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 ドアだけではなく、窓も知っていたまりさ。飼いゆっくりだった説は本当のようである。 「ゆっくりなげるよ!」ポイ 「ゆっくりなげるよ!」×3ポイ そして近くの硬そうなものを窓に投げまくるれいむたち。しかしそれは強化ガラスである。人間でも壊すのが難しいものをゆっくりが壊せるはずがなく、 「まったくあかないよ!まりさ!」 「どうしてあかないんたぜぇ!?」 「出来ない」と、某絶望野郎のように絶望するしかない。 「ゆわああん!おなかすいたよおお!」 「ごめんね、おちびちゃんたち。ゆっくりがまんしてね!」 「どおじでぞんなごどいうのおお!?」 結局この家に入ってから何も食べていない子ゆっくりたちは空腹を訴えるが、どうしようもない。 もちろんこの家に辛いもの以外の食べ物がないわけではない。しかし一ヶ月間使わない冷蔵庫の中にはほとんど何もないし、あるとしてもゆっくりには開けられない、缶ジュースや瓶詰めや缶詰めばかりである。おかしもあるのはカ○ムーチョ等の辛いものである。 ゆっくりにとっては牢獄である。 ~数日後~ 「おなが・・・すぃたよ・・」 弱々しい声でれいむが言う。おちびちゃんたちは全員とっくに永遠にゆっくりした。あれかられいむたちは 「まどさん!いじわるしないであいてね!」 「どおしてあがないんだぜぇ!?」 と延々と窓を壊そうとしたが強化ガラスの前では限りなく0に近い威力だった。 まりさは思う。 「(どおじてごんなごどに・・・まりざだちはただゆっぐりプレイスでゆっぐりじようとじたうどじだだげのに・・・)」 数日後、帰って来たお兄さんがみたのは十個の腐った饅頭だった 終わり
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『てーと野良と加工所と愛護団体』 84KB 愛で 虐待 愛護人間 虐待人間 よろしくお願いします ※ご注意を ・一話完結となっていますが、過去のてーシリーズを読んでいただかないと話が意味不明です。 anko4095 てーとまりしゃ anko4099 てーとまりしゃとれいみゅのおとーさん anko4122 てーありしゅのおかーさん anko4203 4204 てーと野良と長雨 前後編 ・最後の最後まで愛でられる希少種がでてきます。優遇どころの話ではないです。 ・愛でられるゆっくりはほとんどオリキャラのようになっています。 ・飼いゆっくりを愛称で呼びます。 ・独自設定てんこ盛りです。 ・鬼意惨に恋人がいます。 ・これでも注意書きが足らないかもしれません。 以上、少しでも嫌悪感を抱かれましたら、読まれると不快な思いさせてしまうかもしれません。 公園を出ていくらもしない場所にある古ぼけたアパートの裏。 人々が行きかう路地のすぐ近く。 そこから人ではない物による会話が聞こえてくる。 「このくささんはにーがにーがだけど、れいむとおちびとたべればしあわせーなのぜ!」 「おとーしゃん!まりしゃもゆっくりがまんできるのじぇ!しあわしぇできるのじぇ!」 「ゆゆーん!おちびちゃんったらとってもいいこだよー!」 れいむとまりさの両親、そしてまりしゃ。 野良として実にありふれた家族構成である。 彼女等が言っているのはつまり家族と一緒ならどんなものでも美味しく感じるという勘違い。 だがこの勘違いもゆっくりにとっては馬鹿に出来るものではない。 “思い込み”という力が良くも悪くも異常に作用するゆっくり。 「さぁからだをぺーろぺーろしようね!」 「ゆゆーんっ!くしゅぐったいのじぇっ!」 家族と一緒ならゆっくり出来る。 そう信じることによって、結果的になんとか自分を誤魔化せているようだ。 「ゆゆっ!ちょっとさむいさむいだねっ! ゆっくりおうちにもどろうねっ!!」 「おとーしゃん!まりしゃだっこしてほしいのじぇ!」 「ふふっ、おちびはあまえんぼうさんなのぜ! ゆっしょっと」 三匹がおうちとよんでいるのは、建物の間の狭い隙間においてある室外機の横。 そこにビニール袋やビラなどのゴミを丸めて集めただけの、屋根すら無い家。 狭い故に雨などは入り込まないが、風は吹き込む。 「すーりすーりしようね!すーりすーり」 「しゅーりしゅーりはゆっくりできるのじぇ!」 「ふふぅ!まりさもこっちからすーりすーりしてやるのぜ」 しかしそれでも三匹は幸せだ。 寒さを紛らわすためだろうか、家族の会話は止まらない。 「おちびちゃんもおおきくなったね。 とってもかっこいいよ」 「ゆゆーん!てれるのじぇぇっ!」 「ふふっ、いけめんさんのおとーさんにかんしゃするのぜ!」 ゆへへっと自身のもみあげで口の上をこすりながらまりさが言う。 そんな夫を見ながられいむが語りだす。 「ふふっ、おかーさんとおとーさんのであいはとっても、うんめい!てきっ!だったんだよ?」 「よすのぜ、てれるのぜ!」 「ききたいのじぇっ!!」 顔を気持ち赤く染めながら馴れ初めを語ろうとするれいむ、照れると言いつつ先を急かすまりさ。 そんな両親の様子に子まりさもぴょんぴょん跳ねながら笑う。 「おかーさんがとりさんにいじめられてるところを、まりさがたすけてくれたんだよっ!」 「おとーしゃんすごいのじぇぇぇぇ!!」 「ふんっ!とうぜんなのぜ! あんなとりごときがまりさのれいむをいじめるなんてゆるせないのぜっ!」 スズメを追い払ったことを自慢するまりさ。 その汚い帽子も身体の動きに合わせて揺れる。 「まりさは“ひーろーさん”なんだよ!」 「まりしゃもっ!まりしゃも“ひーろーしゃん”になりたいのじぇ!」 「ゆふふっ、きっとなれるのぜ。 そうしてすてきなおよめさんをもらうのぜ!」 「やっちゃぁ!」 両親から頭を撫でられ、容姿を褒められながらまりしゃは眠りにつく。 明日もゆっくり出来る日がくると疑わずに。 縦浜駅にあるスポーツ用品店。 そこからてーを連れた饅殺男が出てくる。 大学で体育をとったはいいが、適当なジャージがなかったため買うことにした。 身体を動かすことが大好きなてーのジャージまでもが、その買い物袋に入っている。 「だでぃだでぃ!もうおうちかえる?」 「ん、そうだなー。バスで帰ろう」 そういえばと饅殺男は入口の大時計を見る。 昔は中から人形が出てくるなかなか凝った演出があったが、今はもう終了してしまったらしい。 てーはきっと喜ぶだろうに、一度くらい見せてあげたかったが残念だ。 まぁ、他に用事は無い。 ヘタにどこかによるとすぐ金を使ってしまう。 一人なら寄ったかもしれないゲームセンターの横を通り過ぎ、駅に向かう。 「だでぃだでぃ!」 耳を軽く引っ張られる饅殺男、てーはともかく饅殺男や虐子を呼びたがる。 「だでぃ!なんかやってる!」 「ん……?」 車の上に足場と看板、そして複数のスピーカー。 いわゆる選挙カーかと思い、早くも関心を失う饅殺男。 だがその演説の内容は想像とは全く違った。 「――確かに野良ゆっくりの被害は決して少ないものではありません!」 「……お?」 「んぅーうるさぃ!」 てーはスピーカで拡張された声にご立腹のようだが、そのおかけでわかった。 ――――ゆっくりの愛護演説だ。 「私は決して加工所の駆除活動に反対するものではございません! まことに残念なことに、野良ゆっくりとの共存は現代社会では不可能であります!」 マイクを握っているのは、最近TVや雑誌でチラホラ見たことがある男だ。 割と有名だったと思う。 それほど真剣に見ていたわけではないので、名前は覚えていない。 「しかし!ペットとして人間により教育を施されたゆっくりは違います! 彼等は人間の都合で調教され、並々ならぬ努力によってそれを身につけたのです!」 てーに謝りながら少しずつ近づいていく。 『飼いゆっくりは保護するが、野良はゆっくりじゃないので無視します』 こんな主張が通ること自体、今の社会のゆ害の深刻さを象徴している。 「これで大丈夫だろー?」 「むぅー」 誤魔化すようにてーにフードを被せる。 「よって野良ゆっくりの命を奪っている加工所には、 人間と共存の道を歩むゆっくりの生命を保証する義務があるのです! 我々は加工所に対し“ゆっくりにっく”の設立を要請し、 多くの署名を得ることによって、それを実現しました!」 違和感を覚える饅殺男。 ゆっくりにっくが愛護団体の要請から設立された? 馬路出医師からはそのようなことを一度も聞いた事が無い。 「そしてもちろん、ゆっくりを飼育なさっている皆様にもその責任はあるのです。 例えばゆっくりにっくでは健康診断を受けることが出来ます! いまだ謎が多いゆっくりだからこそ、健康には人一倍気をつかう必要があるのです!」 マイクを握る姿にも熱が入っているように見える。 健康診断か、最近行ったばかりだ。 「ゆっくりは無力です! しかし飼いゆっくりには知識がある! それは彼等の努力によって身に着けたものなのです! ならば!それを無駄にしないであげましょう! 我々はさらに加工所に対し、教材、しかるべき施設! バッジシステムの統制!娯楽施設の普及を訴えています! ぜひそれらを知っていただきたい、利用していただきたい! ――――あなたたちの家族のために!ぜひ!“飼いゆっくりに愛を!”」 周りから拍手が上がる。 なかなか面白い話だったとは思うが、あれでは加工所を宣伝している様にも聞こえる。 少し饅殺男が笑う。 「だでぃだでぃ!いつもとすうじがちがうよ?」 「……ん?あっ!間違えた」 てーがバス亭に書いてある大きな番号を指差しながら言う。 考え事をしていたからだろうか、上る階段を一つ間違え、違うバス乗り場に来てしまった。 もう一つ右の階段だった。 「ていうか、良く気がついたなてー」 「んー?」 好奇心旺盛なてーは、バス停すら興味の対象なのだろう。 考えたところで間違えた事実は変わらない、階段を下りなければ。 思わず舌打ちしそうになる饅殺男の目に、道路を挟んだ本来のバス停に目的のバスが来たのが映った。 乗り場には列がほとんど無い。 今から急いで向かっても間に合わないだろう。 「てー」 「んぅ?」 「今日は公園通って帰るよ……」 「やったぁ!」 無邪気に喜ぶてーの頭をポンポンと軽く触り、バスの時刻表を確認する。。 家の近くのバス停に行くものは、かなり待つことになりそうだ。 少し遠くはなるが公園行きのバスに乗り、そこから歩いたほうが早い。 「あーあ、まったく」 「だでぃ?」 「あーいや、運がいいのか悪いのかわかんなくてね」 「うん?」 なかなか面白い話を少し聞けたこと、ちょっとした有名人に会えたこと。 それと目的のバスを乗り過ごしたことを比べると、微妙なところだ。 てーを反対側に抱き直しながら普段と違うバス亭に並ぶ。 まぁ散歩は嫌いじゃない、てーを連れているなら尚更だ。 「ひーろーまりしゃのぴょんぴょん!なのじぇっ!!」 「ゆふふっ、おちびちゃんったら」 昨日れいむとまりさの馴れ初めを聞いてから、まりしゃはもう完全に“ひーろーさん”になりきっていた。 こうやって公園に散歩に来ていても、小枝をくわえながら落ち着き無く飛び回っている。 まりさもそれをみてニコニコ笑っている。 そんな二匹をみるだけでれいむも自然に笑顔になるのだ。 「こんにちわ!きょうはみんなでおでかけなのね!」 「ありす!ゆっくりしていってね!」 「ありしゅおねーしゃんこんにちわなのじぇ!」 まわりを良く見れば、かなりの数のゆっくりがいる。 とにかく広い自然公園。 街中で数少ない雑草が安定して手に入る場所であり、人間のすぃーも入ってこない。 「いいてんきだからおさんぽにきたんだよっ!」 「ちがうのじぇおかーしゃん!ひーろーまりしゃのぱとろーりゅなのじぇっ!」 「あらあら、おちびちゃんはひーろーなのね。とかいはだわ」 「ゆっふっふなのぜ」 野良だけではなく、バッジをつけた飼いゆっくりも多い。 飼い主の人間たちは皆、野良をみるたびに顔をしかめ、舌打ちするものもいるが。 野良達も人間に声を掛けはしないが、内心馬鹿にしながらひそひそと話をしている。 「とてもとかいはなおでかけね!」 「そうなのぜ!こんないいてんきにおそとにでないのはおばかさんなのぜ!」 「みちぇみちぇっ!まりしゃすぱーくっ!」 「ゆふふっ、かっこいいよ!おちびちゃん」 それぞれのゆっくりを楽しむ野良達。 春先の長雨を乗り切って、やっと暖かくすごしやすい気候を手に入れたのだ。 「でもね?“けんじゃさま”がおかしなことをいうのよ…」 「なんなのぜ?」 「あんまりみんなであつまりすぎちゃいけないっていうの……」 「えええっ!?どうしてぇっ!?」 孤独を嫌うからこそ、群れることを好むゆっくり。 こうして何の障害もないのに集まってはいけないなんて。 「みんなでゆっくりするからゆっくりできるのに! どうしてけんじゃはそんなこというのっ!?」 「ありすにもわからないわぁ。 たださっきもたくさんいたみんなに、はやくかえりなさい!っておこってたわ」 「ゆゆぅ、なんでなんだぜ」 この公園に住む“まちのけんじゃぱちゅりー”は数々の伝説を持つ。 なんでも人間の使う“もじ”というものを解読できるらしい。 この間カビが流行したときも、落ち着いて対処法を授けたと言う。 そんなけんじゃがなぜゆっくり出来ないことをいうのだろうか。 「よくわからないけど、にんげんさんをおこらせてしまうからっていってたわ」 「ゆゆぅ!?にんげん?」 ゆっくりが集まると人間が怒る? 意味が分からない。 分からないがそれならば問題はないじゃないか。 「ゆゆっふっ! そんなことならぜんぜんへいきなのぜっ!! たしかににんげんはひきょうで、“さし”ならかてないかもしれないけど! こんなにたくさんのなかまがいたらまけるわけないのぜっ!! いまだってまわりのやつらはてだししてこないのぜっ!!」 そう言って、ゆっくり特有の馬鹿にするようなニヤニヤ笑いで周りの人間を見る。 もちろん人間の耳にはまりさの声が届いているが、誰も反応しない。 通常なら腹を立てる人間もいたかもしれない。備え付けの回収箱もある。 だが今日に限っては誰もそんな無駄なことをしようとは思わない。 「おとーしゃんかっこいいのじぇっ!やっぱりおとーしゃんもひーろーなのじぇ!」 「そうだねまりさっ!やっぱりたよりになるねっ!」 「あたりまえなのぜっ!」 得意げにふんぞり返るまりさ、チラリと飼いゆっくり達を見る。 自分達とは比べ物にならないほど綺麗な容姿、そして近くにいる人間。 いつもは劣等感と羨望の眼差しで見ていた。 ――――だがこうして、仲間が“たくさん!”になった今、 自分達のほうが明らかにゆっくりしてるのではないか? 捻じ曲がった口がさらに厭らしく湾曲する。 「そうなのぜ。ゆふふっ! あいつらはおちびもいなければ、ともだちすらいないのぜぇ~!! そんなやつらをつれてるにんげんなんてこわくないのぜっ!」 「――ゆぇ? えーとっ、かいゆっくりのことだよねまりさ? ゆふっ、だめだよっ、ゆふふっ、そ、そんなこといったらかわいそうだよっ! ゆぷぷぷぷっ!!」 「そうね、いくらびゆっくりでもねぇ。 さすがにうらやましくないわ。とかいはじゃないもの」 ゲラゲラと笑いながら、飼いゆっくりたちをおさげで指すまりさ。 改めて見れば、飼いゆっくりの連中は皆暗い顔をしている。 いつもは見ていて腹が立つほど人間の側でゆっくりしているのに。 ――――もしかして、たくさん仲間がいるまりさ達が羨ましいのだろうか。 「ゆぜへっへっへ! あいつらうらやましそうにこっちをみてるのぜ! おちびがいるゆっくりもしらないのぜ!」 「ゆぷぷぷぅっ!しっとしてるんだね! さすがにあわれだねっ!ゆははははっ!」 一度そう決め付けたら、もう彼女等にとって飼いゆっくり達は引き立て役だ。 自分達のゆっくりっぷりを指をくわえて眺め、自分達に優越感を与えるだけの存在。 「なにしてるのー?」 「なんだかたのしそうだね!れいむにもおしえてねっ! すぐでいいよっ!」 まりさ達一家の幸せな様子に、他の野良達も集まってきた。 得意になってまりさが話す。 「あいつらはまりさたちがうらやましいんだぜぇぇぇ! おともだちもいなくてっ!おちびをいっしょうつくれないんだぜぇっ!!」 「ゆゆぅぅ? そっかぁ!!そうだったんだねぇっ!!」 「れいむもきいたことあるよ! あいつらはにんげんのどれいなんだよっ!」 ゆぷぷぷ、ゆふふと笑い声が重なる。 そんな野良達を飼い主の側で、悲しそうな瞳で見ている飼いゆっくり達。 その視線が野良達を喜ばせていると知らずに。 「ゆぷぷっ!にんげんのどれいだってね! ゆっくりなのに!あわれにもほどがあるねっ!」 「ゆひゃひゃっひゃ!おちびはぜったいあんなふうになっちゃだめなのぜ!」 「あたりまえなのじぇ!まりしゃはひーろーなのじぇ!」 久々の幸福感を味わう野良達。 彼女等は知らない。 飼いゆっくりが沈んだ表情をしているのはこれから起こる惨劇を知っているからだと。 彼女等は知らない。 一週間前から加工所がこの公園で一斉駆除を行うと通知していたことを。 そして――――それが今日行われることを。 「――根公園前です、ご乗車ありがとうございました」 公園前のバス停で降りたはいいが、あれほど遊ぶのを楽しみにしていたてーは寝てしまっている。 饅殺男も多分寝るだろうなとは予想していた。今日は昼寝もしていない。 「さて……と。ん?」 ふと公園の入口を見ると、同じ塗装をされたトラックが数台止まっている。 そして同じ服に身を包み、手に細長い棒を持った人間達。 「ああ、そうか今日か」 今日は加工所による“清掃活動”の日だった事を思い出す。 どうやら今から始まるらしい。 やっぱり今日はツイているようだ、と思わず笑顔になる饅殺男。 加工所職員達の後をゆっくりとついて行く。 公園内を少し進んだだけで、もう野良達の姿が見える。 確かに結構数が多い、しかも街ゆっくりとは思えないほど能天気な姿だ。 「ゆひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」 何故かはわからないが、多数の野良が集まって馬鹿笑いしている。 そして視線の先には飼いゆっくり。 「あー、やっぱ“お客さん”いっぱい来てるなー」 野良が笑っている理由はわからないが、飼いゆっくりがこんなに集まっている理由はわかる。 飼い主達は恐らくこれから行われる“ショー”を見学させる気なのだろう。 もちろん内容も説明してるはずだ、飼いゆっくり達のほとんどが沈んだ表情をしている。 「ゆっへへっ……?ゆゆっ?なんなのぜ? なんかにんげんがあつま……て」 やっとこっちに、というよりは加工所の人間が来たことに気づいたらしい。 周りの飼い主達が望んでいた教育番組が始まる。 ――――自分達が捨てられるとどうなるのか、だ。 「か、かこうじょだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっ!!! どうしてぇぇぇぇっ!?なんでぇえええええええっっ!!!!」 加工所の職員を見て、その服装から加工所の者だとゆっくりが認識できた時。 ゆっくり達はどのような行動にでるかご存知だろうか? 「にげるよぉぉぉおおおぉ!!れいむはにげるよぉぉぉぉっ!!」 まず逃亡を図るゆっくりがいる。 しーしー、涙、涎、おおよその体液全てを流しながらがむしゃらに跳ね回る。 当然そんな跳ね方をすればすぐ転ぶ。 もちろん転ばなかったとしてもすぐつかまることには変わり無い。 「いいぃぃぃっ!!おぞらをどんでるみだいぃぃっ!! やだぁあぁぁっ!!れいむをはなしてぇぇぇっ!!!」 ほぼ全ての逃走劇はこのように失敗に終わる。 「ま、まりささまがまけるわけないのぜぇぇ!! せいさいしてやるぅぅぅぅっ!!」 果敢に職員に向かっていく物もいる。 「ゆげっ!?ゆぐっ!そ、そんなこうげききかないのぜぇっ!! しぬのぜっ!――――ゆぇ?まりざのあんようごかないぃぃぃっ!! どうじでぇぇぇぇぇっ!?」 結果は逃亡したゆっくりの末路と変わらない。 数秒捕まるのが早まるくらいだ。 「……ひぃぃぃぃっぁぁぁぁっっ!!」 そして意外と知られていないが、その場で硬直するゆっくりも多い。 なぜなら、加工所職員の姿は餡子に刻まれた恐怖を掘り起こす。 生まれながらに持つ記憶が加工所の恐ろしさを強制的に伝える。 尋常じゃないほど身体が震える。それは得体の知れない恐怖。 ただの人間が、見たことも無い化け物に見える。 「ああぅ……おぁがあ……」 そして異常な恐怖は呼び覚ましてしまう。 自分は入ったことが無いはずなのに、加工所内部で行われる拷問の数々。 覚えているはずの無い生き地獄、そこで死んだ先祖が感じた狂気の苦痛を。 足を焼かれ、目を潰され、口を塞がれ、ひたすら死ぬための子孫を製造させられるもの。 すり潰され、押しつぶされ、自分がなぜ死ぬのかも分からずに消えていった幼い命。 死の間際の記憶が強烈にフラッシュバックし、パニックを引き起こす。 「やだぁあああああっ!!いやだぁああああああ!! いだいのばやだぁぁああああああ!!しにだぐないぃぃぃっ!!」 連れて行かれたら、死ぬよりも辛い目に合わされる。捕まれば地獄に落ちる。 逃げよう、逃げたい。少なくともそう考える。 ――――だがそこでまた受け継がれた記憶が教えるのだ。 悲惨すぎる過去の逃亡者達の末路を。 逃げでもすぐに捕まった。逃走は無駄だった。隠れても見つかった。 今までどのゆっくりよりも足が速かったのに、“ぴょんぴょん”する前に捕まった。 ――――逃げても必ず捕まるぞ、と。 「こないでぇ……!くるなっ!くるなくるなくるなくるなぁあああああああっ!!!」 逃げるのは無駄、そもそもあんよは震えて動かない。 でもでも、じゃあどうすればいい? 何も出来ない、ただ懇願するだけ。 「やめてぇえええええええええええええええっっ!! れいむにさわるなぁあああああああああああああっっ!!」 職員は答えない。 逃げないなら捕まえやすくていい。 逃げたところで追いかける手間はほとんどない。 ただ回収していくだけだ。 そうして公園はあっというまに野良達の悲鳴に埋め尽くされた。 「なんでっ!どうじでまりざのあんようごがないのっ!! なんでっ!なんでええええええええええええ!!!」 職員達が手に握る黒い棒。 ゆっくりにっくの研究チームが開発したゆっくり捕獲用ロッド『カラス』 ゆっくりの天敵だとか、ゆっくり達の巣を空にするからだとか、名前の由来は多々ある。 だが職員の関心が向くのはその使用方法と効果だ。 「うごいてぇぇ!!!うごかないとまりざじんじゃうよぉぉっ!!」 使用法はただ『カラス』でゆっくりを叩くだけ。 それだけで自身の体内餡をゆっくりはほとんど制御できなくなる。 外傷はないのに、痛みは感じないのに。あんよが、体が動かない。 まるで一瞬で動かし方を忘れてしまったような感覚。 焦れば焦るほど混乱し、意味を成さない奇声を辺りに散らす。 「びょんびょん!びょんびょんずるんだよぉぉっ!! ほらぁっ!こうだよぉぉっ!!ほらぁぁ!!ああああっ!!」 本ゆんはあんよを動かそうとしているのだろうが、身をよじることすらろくに出来ない。 音を耳ではなく、餡子の振動によって感じるゆっくり。 『カラス』はそれを利用した道具だ、内部から発せられる特殊な音がゆっくりの餡子を狂わす。 半狂乱になりながら、暴れることすら出来ないゆっくりを職員が持ち上げる。 「はなぜぇぇぇぇっ!!!まりざにざわるなぁぁぁぁっ!!!」 『カラス』の優れているところはゆっくりを傷つけずに捕獲できる所だ。 ほぼ無傷のゆっくりなら、加工所での利用の幅が広がる。 すり潰してエサに加工するにしても、生きたままの方が都合がいい。 「いやだぁぁぁぁぁぁ!!まりざどこもいきたくなぃぃぃぃ!! おうぢかえじでぇぇっ!!おうぢぃぃ!おうぢがえるぅぅぅ!!」 運ばれた先にはかなり大きな台車があった。 その広い広いスペースに、捕まった野良達が並べられている。 無論『カラス』によって身体の制御権を奪われている。 「あああああああああああ! やだやだやだやぢゃぁあぁぁあぁつ!! これこわいぃぃぃ!!まりざのりだぐないぃぃぃ!!」 この台車には染み付いている。 恐ろしくて、気が狂いそうなほどの恐怖によって漏らしてしまった体液の臭いが。 声が出なくなっても流し続けた涙が。 極度のストレスで抜け落ちたどの種ともわからぬ髪の毛が。 もはや加工所の記憶があろうと無かろうと、この台車に乗ったものがどうなったかが嫌でも解ってしまう。 「おろぜぇぇぇぇ!!でいぶをここがらおろぜぇぇぇぇぇ!!!」 「ごんなのとがいはじゃないわぁぁぁぁっ!! はやぐおろじなざいぃぃぃぃ!!」 「ゆっぇぇぇ……ゆえぇぇぇん」 先客達は抗議を続けるもの、既に諦めているものに別れている。 「おちびちゃんぅ!ぜったいここからだしてあげるからねぇぇぇぇっ!!」 「ゆぇぇぇぇぇぇっ!!ゆべぇぇぇぇぇぇぇんっ!!」 気丈にも子供を励ましている物もいるが、その決意も無駄に終わるだろう。 「やぢゃぁあぁぁぁぁっ!!まりざをおろじでぇぇぇぇっ!!! のりだぐないぃ!こんなのやだぁぁぁぁっ!!ああああああああっっ!!」 どんなに騒ごうと、ここに乗せられたが最後。 何をしようと行き先は変わらない。 たとえ死んだとしても途中下車は出来ないのだから。 「ほら、よく見ろよー? お前も俺の言うことを聞かなかったら加工所に引き取ってもらうからな」 「ゆっぐりりかいじまじたぁぁぁっ!!! まりざいうことぜったいききますっ!! ――だがらもうおうぢがえろうよぉぉぉぉぉっ!!」 一方飼いゆっくり達も泣いていた。 身体を持ち上げられ、悲惨な野良達が良く見える位置に固定されている飼いまりさ。 帽子には銀のバッジがついている。 そのバッジによって自分が生かされているということを、嫌と言うほど教え込まれている最中だ。 「ほーられいむ、近づいたほうがよく見えるだろ?」 「もうじゅうぶんみえるよぉぉぉぉぉっっ!!! かえろっ!!!もうわがったがらぁぁぁぁぁっっ!!」 こちらの飼い主はれいむを抱えながら、台車へと近づいていく。 一歩進むたびにれいむは律儀に悲鳴を上げる。 野良に身分を落とすと言うことはそれだけで極刑に当たる罪なのだと。 野良とはそれだけで悪なのだと。 「どうぞどうぞ、近くでごらんください。 稀に唾を飛ばす固体がいますので、ご注意ください」 「どうもです」 職員達もこのショーを盛り上げる。 ゆっくりを飼っている人間は、そのほとんどが加工所の製品を利用しているだろう。 その点では彼等は全員お客様だ。 ――――とはいえ、一般の飼い主がこのような教育方法をとることは少ない。 恐らくはペットショップに卸す前のゆっくりだったり、再教育中の固体だろう。 半分くらいはブリーダーかもしれない。 職員にとってはどちらでもかまわない。 「ぞごのれ、れいむっ!れいむっ!!ゆっっぐり!!ゆっぐりぃぃっ!! はやぐれいむをだずげでねっ!!ゆっぐりしないですぐだすけてねぇっ!!」 「ざぎにまりざをたずげでねっ!!まりざのほうがゆっぐりしているよぉぉぉっ!!」 「ざぎにちぇんをだずげてねぇぇぇぇ!!ぞうなんだよねぇぇ!!! わがるよぉぉぉぉっ!!ゆっぐりじなぐでいいがらねぇぇぇ!!!」 「どがいはなありずをざぎにたずげなざいぃ!!!」 飼いれいむが台車の上でさらされる野良達に気づかれた。 途端に救助要請の大合唱が響く。 この状況で無事なゆっくりなら、自分達を助けられるとでも思ったのか。 『助かるかもしれない』とほんの少しでも考えたら、『助かるはず』に変わる。 一匹が騒ぎ出すと、瞬く間に台車に乗る全てが命乞いし始めた。 「ひぃぃぃぃっ!!こわいぃぃぃ!!」 もちろん飼いれいむに怯える以外の事が出来るはずもない。 「騒ぐな、何したってもうお前等は死ぬんだから」 今まで野良達に一言も答えなかった職員が死刑を宣告する。 もちろん、ショーを盛り上げるためだ。 おかげで台上はますますヒートアップする。 「やだぁあああああああああああっ!!!」 「じぬぅ!?うぞだぁぁぁっ!! れいむがじぬはずないでしょぉぉぉっ!? ばかなこというじじぃはしねぇぇぇっ!!!」 「たずけてくだざいぃ!まりざだけはたすけてぇぇぇっ!!!」 役者達はどんどん台上に追加されていく。 そして皆同じ台詞を吐き続けるのだ。 誰でもいい、何でもするからどうか助けてください、と。 「おどおしゃぁぁぁぁんっっ!!! なんなのあいちゅらぁぁぁっ!!こわいのじぇぇぇっ!!」 ヒーローを自称していたまりしゃがしーしーを盛大に漏らしながら父親にすがる。 「ど、どうしよっ!どうしようまりさぁぁ!! かこうじょだよぉぉっ!!あれかこうじょだよぉぉぉっ!!」 「お、おちつくのぜれいむっ!!だ、だいじょうなのぜ! ま、まりさならぁ!まりさならだいじょうぶなのぜ!」 震える声で落ち着けと繰り返す親まりさ。 次々に人間に捕らえられる知り合い達の悲鳴が恐怖を煽る。 「お、おちびはここにかくれてるのぜ! おとーさんがよぶまでぜったいでてきちゃだめなのぜ!」 「やじゃぁぁ!ひとりはこわいのじぇぇぇっ!!」 あたふたしながら、泣き叫ぶまりしゃを植木の影に隠す。 「がまんするのぜ!まりさがあいつらをやっつけるまでまってるのぜ!」 「おとーしゃぁんっ!!」 「でもどうするのまりさぁ!あいつらたくさんっ!いるよぉぉっ!!」 もみあげで指すれいむ、心底怯えきった目がまりさを見る。 自分がしっかりしなければいけない。 「ま、まりさが、まりさがまずひとりをやっつけるんだぜっ! そうすればほかのやつらはびっくりしてにげるんだぜっ! それでみんなをたすければ!みんなもきょうりょくしてくれるのぜ! そうすればだいじょうぶなのぜぇぇぇぇっっ!!」 「ま、まりさぁ……」 正直怖いが、自分で言っているうちになんとかなる気がしてきた。 うんそうだ、なんとか一人を倒せれば英雄の自分に勇気づけられた他の仲間達だって立ち向かうはずだ。 そしてその後、自分は誰からも認められるヒーローになれる。 「そうなのぜ、そうなのぜ!ひーろーはだれにもまけないのぜっ!! れいむっ!!まりさのかっこいいところをみているのぜ!」 決意を秘めた目で一番近くにいる職員を睨むまりさ。 体当たり、全ては全力をだせるかどうかにかかっている。 自分の渾身の体当たりをまともにくらえば、人間といえど即死だろう。 問題はしっかりと当てられるかどうか。 「ゆぐぐぐぅ……」 最初の一撃を外せば苦戦を余儀なくされるだろう。 しかもその後も、たくさんの人間との戦いが控えているのだ。 出来るだけ一撃で終わらせたい。 そんな夫の苦悩を感じ取ったのか、れいむが申し出る。 「まりさっ!!れいむがさいしょにこうげきっ!するよ!」 「ゆゆうっ!?」 「れいむじゃたおせないかもしれないけど……。 だから、れいむがおとりになってるすきにまりさがたおしてね!」 「れいむ……」 危険だ、あまりにもれいむが危険な作戦だ。 番のれいむにそんなことをさせるわけにはいかないが、正直すごくありがたい。 それに人間に反撃する暇を与えずにさっさと倒してしまえばいいのだ。 れいむが注意を引き付けてくれるというなら簡単な話だ。 「それに、はやくおちびちゃんをゆっくりさせてあげたいよ! あのこはきっとまりさみたいにかっこいいゆっくりになるんだからね!」 「ゆっ、へへへっ、よすのぜ。てれちゃうのぜ」 こんな状況なのに笑ってくれるれいむ。まりさも思わずほほが緩む。 「――――ねぇまりさ。 もしぶじみんなでまたゆっくりできるようになったらさ。 れいむは……おちびちゃんのいもうとをつくってあげたいな!」 「ゆゆっ!それはいいかんがえなのぜ。 きっととってもゆっくりしたおちびちゃんがうまれてくるのぜ!」 「うん!」 これで負けられなくなった。絶対にゆっくりプレイスを取り戻す。 れいむと頷き合い、覚悟は決まった。 「いくのぜれいむっ!!」 「うんっ!!れいむががんばってさきにたいあたりするよっ!! ――――ゆぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」 れいむが今まで見たことないほどの速さで跳ねていく。 もちろんまりさもすこし遅れて全力のスタートを切る。 作戦はれいむの体当たりで怯ませた隙に、まりさがトドメを指すというもの。 だがこれなら自分の出番は無いかもしれない。 そうまりさに思わせるほどれいむの跳躍は力強かった。 人間はこちらに背を向けている、まだ気づいていない。 もうすぐ、もうすぐれいむの体当たりが炸裂する! 「ゆああああああああああああっっ!!くらえぇぇぇぇっ!!」 「ん?」 れいむの咆哮にやっと人間が振り返るが、もう遅い。 今更避けることは出来ないだろう。 驚いた表情をした人間が手に持つ長い棒をれいむに突き出し―――― 「ゆぇっ!? ――ゆばべぇげえろえぇぇがあがががががっ!! いがががが!がが!つぇうえぇうえぇういえぇ!!!」 ――――『カラス』はれいむの眼球を貫通し後頭部を突き破った。 「――――ゆ?」 「がぐげげげっ!!れげげげげげっ!!げえぇぇごご!ごげぇっ!!」 あまりの出来事にまりさの中枢餡とあんよが止まる。 『カラス』はれいむの勢いのままに、その体内餡をたやすくつき抜け、中枢餡を削りながら飛び出した。 本来それに触れたゆっくりは動けなくなるのだが、刺されたれいむは異常な痙攣を繰り返している。 微妙に中枢餡の中心をそれたために即死出来なかったのだろう、言葉にならない苦痛の叫びが響く。 だが意味をなさない音の唸りが、より鮮明にれいむの苦しみを表現している。 「あびゃががごがががっごごがぁけききききっ!!!いがぁぁぁぁぁぁっっ!!」 「れ、れいむぅぅぅぅぅっ!!うああああああああああああっっっ!! ゆっくりぃぃぃぃ!!ゆっくりぃぃぃぃぃ!!!」 滅茶苦茶に暴れるれいむの姿は、それはそれは恐ろしかった。 もう人間のことなんてまりさの頭には無い。あんよは自身の漏らしたものでビショビショだ。 ――頭から“ちくちくさん”を生やし、それにぶら下がりながら餡子と悲鳴を漏らし続けるれいむ。 あんな姿でもまだ生きているのが不思議だった。 あんな姿で生きているのはどれほど苦しく、そして痛いのだろうか。 「面倒だ」 「びびゅぅぅっ!!ひゅー!ゆばゆぅぅぅぅ!!」 人間がれいむから“ちくちくさん”を引き抜く、するとやっと地面に降りたれいむがのた打ち回る。 「……ん」 「あべええがげあがががっ!!あああががぁぁ!!」 職員は髪の毛を掴み、ねずみ花火のように暴れまわるれいむを持ち上げる。 たかだがれいむ種一匹を壊してしまった所で何の問題も無い。 回収箱の中身と一緒に廃棄物として回収するだけだ。 「よし」 「っひぃぃぃぃいいいいいいいいいっっ!!」 その手の『カラス』を持ち直し、震えるまりさを見る。 それだけでまりさはもう逃げることしか考えられなくなる。 「ゆっぐっ!!ゆっぐぅ!まりざはにげるのぜっ! いだっ!!……ゆぐぅ!いだいぃ!にげなきゃぁぁ!! にげなきゃぁぁぁっ!!ゆぅ? ――――なんでびょんびょんできないのぉぉぉぉぉぉっ!!」 当然逃げることは不可能だ。 「ざわっ!さわるなぁぁぁぁぁぁ!! はなぜぇぇぇっ!!やめろぉぉぉぉぉぉぉっぉ!!」 「ふぅ」 職員が機械的に台車へと歩みを進める。 まりさにいたってはもう気が気ではない。 捕まったというのに、自分の身体は思うように抵抗できない。 必死に暴れたいのに、身体が動かない。 意識はこんなにもハッキリしていて、心が壊れそうな恐怖を感じているのに。 「ゆあぁっぁぁぁぁぁぁっっ!!ゆあああああああっ!!!」 死にたくない、ゆっくりしたいと願うまりさ。 唯一自由に動き回る目を、ギョロギョロと動かし救いの手を探す。 そして気づいた。 「あああっ!!ほらっ!うじろぉっ!うじろぉぉお!あれぇぇっ!! ねてるおちびがいるのぜぇぇぇっっ!! さぎにぞっちをつがまえるのぜぇぇっっ!! ずーやずーやしでるがらまりざよりつかまえやすいのぜぇぇっ!!」 「後ろ?……あっ」 職員が振り返ると、胴付きゆっくりを抱いた青年が立っていた。 てーと饅殺男だ。 職業柄思わず胴付き、それも希少種であるてんこだと相当になる――などと値段を頭で計算してしまう。 思いもよらぬ存在がいた驚きと、若いのに高価な飼いゆっくりを、等また考えてしまい反応が遅れる。 先に饅殺男のほうが口を開いた。 「すいません。 ちょっと“こういうの”が好きなので見学させてもらってたんですけど。 もしかしてお邪魔でしたか?」 「ああ」 なるほど、お客様だということか。 それなら自分がやることは何一つ変わらない。 それに、自分の仕事を楽しんで注目してもらえると言うのは悪い気分ではない。 「いえいえ、どうぞ見てやってください」 「ありがとうございます」 ニコニコと笑う饅殺男からまりさに向き直り、その汚れた身体を持ち上げる。 「お、おぞらをとんでるぅぅっ!!とびだぐないぃっ! どうじでまりざがさきなのぉぉぉぉっ!? そのおちびのがつかまえやすいのぜぇぇぇっ!! まりざはそのあいだににげるよぉぉぉぉっ!! いいでしょぉぉっ!?」 必死に理由にならない理由を説明するまりさ。 自分が助かるための生贄に選んだてーを、必死におさげで指しアピールしている。 苦笑しながら職員が饅殺男に伺うように視線を向けるが、饅殺男はニヤニヤと笑っている。 野良が乗せられる台車に近づくとまりさの訴えもますます必死なものになる。 「ぎいでぇぇ!!まりざのはなしきいでぇぇっ!! あいつをさきにっていってるのぜぇぇぇっ! にんげんのどれいのゆっぐりなのぜっ!だがらぁぁっ!!」 「ははは」 「ゆゆっまっでぇぇ!!ちょっとだけはなしてぇぇぇっ!! まりさのぉぉっ!!まりさのはなしをきいてぇぇぇぇ!! なんでぇぇぇっ!!なんであいつらはつかまえないのぉぉぉぉっ!!」 てーだけでなく、周りの飼いゆっくり達の事を言っているのだろう。 希少種、それも胴付きを抱いた人間がいることもあって、この場は注目を集めている。 飼いゆっくりとその人間だけでなく、台上の野良達も。 ここで説明してやるのも悪くない。職員が口を開く。 「飼いゆっくりである以上、我々が加工所に連れて行くことは絶対無い。 飼いゆっくりである以上はな」 「なにぞれぇぇぇぇぇえっっっ!!!!!」 「ずるいよぉぉぉぉおぉぉぉっ!!」 「ふこうへいよぉっぉぉぉ!!! ありすもたすけなさいぃぃぃぃぃっ!!」 もちろん野良達が納得するわけがない。職員にもそれはわかっている。 だが、捕まれているまりさは違う反応を示した。 「まりさもぉぉぉぉおっ!!まりさもかいゆっくりなんだぜぇぇぇっ!!」 嘘としての基準にも達しない戯言。 しかし決して覆らない飼いゆっくりとの格差に文句を言うよりは、建設的な行動かもしれない。 が、意味は無い。 それでもまりさは必死だった。 「まりさはぁぁっ!ゆっと……ゆぅーん……! そうだよぉおぉお!!そこのおにいさんのかいゆっくりだよおぉぉおっ!! そうだよねぇ!?そのおちびちゃんともなかよしさんなんだよぉぉぉぉっ!! おにぃさんっ!?ゆっくり!ゆっくりしてってねぇぇっ!!」 「ふぅ」 呆れながら職員は突然飼い主にされた饅殺男を見る。 『どうしますか?』そう伺うような視線で。 それを受けて、饅殺男がまりさに答えた。 「んー、そうだね。そういえば僕まりさを飼ってた気がするなぁ」 わざとらしく、大きな声でゆっくりにも聞き取れるように言う饅殺男。 それを聞いてぐしゃぐしゃに顔を歪め、助かったと確信するまりさ。 身体が動いたら飛び跳ねながら、騒いでいただろう。 実際うれしーしーを漏らしている。 「!!っ!!そうなのぜぇっ!!まりさがまり――!!」 「ちがうよっ!!!」 「ゆえっ!?」 そんなまりさに台車から待ったがかかる。 「おにぃざぁぁんっ!!れいむがまりざだよっ!! ゆっぐりおもいだしでねっ!!」 「ゆゆぅっ!?」 台車に乗っていた一匹のれいむが大声で叫んだ。 おおむね予想通りの展開に饅殺男は笑う。 とはいえれいむ種がまりさを名乗るとは思わなかった。 てっきり『飼いゆっくりのまりさ』の座をまりさ同士で奪いあうとおもったのに。 一方驚いたのはまりさだ、冗談ではない。 せっかくのクモの糸を奪われてたまるか。助かるのは一匹なのだ。 「うぞつくのはやめるのぜぇぇっ!! れいむはれいむでじょぉぉぉっ!?まりざがぁ――」 「おまえじゃないのぜぇぇっ!! まりざこそがゆっくりしたおにーさんのまりさなのぜぇっ!!」 「おにぃざんっ!ありすがとがいはなまりざよっ!? どがいはでゆっぐりしてるおにーさんならわかるわよねっ!? このこたちはまりさのゆっぐりしたおちびちゃんよぉぉぉっ!!」 「ゆえぇぇっ!?」 「ちがうよぉぉぉぉっ!! ちぇんがまりさだよぉぉぉぉっ!!わがってねぇぇぇっ!!」 口々に自分こそが“まりさ”だと訴える野良達。 ちゃっかりと自分の子供をも飼いゆっくりにしようとしている個体もいる。 「えー?みんなまりさのかな? うーん、僕はあんまり覚えてないから良くわからないなぁ。 でも確か帽子を被ってたよ、僕のまりさは」 「ゆゆっ!!」 帽子、その言葉を聞いて勝ち誇った笑みを浮かべるのは本物のまりさ種達だ。 「おぼうしぃぃっ!!ほらっ!みてぇ!! まりさのおぼうしだよぉおぉぉっ!みるのぜぇぇっ!!」 「ちがうのぜぇぇぇっ!!ほらあぁぁ!!! まりさのおぼうしのほうがゆっくりしてるのぜぇぇぇぇっ!! おにぃぃさぁぁんっ!!おもいだしてよぉおぉぉ!!」 「ちがうよぉ!!まりしゃがまりしゃだもんっ!! みちぇにぇ!みちぇぇぇにぇぇ!!」 成体だけではなく赤ゆっくりすらも饅殺男に向かって必死でお帽子を見せる。 思い出せと言われても、そもそも飼ってないのだから無理な話だ。 そしてお帽子を持つのはまりさ種だけではない。 「ちぇんのおぼうしをみてねー!! わかるよねぇぇ!?ちぇんがおにーさんのまりさんなんだよぉぉぉ!!!」 「はっはっは!」 人間達は笑うが、必死なゆっくり達は気づかない。 満足に動かない身体で必死にお帽子を饅殺男のほうに向けている。 もちろん帽子を持たない種も黙ってはいない。 「れいむにおぼうしをよごぜぇぇぇぇぇっ!! れいむはしにたくないんだよぉおぉぉぉお!!」 近くにいるまりさ種から帽子を奪い取ろうとするれいむ。 だが身体を一歩も進めることが出来ない。 もみあげを伸ばそうにも届かない。 「ゆっくっく!おまえはばかなれいむなのぜ!! ゆっくりできるわけないのぜ!!」 「ゆがぁぁぁ!!ふざけるなぁぁぁっ!!れいむにはやくおぼうしわたせぇぇっ!! れいむがゆっくりできなくなるだろうぉぉぉ!!」 持たぬ物は口々に帽子を要求する。 もちろん差し出されることはない。 「おにいぃさぁぁぁぁん!!きいてねぇぇぇっっ!! ありすはほかのゆっくりにおぼうしをとられちゃったのぉぉぉ!! だからありすがまりさよぉぉっ!! おにーさんならわかるわよねぇぇぇぇぇっ!!!」 「わからんわからん」 職員ですら野良達の様子に笑いをこぼす。 台上のゆっくりはいまや全てが饅殺男に自分こそが飼いゆっくりであると主張していた。 ――――たっぷり反応を楽しんだ後、饅殺男は一番最初に飼いゆっくりだと主張した、 今やヒーローを待つ側となったまりさに話しかける。 「んー、そうだね。どうやら君が僕のまりさみたいだね」 「そうだよぉ!!そうなんだよぉぉ!まりさっ!まりさですぅぅ!! おにぃぃぃさんぅぅぅありがとおぉぉおぉおおおっ!!!」 「ちがうぅぅよおにぃぃざぁああん!!まりざがまりざだよぉぉぉ!!」 「れいむがまりざだよぉぉぉぉぉ!!ねぇぇぇ!!きけぇぇぇぇっ!!」 涙を流しながら、感謝の言葉を大声で饅殺男に叩きつけるまりさ。 それよりも更に大きな声で、思い直してくれと叫ぶ他の野良。 「ゆっゆっ!まりさうれしいよぉぉおぉ!!おにぃぃさぁぁんっ!! まりさはちゃんと――――」 「じゃぁこのまりさ捨てますので、持っていってください。 よろしくお願いします」 「はい、かしこまりました」 「――――はぇ?」 まりさの笑顔が凍りつく。そして溶け、不安に歪む。 今、ねぇ今、まりさのおにいさんは何と言った? 自分を捨て―――― 「やだぁあああああああああ!!すてないでぇぇぇぇぇぇっ!! まりさだよぉおぉおぉぉ!!おにぃぃぃさんんぅっ!! まりさなんだよぉぉぉぉおぉっ!!」 元々が助かりたい一心でのでまかせだったことをもうまりさは覚えていない。 せっかく助かると思ったのに!やっとこの地獄から抜け出せると思ったのに! 諦めきれるはずがない。 「うんだから捨てるんだって、ばいばーい」 「なんでぇえええええええええ!!なんでまりさをすてるのぉぉぉっ!!」 「だってほら、バッジ無いじゃないか君は。 周りの飼いゆっくりを見てごらん?みんなお飾りについてるでしょ? バッジ」 「ばっじさん……?」 バッジと言われてもまりさは解らなかった。 とりあえず目の前のおにーさんが抱く見たこと無いゆっくりには、キラキラなお飾りが一杯ついている。 そして周り、他の飼いゆっくり達はお飾りに何か丸いものを付けている。 あれの事なのだろうか、飼いゆっくりになったらみんなもらえるのか? 「ま、まってねっ!まりさまだばっじさんもらってないよっ!」 「じゃぁ、もともと飼いゆっくりじゃないんだね。 他のまりさだったかな……?」 おにーさんがまりさから視線を外す。 それだけで餡子が口から逆流するかと思うほどの恐怖がまりさを覆う。 「う、うそだよぉっ!!ちょっとかんちがいしただけですぅぅ!! まりさもらいました!ちゃんとばっじもらいましたぁぁっ!!」 「そっか、じゃあ無くしたんだね。そんな子はいらないなぁ」 「まっでぇぇぇぇ!!ちがうぅぅっ!!ちがうよっぉぉおぉっ!! ちゃんとあるぅ!ありますぅっっ!!」 慌てて自分の帽子をおさげで引きずり降ろし、バッジがついていないか確認する。 表――白かったはずのリボンが今は真っ黒になっている、もちろんバッジは付いていない。 裏――生ゴミや雑多な草を詰め込んでいたために、腐臭がする。良くわからないものがこびり付いている。 もちろんその中にもバッジは無い。 「あ、あれー、おかしいのぜっ、さっきまであ、あったはずなのに……」 必死で誤魔化そうとするまりさを職員が台上に下ろした。 「ゆわああああああっ!!まっでぇぇぇっ!!まっでぇぇぇぇ!! いまさがすぅぅ!!いまさがすのぜぇぇぇぇl!!! ああああああああっっ!!ほらここにあるはずだよぉぉぉっ!! ゆぅぇぇぇ!?どうじでばっじさんないのぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 何度も何度もくるくると帽子を回し、必死に探すまりさ。 溢れる涙のせいでまともに見えていないだろう。 まりさが捨てられたために、自分にもまだチャンスがあると勘違いした野良達が饅殺男へのアピールを再開する。 「おにぃさんっ!!ほられいむはちゃんとばっじさんもってるよ!! ほらっ!!これでしょ!わかったらさっさとれいむもだっこしてねっ!」 そう言ってれいむがベトベトの舌で差し出したのは、ただの小石だ。 れいむの宝物でお飾りに隠していた、少なくともれいむにとっては綺麗な小石。 もちろん人間からすればただのゴミ。 「うんそれバッジじゃないから」 「どぼじでええええええええ!!うぞづくなぁぁぁっ!!!! よぐみろぉぉぉぉっ!!ばっじだよぉぉおっ!!これがばっじさんなんだぁぁぁっ!!」 小石を握ったもみあげを千切れんばかりに振り回すれいむ。 だがもう饅殺男はれいむを見ていない。 「おにーさん!あ、ありすはちゃんとばっじさんをしっているわっ!! とってもとかいはよね!」 「ん?べつにバッジはとかいはじゃないよ?」 「ゆひぃ!? じょ、じょうだんよ!ばっじはものすごくいなかものなのよね! あ、ありすもすっごいめいわくしてるの!」 「うん、別にいなかものでもないよ。バッジはバッジ」 「ゆゆゆぅぅぅ!? じゃぁぁいったいなんなのよおぉぉぉっ!!!」 抗議の声はもう届かない。 「ちぇんはばっじさんのことわかるよー!わかるんだよー! だからおにーさんもわかってねー!」 「うん、じゃぁバッジって何?なにがわかるの?」 「にぎゃ?え……とっ、とにかくばっじはわかるんだよぉぉおっ! わかるでしょぉぉぉっ!?」 「全然わかんない、ばいばい」 「ああああああああっ!!」 バッジを求め一心不乱に辺りを探す野良達、身体が動かないために目だけを必死で動かす様子は実に気味が悪い。 ばっじ、ばっじさん、それさえあれば助かる。 でもどこにも無い、今まであんなものが落ちていたなんてことは無かった。 「おにぃぃさぁぁんっ!ばっじないよぉぉっ! まりざなくしちゃったよぉぉおおぉっ!!!」 一度は飼いゆっくりと認められたまりさが泣いて饅殺男にすがる。 「そっか、まぁ無くす子は捨てるから大丈夫だよ、あやまらなくていいさ」 「……ゆぇぇぇぇぇ!!!」 涙でグシャグシャになった目に映ったのは、饅殺男が微笑みながら別れを告げる姿だった。 まりさはこんなに一生懸命頼んだのに、まりさじゃどうしようもないのに。 バッジなんていう良くわからないものが無いから助けてくれないなんて。 「ひどいよぉぉぉぉっ……ひどいよぉぉぉぉっぉ!!!」 そうこうして間に、台車は回収されたゆっくり達で一杯になった。 「それでは、こいつらをトラックに運びますねー」 「お疲れ様ですー」 職員が周りの人間ににこやかに挨拶する。 そして台車は動き出す、野良達が唯一の希望だと思っている饅殺男から離れていく。 「まっでぇぇぇえぇ!!!ちゃんとばっじあるからぁぁあぁぁっ!! ああああああっ!!どうしてはなれちゃうのぉぉぉっ!! おいていかないでぇぇぇっ!!まってぇぇ!!!」 「まってぇぇぇ!!ありずとおちびちゃんもづれていきなざぃぃ!!いながものぉぉぉっ!!!」 「なにしてるんだぁぁ!!でいぶがまだゆっぐりじでないだろぉっ!!」 台車ごと自分達が移動していることがわからない野良達。 必死に身体をひねり、なんとか饅殺男の方を向き、自分を、自分だけは助けてくれと叫ぶ。 「うぅぁあああああああ!!みでないでだずげろぉぉっ!! おいぃぃ!そごのれいむぅぅ!はやぐれいむをだすけろぉぉぉぉおぉっ!!!」 「………………うぅ」 饅殺男だけではない、もう相手を選ぶ余裕は無い。 飼いゆっくりの近くを通れば飼いゆっくりに。 「そごのどれいぃぃ!!まりざはざいぎょうなんだぜぇぇ!!!! ぶぐぅぅぅ!!……ゆ、ゆうぅぅ!?ぷくーでぎないぃぃぃ!! あああっ!!!どれいぃぃなんとかするのぜぇぇぇ!!」 その飼い主が近づけば飼い主へ。 騒音を撒き散らしながら台車はトラックへと進んでいく。 「たすけてぇえぇぇ!!ほんとにれいむしんじゃうよぉぉぉ!! ねぇぇぇ!!だれかあぁっ!!それでもいいのぉぉぉっ!?」 「とかいはなのぉぉっ!!ありずどおちびぢゃんはとってもどがいはなのよぉぉっ!!」 もう無駄な工夫をする余裕は無い、口々に助けてくれと叫ぶだけになっていく台上の死刑囚。 しーしーとうんうんが混ざった悪臭すら気にしていられないほどの恐怖。 「おにぃぃさぁぁぁぁん!! もっかいぃぃぃ!!もっかいだけばっじちょうだいぃぃぃ!! こんどはなくさないよぉぉ!ぜったいなくさないからぁぁぁ!!」 諦めきれず、おさげをプルプルと震わせながら饅殺男へと伸ばし続けているまりさ。 必死で伸ばしているようだが、一人と一匹の距離はおさげが渡りきるにはあまりにも遠い。 そして饅殺男が背を向ける。 「ああああああああああああああああああ!! まっ――ゆげっほぉっ!げへぇぇぇぇ!!」 待ってくれと叫びたかったが、せり上がって来た自身の餡子によって阻止される。 切れてしまった蜘蛛の糸。あと少しで地獄から出れる所まで行ったはずなのに。 「ああぁぁぁ……」 他の大勢の仲間は未だに叫んでいるが、重くのしかかる絶望のせいでもう大声を出せなかった。 暗い眼で、てーを抱く饅殺男の後姿を見つめ続ける。 ――――そんなまりさを呼ぶ物がいた。 「おとーしゃん!」 「あっ!!……おちびぃぃ!!」 れいむと一緒に植木に隠れさせた、たった一匹のおちび。 いつになっても帰ってこない父と母に、心細くなって出てきてしまったのだ。 そして信じられない光景を見ることになった。 最強の父親が何かに乗せられて泣いている? 「おとーしゃん!どぉおしたのじぇぇっ!! はやきゅそいちゅをやっつけちぇぇよぉぉっ!! おとーしゃんはひーろー!ひーろーしゃんでしょぉぉ!!」 何かの間違い、もしかたらおとーしゃんはすごい作戦を実行中なのかもしれない。 絶対そうに違いないと考え、まりしゃが叫んだ。 対する父親の返答は―――― 「おちびぃぃぃぃ!!たすけてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「ゆ……じぇ?」 ――――自分への命乞いだった。 「おちょ……しゃん?」 「はやくたすけてよぉぉ!おちびぃぃぃ!! このままじゃまりさかこうじょつれてかれてしんじゃうよぉぉぉ!! ねぇぇ!!おちびぃぃ!はやくぅっ!!はやくたすけてぇぇぇぇ!!」 見たことも無いほど歪んだ、父親の顔。 まりしゃは父親が泣く姿なんて見たことなかったし、自分を頼ってくるなんて想像したこともなかった。 強くて、優しくて、ゆっくりしているおとーしゃん。そう思っていた。 「おちびぃぃ!おねがいぃぃ!はやくこいつらやっつけてぇぇ!! たすけてぇぇぇ!!ねっ!?ねっ!?おとーさんゆっくりできなくなっちゃうんだよぉ!?」 「ゆわぁ……ゆあっぁああああ」 目の前の、こいつはなんだ?本当に父親なのか。 醜く崩れ、涙を滝のように流し、まりしゃに何かを叫んでいる。 もし本当にこれが父親のなのだとしたら、最強の父親をここまで追い込む。 この人間は―――― 「ゆじぇぇぇぇんっ!!まりしゃはにげるのじぇぇぇ!! ゆっくりしにゃいでしゅぐにげるのじぇぇぇぇっ!!!」 「ああああっ!!まってぇぇぇ!まっておちびぃぃぃ!! もうおちびしかいないのぉぉぉぉぉ!!!まってよぉぉぉっ!! みすてないでぇぇぇ!!!おちびぃぃぃぃぃ!!!!」 泣きながら子供、まだまだ幼いおちびに訴えかけ同情を引こうとするまりさ。 もはやヒーローどころか、父親ですら無くなった。 「…………」 一方職員も追いかけて捕まえるようなことはしない。 もともと成体ゆっくりを中心に回収しているのだ。 あくまで数を減らしているだけで、殲滅が目的ではない。 そもそも、親がいなくなった子ゆっくり達の末路を考えれば捕まえる意味は無い。 「まってぇぇぇ!!!おとぉぉぉさんをたすえけてぇぇぇ!! おちびぃぃい!!!おちびぃぃぃぃぃぃ!!!!」 「ひぃぃぇえええんぅ!きょわいじぇぇぇぇぇえあぁあぁっ!!」 おちびは一度も振り返らない。 後ろからついてくる父親の声が恐ろしいから。 「ふぅ」 ――――とうとう台車はトラックの下へ着いた。 野良達が台車ごと中に入れらていく。 「ひぃぃぃぃぃっ!!なにここぉぉぉぉぉ!! ぐざいぃぃい!!ごわいぃぃよぉぉぉぉ!!」 「こっちくらいぃぃぃ!!れいむやだぁぁぁぁぁっ!! もうおうちぃぃ!!おうちがえらせてぇぇぇぇ!!!」 トラックにもゆっくり出来ない臭いが染み付いている。 荷台が閉められ、光が一切無くなる。 暗い、見えないと叫ぶがもう遅い。 ここ入れられた物達の未来に光がさす事はもう無い。 タイミングが悪いことに、家についてすぐてーは眼を覚ました。 とはいえ、公園で起きたとしてもあの状況では遊べなかっただろう。 しかし、しっかり公園を通ると言われていたことは覚えていたらしく。 「ん……だでぃ?こうえんついた?」 眼が覚めるなり饅殺男に尋ねるてー。 「いや、もう家。ご飯にするぞー」 「ええっ!?なんでー!」 と猛抗議を始めるてー。 自分が寝ていたことを説明しても納得しない。 「おらおら!」 「はははっ!やめてよぅ!はははは!だでぃ!! もー!きいてよぅ!」 くすぐって有耶無耶にしようとしても駄目だった。 仕方が無いので、明日また行くと約束した所でやっと落ち着いた。 「ううぅぅ」 ぐりぐりと料理中の饅殺男の身体に頭を押し付けている。 消費する予定だったエネルギーが余っているようだ。 「ほらほら。歪なコロッケが出来たぞー」 「むぅー、たべる……」 植木の下でぶるぶると震えながら、一睡も出来なかった夜が明けた。 まりしゃの両親は結局帰って来なかった。 泣きながら自身へ助けてくれと何度も繰り返していた父親の姿。 涙と涎でぬらぬらと気持ち悪い顔、恐ろしい表情。 あれは本当に現実のものだったのだろうか。 「ゆっ……」 明るい空。ポカポカと気持ちのいい暖かな空気。 しかし、それを分かち合える存在がいない。 人間がいなくなったのはいいが、大人達もみんないなくなってしまった。 いつもは賑やかな公園に、今は見渡してみても誰もいない。 「おなか……すいたのじぇ……」 幸いにも雑草には困らない。 ただし一度噛み砕いてから与えてくれる母親の姿はここにはない。 「ゆげぇぇぇぇぇぇ」 苦い。 くささんとはこんなにも苦いものだったのか。 辛い。 一人っきりの食事はこんなにも辛いものだったのか。 「ゆえぇぇぇぇぇ……おかーしゃん……! おとぉぉしゃぁぁぁぁんっ!!!!!」 なんで、どうしてこんなことになってしまったんだろう。 本当にあれは悪夢だったんじゃないかと思うほど急だった。 たった半日前まで両親に抱かれながら、しあわせーだったのだ。 本当に、これが夢なら。 「ゆっぐぅ!ゆっぐっ!! おとーしゃんとおかーしゃんはかえってくるのじぇ」 苦い草を食べた気持ち悪さと、極度の寝不足がまりしゃの意識を遠ざける。 次に目を覚ましたら、きっとおかーさんが『おはよう!ねぼすけのおちびちゃん』 そう言って笑ってくれるはずだ。 だからお願いします。もう二度とこんな悪夢は見せないでください。 気絶するようにまりしゃは眠った。 「いい天気だ」 「だでぃ!はやくっ!はやくぅ!」 約束どおり公園に来た饅殺男とてー。 さすがに昨日加工所が来ただけあって、静かなものだ。 野良達の姿は見えない。 トテトテ先を走るてーに急かされ、視線を戻す。 昨日買ったばかりのジャージが嬉しいのだろう。 一秒すらも惜しいと言う感じで、芝生へ駆けていく。 「さて、何しようか?」 「えっとね、たっち!」 「うい、おーけー」 “たっち”とは、目を瞑ったてーを少し離れたところから手拍子や声で誘導、 てーが饅殺男の下までたどり着けたら成功というゲーム。 勝ち負けも何もない、本当に単純な遊び。 それでも一生懸命なてーの姿は可愛い、こっそり位置を変えたり、捕まえやすいよう近づいてやったりする。 「たっちっ!」 「おっ、はははっ!早いじゃん」 「うん!」 てーが飽きることは無い。 カバンにはボールも入っている。 とことん付き合おう。 「ふぃー。てー?そろそろ帰ろうぜー」 かれこれ4時間は公園にいる。夕方という時刻だ。 かけっこ、それから始まったおにごっこ。 遊具を使った遊び、そしてキャッチボール。 「やーぁ!もうちょっと!」 「だめだめ、もう今日は帰んねーと」 それでもまだてーは満足していないらしい。 とはいえ、今日は虐子の家で夕飯をご馳走になる約束をしている。 遅れるわけにはいかない。 「あとちょっと!だでぃ!!」 「だーめ」 問答無用で抱き上げる。 いつもならこれで大人しくなるはずが、じたばたと暴れるてー。 「ん、今日はご機嫌斜めだな」 「やーぁぁぁ!!あそーぶぅー!!」 ついに泣き出してしまった。 これは本当に珍しい。 てーが、というよりはてんこ種は飼い主の注意を常に自分に向けたがる。 逆に言えば、かまってさえ貰えれば満足するのだ。 実際てーも抱き上げるなり、頭を撫でるなりすれば、大抵素直に言うことを聞いていた。 「うーぅ!だでぃ!かえるのやぁーあ!」 「もう十分遊んだだろ? それにマミィが待ってるぞ?早く帰らなきゃ」 「やーあうぅ!!」 虐子を引き合いに出しても、納得しないなんて。少し驚く饅殺男。 実際てー自身、何か特別な理由があったわけではない。 今日はとっても楽しくて、だでぃも笑ってくれてて幸せだった。 でも帰ろうといわれて、なんだが途中で遊ぶのを飽きられてしまったように思えて。 それがなんだが寂しかったのだ。だからもう少し遊びたかった。 「また来よう?そろそろご飯だからさ」 「んーん!あああうぅぅ」 首を振るてー。抱き上げたてーを撫でつつ饅殺男は歩き出す。 別に遊ぶ内容はなんでもよかったのだ。 もう少し一緒に遊びたかった。 でも一方でご飯の時間には帰らなきゃいけないのも分かっているし、 だでぃの言うことをきかなければいけないのも分かっている。 でもやっぱり言葉にできないモヤモヤが気持ちに残っている。 だから首にしがみ付いて精一杯泣く。それを全部吐き出すように。 「んー、てー?泣くのはいいけど一回これ飲みなさい」 「ひっぐぅ。うっぐ、ん……こくっこくっ」 「よしよし、と」 差し出した水筒のゴムストローに素直に口をつけるてー。 饅殺男もあやしながら考える。思いっきり泣いたほうがスッキリするだろう。 てーにはてーなりの理由があるのだろう、だから叶えてやる事は出来ないけど。 決して『泣くな』なんて言わない。気が済むまで抱っこして、撫でてやる。 だから―――――― 「ひーろまりしゃがきたからにはもうだいじょうぶなのじぇ!!」 今は野良なんかに構っている暇など無いのだ。 まりしゃが目覚めると外はもう暗くなり始めていた。 両親はまだ帰ってきていなかった。 ちょっと時間が掛かっているだけですぐ帰ってくるはずだ。 そうに決まっている。 「ゆっ、ゆっ、おとーしゃんたちがかえってきたときのためにごはんさんをあつめとくのじぇ!」 一回の睡眠を挟むことによって、恐ろしい記憶は全て夢ということで折り合いをつけたらしい。 両親は今帰り道を急いでいることだろう、そう自分に言い聞かせている。 そうやって臨時のおうち代わりにしている植木から外に出て、見つけた。 表現することが出来ない、今まで見たことも無いくらいの美ゆっくりを。 「ゆっ、ゆへへぇぇっ」 汚れ一つ無い肌、綺麗な髪、きらきさんが散りばめられたお飾り。 そして“どうつきさん” 衝撃だった、初めての恋愛感情は強烈だった。 「ゆわぁぁ!しゅごいっ!しゅごいのじぇぇっ!!」 ただ見てるだけなのに照れてしまう。おかおが赤くなってるのが自分でも分かる。 人目惚れだった。フラフラとそのゆっくりに引き寄せられていくまりしゃ。 「ゆっとぉ、ゆっ、ゆっとぉ」 どうしようか、最初の挨拶はなんて言おう。 やっぱり『ゆっくりしていってね!』だろうか。 いや、ここは自分のカッコイイ所を見せるために『ゆっくりしていくのじぇ!』が一番だろう。 ゆへゆへと、だらしなく口を緩ませながらまりしゃがどんどん近づく。 「ゆぇっ!?」 見とれていたまりしゃの瞳に信じられない光景が写った。 突然その美ゆっくりが泣き出したのだ。 それだけではない、人間に捕まってしまった! 「な、な、な!」 一瞬慌てるまりしゃ、だが思い出す。 父と母に聞かされた二人の馴れ初めを、そして自分はヒーローだと言うことを。 そう、考えてみればこれは千載一遇のチャンスなのだ。 あの人間を倒し、彼女を救う。 そうすれば―――― 「ゆへへへなのじぇ」 頬が緩む、ヒーローとしての確固たる地位ととびっきりの伴侶。 その両方を手に入れることが出来る。 さて行くか。もたもたしている暇は無い。 早く助けてあげなければ、未来のお嫁さんであり囚われた“おひめさま”を。 「ひーろまりしゃがきたからにはもうだいじょうぶなのじぇ!!」 大声で叫んでやった。 「――――ゆっ!?」 全力の大声を出したのに人間はまりしゃを見ない。 そしてあの子はまだ泣いている。状況は何も変化していない。 どういうことだ? 「おいぃっ!きいているのかにんげんぅ!! そにょこをゆっくりしないではなしゅの――ゆゆっ!? とまれぇぇぇ!!ひーろーまりしゃがさんじょうしたんだじぇ!?」 人間のあんよは止まらない。 恐らくまりしゃには敵わないので、逃げる気なのだろう。 そうはいくか。 「まりしゃからにげられるとおもうにゃぁぁ!!」 全力で追いかける。相手はトロい。このまま体当たりを喰らわせてやる。 「ゆっ!っしょ!ゆっ!っす! ゆん?あ、あれ?」 タイミングを計るため顔上げたが、おかしい。 人間との距離が全然縮まらない。 息が切れるほど一生懸命跳ねているのに追いつかない。 「まっ、まつのじぇぇぇっ!! ひきょうものぉぉぉぉっ!! まりしゃとたたかえぇぇぇっ!!!」 体当たり、一発でも当てることが出来れば動きを止められるはずだ。 それにあの子の救いを求める泣き声、そしてきらきらさんの涙が見えているのだ。 「ゆぉぉぉぉっ!!ぜったいにがしゃないのじぇぇぇっ!!」 「ひっぐ、ひっぐ、ふぇぇっく」 「今度はマミィも一緒に行こうなー。ちゃんとジャージも着てさ」 こんなに全力でぴょんぴょんした事なんて今まで無かった。 それなのに、何で追いつかない? 「はぁ、はぁ――ゆびぃ!?」 突然あんよに痛みが走る。 じめんさんが急に硬くなってしまった? コンクリートなんて言葉を知らないまりしゃには理由は分からない。 いつの間にか公園を出ていることも。 ジンジンと痺れるような淡い痛みが断続的にまりしゃに響く。 「まちぃぇぇ、まりしゃ、はぁぁぁっ……! ひーろぉなのじぇぇぇ……!」 やっと距離が縮まって来た。 あと少し、あと少しで追いつく。 「ゆああああああああっ!!」 こてん、とまりしゃが饅殺男のジーパンに当たる。 反動で体制を崩したまりしゃが、うまく着地できず顔から地面に落ちる。 「いぢゃ!ゆぐぅぅぅ!や、やったのじぇ!これで……!」 地面に倒れ付す人間にトドメ刺すためにまりしゃが起き上がり。 平然と歩く饅殺男に驚愕する。 「にゃんでぇぇぇ!!どうしてなのじぇぇ! あてたのにぃぃ!あてたのにぃ!!どうしてぇぇぇ!!」 残された全ての力を一撃に託した。 反動で自分が動けなくなるほど強烈な体当たりだったのだ。 その証拠にまりしゃの身体はボロボロだ。 絶対死ぬはずだ、そんな一撃だったのに。 当てれば倒せると思っていただけに、ショックは大きい。 「まぁっ、ちえぇぇっ……まつのじぇぇぇぇ……!!」 それでも諦めきれない。 引きずるようにして身体を饅殺男の方へと移動させる。 「ひっく……うっくぅ」 「よしよし。……ふん」 「くら……うのじぇ……!」 何故か急に立ち止まった人間。 チャンスだ、人間のあんよに必死に噛み付く。正確に言うならジーパンの先っぽに。 「ゆっぎぎぎぃぃ!いぎぃぃ!」 硬い。なんて硬いんだ人間のあんよは。 だがこれで今度こそ死んだはずだ。 「いぎぃぃぃ!ぎぎぃぃぃ!!」 饅殺男はまったく気にしない、ただ歩くために足を動かす。 それをまりしゃは最後の悪あがきだと受け取る。 人間が苦しんでいる。このままかみ続ければコイツは死ぬ。 引きずられ、身体がものすごく痛い。それでも絶対に離してたまるものか。 「ぐぎぎぃぃ!じぬんだじぇぇぇ!!はやぐじねえぇぇぇえ!! ゆがぁぁっ!?いっ、がぁぁぁぁっ!!」 だがもともとあごの力は強いほうではない。 そして砂糖細工の歯は脆い。 だからまりしゃの歯が生地に引きずり折られるのは当然だった。 当然支えを失い、そのままアスファルトに二度目の顔面着地を果たす。 「いだいぃぃぃ!!まりじゃのぉぉぉおあああっ!! ばがぁぁぁ!はがぁぁぁいだぃぃ!!おぐちがばくはつしだぁぁぁ!!」 この痛みはさすがのヒーローも我慢できるものではなかった。 かすかに残った力で痛みのやり場を求めてゴロゴロと転がる。 「ゆっぐいぃ、いだぃぃのじぇぇ……」 人間が何か卑怯な技を使ったんだ、それでまりしゃのおくちが爆発したんだ。 そうじゃなきゃ、まりしゃのどんなごはんさんでも噛み砕いてきた歯が折れるはずが無い。 「ぐじょぉぉっ!いだぃぃ、ぐやじぃのじぇぇ!! なんでぇぇ……なんでしなないのじぇぇぇ……くやじいよぉぉっ!!」 あの子はまだ泣いている。それがハッキリ見えているのに。 もう動く力が残っていない。自慢の武器は砕かれてしまった。 助け出すことが出来ない。 自分はヒーローなのに、卑怯な人間の罠にかかり負けてしまったのだ。 悔しい、こんなゲスに屈服しなければならないことが悔しい。 自分の未来のお嫁さんを、まんまと攫われてしまうことが悔しい。 「ゆぇぇぇ、ゆじぇえぇぇぇぇぇん!!ゆえぇぇぇぇぇん!!!」 そして声をあげ涙を滴らせながら泣いた。 そうすればいつもは両親が助けてくれたから。 「ん」 「ひっく、ひっく」 饅殺男が軽く後ろを振り返る。 どうやら後をつけて来ていたうっとおしいヤツは諦めたらしい。 てーはしゃくりあげるだけになって来た、このまま寝てしまうだろう。 ずっと掴まれていた首の裏がジンジンと痺れる。 背中をポン、ポンっと軽く一定の間隔でたたいてあやす。 やっと落ち着いてきたときに限って、邪魔するものは現れるものだ。 「あの、すいません! てんこちゃん泣いてるみたいなんですけど!」 「はい?」 「……ひぅっ!」 いきなり後ろから肩を叩かれた。 聞き慣れない大きな声にてーが一瞬ビクっと体を震わせる。 振り替えると饅殺男と同世代の女性が立っていた。 「すいません、うるさかったですかね。申し訳ないです。 今ちょうど――――」 「いえ、そうではなくて。ずっと泣いていたようでしたので。 どうかしたんですか?なにかてんこちゃんが悪いことでも? しかしだからといってあまり酷いお仕置きをするのは――」 饅殺男の返答を待たず、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。 整った顔に人当たりのよさそうな笑みを浮かべている。 オリジナルの飾りを何一つ付けてないてーを一目見ただけでてんこ種と判断できるあたり、詳しいようだ。 そしてこの態度――――まちがいなく愛護の連中だろう。 「大丈夫です、ちょっと窘めている途中ですので」 「そうなんですか……ねぇてんこちゃん?よかったらお姉さんに」 「ふぇぇぇ、ひっく……?」 いきなり話しかけれ、てーも戸惑っているようだ。 てーが饅殺男の首に回している腕に若干力が加わる。 「すいません、この子ちょっと人見知りするとこあるんで。 勘弁してください」 「そうなんですか?あのねてんこちゃん、お姉さんの名前は――」 「うぅぅ」 「あの、ちょっと!」 饅殺男の話を聞いていたのかどうなのか、無理やりてーの側に回りこみ自己紹介を始める女性。 彼女に悪意は無いのだろう。 しかし野良のように、簡単に追い払えない分何十倍もタチが悪い。 てーの方はこの女性というより、不機嫌になっていく饅殺男に戸惑っているようだ。 「すいません。ちょっとマジ急ぐんで」 「あっ、ま、待って!少しだけでも話をっ!!」 露骨に足を速める。言葉が通じないのなら逃げるしかない。 「あっ、あの!私こういう団体に入ってるんです! もし何かありましたらぜひ相談しに来てください!」 それでも女性は小走りで前に回りこみ、半ば押し付けるようにしてチラシを差し出してきた。 「ありがとうございます、では失礼します」 「ええ、てんこちゃんもまたね」 受け取った後また早足に歩き出す。 チラシを一瞥。 『飼いゆっくりに愛を。ゆっくりんピース』 確かめるまでもなかった。 「だでぃ……?」 心配そうにてーが顔を近づけてくる。 あやしていたはずなのに、いつの間にか立場が逆だ。 「ごめんごめん」 「わぁっ、やめぇだよだでぃ!」 おどけた調子でてーにちゅっちゅを繰り返す。 どうやら泣き止んでくれたようだ、そこは女性に感謝――は微妙なところだ。 「さっ、まみぃとぐらんぱとぐらんまと一緒にもうすぐご飯だ」 「うん!」 向こうにしてみれば完全に善意からの行動なのだろう。 だから怒りを覚える自分がおかしいんだ。 だから冷静になろう。冷静になりたい。冷静になれるといいな。 ――てーを見ていれば家に帰るまでにはこの怒りも収まるだろう。 「ぐなしやきそば?」 「ないない、それだけはない」 「えー」 「悪い人、じゃ無かったみたいね」 女性がほっと息をつく。笑顔を確認することが出来たので安心する。 どうやら虐待されていたわけでは無かったらしい。 とはいえ泣かせるなんて――とは思ったが、強く言って激昂されても困る。 まぁ自分にできることは全てやったわけだし、これ以上は考えるのはよそう。 「ぐじょぉぉ……ゆぇぇぇああっ!ゆえぇぇっ!!」 「ん?」 声が聞こえたほうに視線を下げると、ボロボロのまりさ種がいた。 まだ成体になりきっていない――というよりは子ゆっくりと赤ゆっくりの間くらいだ。 歯が何本か無い、最近抜けたのかそれとも前からなのかはわからない。 野良みたいだけど、見つけた以上このまま放って置くのは可哀想だ。 ウチの団体は、残念ながら野良を差別するけど少なくとも私は絶対そんなことしない。 「こんなところにいたら危ないわよ? あなたどこから来たの?」 「ゆぇぇぇんっ!!ゆぇぇぇぇ!!」 泣いているばかりで、話を聞き出せない。 見たところ死んでしまうような傷はないけど、あちこちに小さい傷が一杯ある。 もしかしておうちに帰れなくなったのだろうか。 「公園に連れて行ってあげる」 「ゆっ!おしょらを……!ゆっ、おねーしゃんだれなのじぇ……?」 野良らしく、ちょっと汚れていたがそんなものは後で手を洗えばいい。 むしろこういった弱い存在を汚いからといって、ゴミあつかいするような人が心が汚れていると思う。 ゆっくりのおうちがありそうな所なんて近くでは自然公園しかない。 ここからなら近いし、たぶんそこから来たのだろう。 少なくともここにいるよりはずっと安全だ。 「ゆゆっ、ここはこうえんしゃんなのじぇ……」 それを聞いて安心する女性。 やっぱり公園から来たみたい。 まりしゃに話しかける。 「やっぱりここがあなたのおうちなのね?」 そっと芝生の上に降ろすと、キョロキョロ辺りを探し始める。 「おうち……? そうだじぇ!おきゃぁしゃん……おとぉしゃん……!! もうかえってきちぇるはじゅなのじぇぇ!! さっさとおろしゅのじぇ!まりしゃはかえるのじぇ!」 「まってね、傷の手当てだけさせてね。 ……はい、気をつけて帰るのよ?」 ゆっくりにっくが作った応急ジェルを塗り、 地面に降ろしてあげるとキョロキョロしながら振り返らないでおうちに帰っていく。 よかった、少しは元気になったようだ。 自分も家に帰ろう、そう思ったときだった。 「おねぇぇぇざぁぁんっ!!おねぇぇえざんはとっでもゆっぐりしたひとですねぇっ!!」 「ありすもみてたわぁぁっ!!おねぇぇさんはとってもとかいはねぇぇぇっっ!!!」 「えっ!?」 急に二匹のゆっくりが女性の目の前に飛び出してきた。 ありすとれいむだ。 突然のことに戸惑ってしまう。 「おねぇざんおねぇざんっ!れいむのおちびちゃんはぁぁ!! きのうからとっでもゆっぐりできてないんですぅぅぅ!!! なにもないのにずっとこわがっちゃってぇぇ!!! だからぁぁ!!れいむにはあまあまがひつようなんですぅぅ!!」 「おねぇさんぅぅ!!ありすのおちびちゃんもゆっくりできなくなっちゃったのぉぉ!! ずっとぶるぶるふるえてとってもかわいそうなのよぉぉっ!!とかいはなのにぃぃ!! だから“びょういんさん”にすぐつれってってちょうだいぃぃ!!ありすは“けんじゃさま”からきいたのよぉぉっ! おねがいよぉぉぉっ!!」 「えっ?えっ?“ふたり”ともちょっと落ち着いて」 右と左の耳が、バラバラに大音量のノイズを拾ってくる。 このれいむとありすはずっと見ていたのだ。 昨日の加工所の清掃活動から生き残った数少ないゆっくり。 だがストレスから子供が危険な状態になってしまった。 かといって自分達ではどうしようもない。 「おねがいぃぃぃ!!おねがいですぅぅ!! おねぇぇざんはやさしいんでしょぉぉっ!? ねっ!?ねぇっ!?おねがいきいてくれるよねぇぇぇ!?」 「ありすについてきてぇぇ!!おちびちゃんのもとにあんないするわぁぁ!! こっちぃ!!こっちよぉぉぉぉ!!!」 だから人間の手を借りるしかなかった。 とはいえさすがに昨日人間の恐ろしさは十分すぎるほど学んだ。 だから人間を見かけるたびに、遠くから眺めることしか出来なかった。 だがこの人間は、幼いまりしゃに優しくしていた。手当てをして微笑んでいた。 この女性ならきっと助けてくれると確信したのだ。 ――――そうなるともう止まらない。 「ゆゆぅぅ!?ここがらあまあまのにおいがするよぉぉぉっ!! ちょうだいちょうだいぃぃ!!!おちびちゃんのためだからいいよねぇぇっ!??」 「ち、ちょっと引っ張っちゃダメ、きゃぁ!」 れいむが手から下げていたカバンに喰らいつく。 驚いて手を離してしまい、落下したカバンから中身がこぼれる。 「ゆゆぅっ!!これだねぇぇぇぇ!これがあまあまでしょぉぉぉぉっ!? れいむにはわかるよぉぉっぉぉっ!!」 「あっ、それはだめよれいむっ!ねっおねがいだから――――きゃぁ!」 目ざとく先ほど買ったたい焼きの紙袋を見つけたれいむが、ビリビリと紙袋を千切る。 さすがに制止しようと女性が慌てて近づこうとするが、足に絡みつくように迫ってきたありすに躓き転んでしまった。 「おねぇぇぇざんっ!!ありずはあんないなかものなことはしないわぁぁぁっ!! ねっ!?ありすのほうがとかいはでしょぉぉっ!?だからありすのおねがいからききなざぃ! はやぐぅぅ!はやぐごっちにぃぃ!」 「お、落ち着いてありす!足に乗らないで……」 「あっだぁぁぁ!!みつげたぁぁあああああああああ!!」 倒れた女性にありすがグイグイと体を押し付けながら、大声を発する。 勢いに押され、対応できない女性。 その先ではついにたい焼きを見つけたれいむが歓声を上げる。 「ゆわぁぁぁぁ!!すっごいおいしそうだよぉぉぉっ!!! たべたいよおぉぉぉっ!!めっちゃたべたいよぉぉっ!! でもがまんするよっ!れいむのおちびちゃんがこれでなおるよぉぉぉ!!」 「ダメよ!ああれいむ、それは待って!ねぇれ――――」 「ねぇぇぇぇ!おねぇぇさん!?はやくたちなさぃぃ!! あんないできないでしょぉぉっ!?とかいはじゃないわぁぁ!? おちびちゃんがまってるのよぉぉっ!? 「その前にありす退いて、ねぇありす!聞いて!」 あらゆる意味で話にならない。 れいむがもみあげで掴み、口の中にそっといれて運ぼうとしているたい焼き。 今日のはいつも行く屋台の無愛想なおじさんが、『いつもありがとな』そう言って一個おまけしてくれたものなのに。 転ばされたことよりも、カバンを落とされたことよりも、その好意を無駄にしてしまったことが悲しい。 なんだか、ありすを退かそうとする自分の手に力があまり入らない。 全てが信じられない、なんなんだこれは? どこか他人事のように自分の状況を捉えている。 「やっだぁぁぁぁ!!これでぇぇぇ!!これでおちびちゃんとまたゆっぐりできるよぉぉ!!」 「出来るわけねぇだろ」 「ゆばあぁぁぁべぇぇがっぁぁぁぁ!!おぞらをどっごっ!ゆべぇ!あがぁぁぁぁ!! いだぃぃぃぃぃぃっっ!!!じんじゃうぉぉぉぉっ!!!」 だから突然現れてれいむを蹴り飛ばした男性を見ても、それほど驚いたりはしなかった。 「ひぃぃぃぃっ!!どがいはじゃないわぁぁぁっっ!」 「大丈夫ですか?厄介なのに絡まれましたね」 「あ、ハイ。えっと……だいじょうぶ……です」 覗き込む男性の顔を見て、心配されていることに気づく。 とりあえず別段痛むような箇所はないし、攻撃されていたわけではない、と思う。 「じゃぁ俺はあのれいむを片付けてきますね」 「あ、はい……すいません」 男性が自分で蹴り飛ばしたれいむの下へと歩いていく。 残されたのは女性と、震えるありす。 そんなありすを見ながら女性は違和感を覚える。 どうして自分は今、あの男性がれいむを処分しに行くのを止めなかったのだろうか? だってあの男性よりも先に自分は“こいつら”に怒りを―――――― 「いびゃぁぁぁぃぃぃょよぉっ!!げほぉっ!! いきできないぃぃ!!れいむじにたくないぃぃぃ!!」 三バウンドに数回のおまけを繰り返し、れいむは止まった。 苦しい!痛い!それだけが頭の中を支配する。 なんでこんなことになったんだ? れいむはただおちびちゃんのためにあまあまを手に入れたかっただけなのに。 「ゆびゅっ!? あばあまっ!れいむのおちびちゃんのあまあまば!?」 折れた歯を吐き出しながら起き上がり、たい焼きをさがす。 少しはなれたところに、泥と汚れにまみれた魚の形を保っていないソレを見つける。 「よがったぁぁぁ!!あっだよぉぉっ!! おちびちゃんぅ!!れいむがからだをはってまもったよぉぉっ!! ぜったいもってかえるからねぇぇぇぇぇっっ!!」 ずーりずーりと真夏にコンクリートの上に出てきたミミズのような動きで近づいていく。 そのたびに体が痛むけど、おちびちゃんの痛みと苦しみを考えればこのくらいなんだというのだ。 「あぁぁよがったぁぁ!まだちゃんとあるよぉぉっ!! あまあまざんぅ!おちびちゃんのためにゆっぐりしていっでねぇぇ!!」 子供達を救う極上の薬へゆるゆると舌を伸ばしていくれいむ。 グチュッ!! その目の前で人間の靴によってたい焼きの残骸は踏み潰され、その舌は行き場を失った。 「ゆ……?は……え? ゆぅ、ゆ?あえ?な、えあ、あまあまざぁああああああああんっ!!! ああああああああああっ!!あまあまざんがぁぁぁぁぁぁ!!」 酷くゆがんだ口から、聞き苦しい騒音が生み出され公園内に広がる。 その絶叫はとてもボロボロの体から出ているとは思えないほど大きかった。 「うっせ」 「いだぁあっ!!いぎぃ!」 また蹴られた、がすぐに起き上がり、噛み付く勢いで人間に抗議する。 「なんでぇぇぇ!?なんでれいむのおちびちゃんのあまあまざんつぶしちゃったのぉぉっ!? あれがないとおちびちゃんがゆっぐりできないんだぞぉっ!?」 「テメ何勝手に自分のもんにしてんだ?あ?」 「れいむがあのおねーざんにもらっだんだよぉぉぉっ!! ばがなじじぃはみでながっだだけでじょぉぉ!? おちびちゃんがかわいぞうだからって!おねーざんがくれたんだよぉぉっ!! れいむはあまあまもっでかえらなきゃいけないのにぃぃぃ!!!」 「あっそ」 れいむのもみあげを掴み上げ、すぐそこの回収箱に入れる。 「お前もう出れねーから」 「はぁぁぁぁぁぁっっ!??ふざけるなぁぁぁぁっ!! れいむをはやくだせぇぇぇっ!!それでかわりのあまあまもだせぇぇぇ!! れいむのおちびちゃんが――――」 「出さねーよ、テメーも絶対自力じゃ出られねぇ。 まぁ、お前はいいんだけどよ。子供家で待ってんだろ? 病気かなんだか知らねーけど。テメーが助けてくれるって信じてよ。 ――――どう思うだろうねぇ、そんな母親が帰って来なかったら」 「ゆっ?な、なにいってるの……?」 「何も持って帰れませんでした、ならまだいいよな。 でもさ、お前が帰って来なかったらホントどう思うよ? 見捨てられたと思うだろうね、足手まといだから捨てられたんだ、ってよぉ」 「ゆ、ゆ、ゆゆ、ち、ちがうぅぅぅぅ!!ちがうよぉぉぉぉっ!!! れいむはちゃんとおうちがえるぅぅぅ!!ゆあああ!!ゆああああ!! どけぇぇぇぇ!!どけぇぇぇぇ!!じゃまなかべさんはきえろぉぉぉ!!」 ドン!ドンッ!と音を立て何度もれいむが体を内側から回収箱にぶつけるが、その程度ではビクともしない。 れいむ自身も蹴られたケガと痛みで、全力とはいかない。 だから頼る。 自分に出来ないなら他人をアテにし、依存し、断られると理不尽だと怒る野良の性質ゆえに。 「おにぃぃざぁぁぁんっ!!だしてぇぇぇ!れいむをおねがいだからだしてぇぇぇっ!! れいむかえらなきゃいけないんですぅぅ!!おちびちゃんがぁぁぁ!!」 「知らねーよ。 めんどくせぇし、お前もわざわざ殺したりしねーからずっとそこにいりゃいいんじゃね? ほら、これが欲しかったんだろ?」 そういってグチャグチャになった元たい焼きを、ちり取で箱の中に入れてやる。 「あまあまざぁぁぁん!!よがったぁ!!ちょっとよごれちゃったけど、まだあまいにおいするよぉぉっ!!」 「よかったな、満足するまで食っていいぞ?」 「ち、ちがうよぉぉぉっ!!これはおちびちゃんので――――あああっ!! そうだよぉぉっ!!れいむかえらなきゃあぁぁっ!! はやくここからだしてよぉぉぉぉぉっ!!」 「じゃぁな。 テメーがウマイもん食ってる間に、子供達は腹すかせながら待ってるってさ。 今日の夜もわりと冷えるぜ?まぁ体すり合わせてりゃ大丈夫かもな。 ――――テメーがちゃんと家に帰ってくるなら、な」 「ああああああああああああっっ!!おちびちゃぁっぁぁん!! おねがいですぅぅぅ!!おに―――」 回収箱のふたを閉める。防音に優れる容器が、中と外を完全に遮断する。 もうれいむの声が自分のおちびちゃんに届くことは無いだろう。 れいむと男性のやり取りを女性は呆然と見ていた。 普段なら怒りを覚えたであろう男性の行為。 もちろん今だってそうだ、そのはず――なのだが。 「ははは……」 自分の口は笑みを作っている。 野良と飼いゆっくりは違う。団体の代表でさえそんなことを言う。 今やっとその意味が分かった 汚いのは身体や飾りじゃない、もっと内面の深く、根底そのものが汚れているんだ。 そうだ、だとするならあの男性の行為は教育なのだ。 確かにあのれいむという固体は死んでしまうが、それを見たほかの野良は学ぶだろう。 愚かな行為は必ず罰せらると。 そう教育、これはゆっくりという種に対する教育なのだ。 「うん……仕方ない。仕方ないわよね」 「ねぇっ!ねぇぇねぇぇねぇぇ!おねーざんっ!いまのうぢよぉぉっ!! あのじじぃがいないうちにありすのおちびちゃんをたすけにいきましょぉぉっ!? ねぇぇぇぇ!!おねぇぇざんぎいでるのぉぉっ!? ありずどっでもおぎょうぎよぐじでだでじょぉぉぉっ!?」 相手の事情を全く考えず、要求ばかりをひたすらに大声で訴えてくるこのありす。 先ほどからまったく話が通じなかった。 だったら、だとしたらもう。 ――――こうするしかないじゃないか。 「ねぇねぇねぇねぇべげぇぇぇっ!! いだいぃぃぃぃっ!!どぼじでありずをぶっだのをぉぉっ!!」 思いっきりありすを腕で打ち払った。 顔を叩いた手の甲がジンジンと痺れている。 そして何とも言えない満足感。 「ふふふっ」 やっとマトモにコミュニケーションがとれた気がする。 だってほら、ありすは自分に向かって叩いた理由の説明を求めている。 さっきまで自分の言うことになどまったく耳を傾けなかったのに。 たった一回で分からせることが出来るなんて。 ――――最初からこうすべきだったのだ。 「いだぃぃぃ!だからぶたないべぇっ!いだっ!いだぃわぁぁぁっ!!」 「あのね?相手の事を考えないで自分の要求だけを一方的に通そうとしちゃだめなのよ?」 一言ありすに告げるたびに叩く、そうしないとこのありすは理解しないから。 「いだぁっ!にんげんざっ!ずいばっ!ずいばぜっ! ありずがいながものでっ!じだっ!ぼうっ!ぼうぶつのやべっ! やべでっ!やべでぐだざっ!いぃぃっ!!」 「あははっ、そうよありす。偉いわ。 ちゃんと自分が悪いって分かったら謝りましょうね」 れいむ、まりさ種と違って手の代わりに動かせるものが無い。 だからありすはその身を庇うことが出来ない。 もっともゆっくりの髪の毛を数本まとめた程度で、緩和できる痛みではないが。 「いだっ!ごめっ!ごめべっ!ぶゅべぇんなざぃぃっ!! いぎぃぃっ!おめべっ!いだぃ!おめべぎゃぁぁがっ!」 「ねぇありす?謝るだけじゃダメよ? どこが悪かったか分かってる?説明して?ほら?」 既にありすに振り下ろされる手が、硬く握り締められていることに女性は気づかない。 「いだぁ!いぎぃ!あぐぅ!うげぇ!げぇ!ごぉ!ごほぉ!おぼぉ!」 「ねっ?目を背けちゃダメじゃない。話をしているときは相手の目を見なさい? ほらどうしたの?ちゃんと説明して?」 「がはっ!がぁ!ごぉ!うごぉ!あっ!」 殴られるたびに餡子を散らすありす。 既に身体はとっくに円形ではなくなっている。 説明しろと言われても、口が潰れているのでは不可能だろう。 今はただ、圧力で餡子が飛び出してくるだけの穴となっている。 「ふふっ、もうありす、涎を零すなんてお行儀悪いわよ?」 「いっ、あっ……かっ……っ……」 もはや痙攣するだけとなったありす。 その痙攣が止まっても、女性の教育は終わらなかった。 「あの?すいません、ソイツもう死んでますよ?」 「あっ、え、あっ。そう……ですね」 いつの間にか横に立っていた男性に言われて、やっとありすの現状に気づいた。 いやもはやこれはありすとは呼べないだろう、グチャグチャになった何か。 そうとしか呼べない。 「大丈夫ですか?」 「あっ!えっと!はい!平気です!ありがとうございます!」 男性の表情に本気の心配を感じ取り慌てて答える。 ゆっくりの死体に話しかけながら一心不乱にコブシを振り下ろす姿は、さぞかし不気味だったろう。 「ははは、でもカバンとか汚されて、お菓子まで奪われちゃったんじゃ無理もないですね。 怒って当然ですよ」 「あ、はい……そう、なんです」 怒って――――自分は怒りを覚えていたのだろうか。 本当に、怒りだけを理由にありすに暴力を振るっていたのか? 恐らく違う。 だって覚えている。自分の薄暗い笑みの感触を。 そう、楽しかったのだ。 「じゃ、コレも片付けちゃいますね」 そういって箒とちり取で自分が散らかしたゴミを集めてくれる男性。 「すいません!何から何まで」 「いやいや、俺も十分楽しませて貰いましたから」 「あっ……」 楽しかった、男性もそう言った。 そういえばれいむにした行為は妙に手馴れていたのを思い出す。 「あはは」 そうか、やっぱりこれでいいんだ。 今日自分は大きく変わってしまった。 その変化もやっぱり楽しい。 うん、やっぱりあのありすとれいむに怒っているわけが無い。 だってこんな自分の一面を気づかせてくれたんだから。 立ち上がり、服についた汚れを払う。 「ふふふっ、ありがとう」 野良達にお礼を言う。 勿論、親切なこの男性にもしっかりと改めてお礼をしなければいけない。 変わった自分、変わった自分の愛し方。 この両方にもお礼を言いたい。 まりしゃの奴隷になったおねーしゃんに送られ、公園に戻ることが出来たまりしゃ。 父親と母親にあの日隠れていろと言われた植木に向かう。 きっともうとっくに帰ってきているだろう。 やっと両親に再会できる。そしたら自分の大冒険を聞かせてあげよう。 きっと『たくさん頑張ったね』そういってすーりすーりしてぺーろぺーろしてくれるに違いない。 植木が見えた。やっと寂しさと心細さから開放されるのだ。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!おとーしゃん!おかーしゃん! まりしゃがかえっちぇきたよ!」 「ゆっくりしていっちぇにぇ! ゆっ!?ここはれいみゅといもーとのおうちだよ! はいってこにゃいでにぇ!」 「そうだよっ!れいみゅとおねーちゃんいがいははいちゃだめにゃんだよっ!」 「ゆゆぅ!?」 父と母の姿はなく、代わりにそこには二匹のれいみゅが住んでいた。 といっても家具になるようなものもご飯も置いていない。 「にゃんでぇぇぇ!?にゃんでおとーしゃんいないのじぇぇぇ!? おかーしゃんはぁぁぁ!?」 「にゃにいっちぇゆにょ? おかーしゃんたちはみんなかこうじょにころされちゃったんだよぉぉぉっ!!」 「ひっぐおかーしゃんぅ!おとーしゃんぅぅぅ!!」 いまや公園にはこの三匹のような孤児ゆっくりが溢れていた。 成体はほとんど連れて行かれた。子供達の目の前で。 そのことを理解していてもしていなくても、状況は変わらない。 「か、かこうじょ?そ、それなならだいじょうぶなのじぇぇぇっ!! まりさのおとーしゃんもつれていかれちゃったけどぉぉっ!! きっとにんげんをやっつけてぇ!!!みんなをたすけてかえってくるのぜぇぇぇっ!!」 まりしゃが自信満々に胸をそらせながら言った瞬間。 れいみゅ達は激怒した。 「そんにゃわけないでしょぉおおおおおおっ!? みんなぁ、みんなしんじゃったんだよぉぉぉっ!! れいみゅのおとーしゃんもぉぉっ!!おかーしゃんもぉぉぉっ!!」 「そ、そんなわけないのじぇ――――」 「だっちゃらぁぁっ!!なんでちゅれていかれちゃったのぉぉっ!? にんげんをたおせるにゃらぁぁぁっ!!なんでつかまっちゃったのぉぉっ!?」 「ゆじぇ?」 何で捕まったかだと?捕まった? まりしゃのおとーしゃんが?そんなはずは無い。あれは悪い夢だったはずだ。 まりしゃに向かって涎と涙としーしーを飛ばしながら、助けてくれと言っていたおとーしゃん。 あれは、だってあれは、あんなの、あんなの現実のわけが無い。 「にんげんにはかてにゃいんだよぉぉおぉぉおっ!! みんなっ!たくしゃんいちゃのにぃぃぃ!!! みんなつれてかれちゃったんだよぉぉぉっ!!!」 「ち、ちがうのじぇぇぇぇっ! それは、だってそれはゆめさんなんだじぇぇぇえぇっ!!」 「もういいよっ!ゆっくりできないまりしゃはどっかにいっちぇにぇ! れいみゅぷくーするよっ!!」 泣きながらまりしゃに向かってぷくーをするれいみゅ姉妹。 ここで待ってなければ、両親が帰ってきてもまりしゃを見つけられないじゃないか。 あれ?でもおとーしゃんはまりしゃに『たすけて!』って『このままじゃしんじゃう!』って言っていた。 違う!あれは夢だ、夢のはずなんだ。 でもでも実際もうたくさん時間が過ぎたのに、おとーしゃん達は帰ってこなくて――――。 「ちがうちがうのじぇぇぇぇっ!!あれはゆめなのじぇぇぇっ!! まりしゃはここでまつのじぇぇぇっ!!どけぇぇぇっ!! どくのじぇぇぇっ!!まりしゃはぁぁぁぁっ!!」 「ゆひぃ!?にゃにするにょっ!?こっちにこないでにぇ!? れいみゅぷくーを――――ゆべぇっ!?」 「れいみゅのいもうちょがぁぁぁぁぁっ!!!」 混乱しそれでもハッキリと感じる恐怖に背中を押されるまま、まりしゃは体当たりした。 「しねぇぇぇっ!!おまえたちをたおしてぇぇっ!! ここでまってればおかーしゃんたちはかえってくるのじぇぇぇっ!!」 「いちゃぃぃぃ!!」 「やめろぉぉぉぉっっ!!」 「いたいのじぇぇぇっ!?なんでまりしゃをかむのぉぉっ!?」 体当たりを続けるまりしゃに、姉のれいみゅが噛み付く。 そのまま噛み千切るには、れいみゅの顎は未熟だがしっかりと喰らいついて離さない。 「やめりゅのじぇぇぇっ!!まりしゃをはにゃしえぇぇぇっ!!」 「おにぇぇちゃ、いちゃ!ゆびゅぅぅっ!!」 「ぐぐぐぐっぎぎぎぎぎぎぃぃ!!」 半身に食いつかれている激痛にまりしゃが悶える。 そのたびに、まりしゃの下敷きになっている妹れいみゅから悲鳴が上がる。 悲鳴を聞いた姉れいみゅはますます必死になって、噛む力を強める。 さらなる痛みにより一層激しくあばれるまりしゃ、そのせいで自身の皮にダメージを与えていることに気づかない。 「いじゃいぃぃぃ!!まりじゃのかわさんがみちみちいっでるのじぇぇぇっ!! なんでまりしゃをいじめるのじぇぇぇっ!?いちゃいぃぃぃぃ!! おどーじゃあぁぁん!!おがーじゃんっ!!!」 「ゆべぇぇ!ちゅべぇぇぇ!れいみゅのうえであばりぇにゃいでぇぇぇっ!! ちゅぶぅ!ちゅぶれぇぇ!げぇぇぇ!!ゆべぇぇっ!!」 「ぎぎぎぎぎぃぃ!!!」 余りの痛みにがむしゃらに跳ねるまりしゃ、下の妹れいみゅを踏み台にしながら。 それでも妹思いの姉れいみゅは離さない。だからまりしゃは暴れるのを止めない。 そしてついに、プチっと潰れるような音と共に。 「ぎゃぁああああああああああっっ!! あがあぁぁ!!まりじゃのがわざんがあぁっぁぁぁぁっ!!!」 「ゆっ……っ……」 「やったよぉ……れいみゅはゆっくりできないまりしゃをたおしちゃよ……」 まりしゃの皮が引き千切られた。 体内餡が流出していく、まりしゃが暴れるせいで余計に速く。 それは下敷きとなっている妹れいみゅからはみ出た餡子と混ざっていく。 「れいみゅ……だいじょう……?」 妹は酷い有様だった。 上から押しつぶされた顔は目が完全に押しつぶされドロっとした液が漏れていた。 無数にある皮の切れ目から餡子が飛び出し、明らかにマズイ状態だ。 「ぃ……ぁ……」 それでも歪みきったおくちからは、声がかすかに漏れている。 ――これでも、こんな状態でも生きているというのか。 「ゆぼぉぉぉぉぇぇぇぇぇっ!!げぇぇぇぇはぁぁぁぁぁ!!」 激しい吐き気に耐え切れず、餡子を放出する姉れいみゅ。 昨日からマトモな食事をとっていないため、簡単に致死量に達する。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ」 瀕死の妹の横で、痙攣を始める姉。 姉妹仲良くこの世から旅立とうとしている。 この世に居場所を探せなかったものが、あの世でも居場所を見つけられるとは思えないが。 「いじゃぃのじぇぇぇっ!!あんこしゃんでないでぇぇぇっ!! かわしゃんなおるのじぇぇぇっ!!おにぇがいぃぃぃぃ!!!」 まりしゃもまだ生きてはいたが、身体の半分が欠けているような状態では長くは持たない。 刻一刻と自身が死に近づいていくのが餡子の流失と共に分かってしまう。 「じにちゃくにゃぃぃ!まりしゃはまだぁぁ!!しにたくにゃいのじぇぇぇっ!! どうしてぇぇぇ!!おとぉぉしゃぁぁん!!どおしてたすけてくれないのじぇっ!!」 まりしゃがこんな状態になっているのに、帰ってきてくれない両親。 ヒーローは無敵で最強のはずなのに。 「なんじぇ……なんじぇまりしゃがしななきゃいけないの……。 まりしゃはひーろーなのにぃ、ひーろーさん……」 ヒーローが死なないはずなら、なぜ自分は死んでしまうんだ? 必ず迎えに来ると言って帰って来なかったおとーしゃん。 嘘つきだ、まりしゃは信じてたのに。 じゃぁそんな嘘つきのおとーしゃんからヒーローだと言われたということは。 ――――まりしゃはヒーローではない? 「……ゆじぇぇぇぇぇぇん!ゆえぇぇぇぇぇ!! うそちゅきぃぃ!うそちゅきぃぃぃ!!まりしゃはしんじてたのにぃぃ!! ひどいよぉぉぉっ!!まりしゃをだましゅなんてぇぇぇぇ!! ひどいぃぃぃ!!まりしゃはぁぁぁ!!あぁぁぁぁぁ!!」 遅すぎる後悔、遅すぎる気づき。 死の間際に気づいた所で何が変わるというのだろうか。 「ひじょいぃよぉぉっ、まりしゃはぁぁ! ああぁっ、ゆっぐりしたいのじぇぇぇ、ゆっぐりぃぃぃ。 たすけちえぇ、ひーろーしゃんぅ!たすけにきちぇぇぇ!!」 父親が帰ってこないことを知った。 他に助けてくれる存在なんて、空想のヒーローしかいない。 しかし、ヒーローとしての役割も父親であったために、それも信じきることが出来ない。 「じにちゃくなぃ……じにちゃくないのじぇぇぇぇ……」 死の抱擁より先に絶望がまりしゃを抱きしめる。 やがて植木は静寂を取り戻すだろう。 三つの餡子の塊と共に。 一般人が気軽に利用するには辛い料亭。 和室に並べられる豪華な料理を挟み、二人の男性がいた。 「最近はなんか雑誌とかにも取り上げてもらっちゃって。 なんか恥ずかしいッス」 ゆっくり愛護団体の代表の一人。 饅殺男とてーが駅で聞いた演説をしていた人物。 「はっはっは、こちらとしては助かるよ。 まぁ確かに、あまり有名になられても困るがね」 答えた男は、加工所の中でもそれなりの地位についている者だ。 「しかし、一昨日縦浜駅でのはちょっと露骨でしたかね」 「いやいや、大丈夫さ。 実際君のおかげで、何件か縦浜のゆっくりにっくに予約が入ったそうだ」 「それはよかった」 つまりはそういうことだった。 この最も有名な愛護団体の最大のスポンサー、それが加工所だった。 愛護団体が推奨する飼いゆっくりの立場向上、そしてバッジシステムの更なる定着化。 それは飼いゆっくりと関連商品の普及を目指す加工所の利害に一致するものだった。 「まぁ別段後ろ暗いことはしてませんしね。 飼いゆっくりの不法投棄の防止、バッジ試験の最適化、ゆっくり教育……と」 「飼いゆっくりに愛を、か。 我々の場合は買いゆっくりに愛を、だがね」 「あははは」 会話は進む、ゆっくりに関する話題は尽きない。 野良を否定し、飼いゆっくりとの差別化を図ることで理解を広げようとする愛護団体。 野良と飼いゆっくり、そのどちらも利用して利益を得る加工所。 両者の関係はおおむね良好だ。 最後までお読みいただきありがとうございます。 遅くなりましたが、本スレにてanko4203及び4204の挿絵、本当にありがとうございます。 レインコート姿の可愛いてーしっかりと保存させていただきました。 今作もお楽しみいただけていれば幸いです。 過去作 ・anko4095 『てーとまりしゃ』 ・anko4099 『てーとまりしゃとれいみゅのおとーさん』 ・anko4122 『てーとありしゅのおかーさん』 ・anko4126 『choice』 ・anko4203 4204『てーと野良と長雨 前後編』 ・anko4206 『全部漢字表記になった理由』 前作『全部漢字表記になった理由』について 余計なあとがきにて混乱させてしまったことをお詫びいたします。 感想にて解説いただいたとおり、 『お兄さんから鬼意惨になった』というオチのつもりでした。
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